エピローグ:そして物語は続いていく
月日は流れ、アダパーとミカエルの冒険は、高天原の歴史に刻まれた、最も偉大で、最も美しい叙事詩となった。 だが、当の本人たちにとって、それは終わった物語ではなかった。
アダパーは今も侍従長として、世界の調和を見守り続けている。 かつての彼は、綻びを恐れ、画一的な秩序に固執していた。だが今の彼は、時折現れる世界の「揺らぎ」や「小さな矛盾」を見つけるたびに、それを「世界がさらに豊かになろうとしている、新しい生命の鼓動」だと捉え、慈しむように微笑むようになった。彼は知っている。矛盾こそが、生きた証であることを。
ミカエルは、天界と下界の境界に立ち、今この瞬間も、絶望の淵で「自分には価値がない、世界は空虚だ」と嘆く魂に、黄金の風となって語りかけ続けている。 「真実か幻か。そんなことは、実は大した問題ではないのだよ。大切なのは、君がその一瞬に、どれほどの愛と意思を込めて、その光景を見つめたかだ。君が自分自身を、そしてこの世界を信じれば、そこが即座に宇宙の真ん中になり、新しい真実が産声を上げるのだから」
生命の大神樹ユグドラシルは、今日も無限の枝を広げ、多次元の風を受けて荘厳に歌っている。 その葉の一枚一枚の中で、私たちは今も、それぞれの夢を見、それぞれの小さな、しかし確かな真実を懸命に生きている。 そして、この物語を読み終え、ゆっくりと顔を上げたあなたの心にも、小さなユグドラシルの黄金の種が、確かに植えられたはずだ。
あなたが「私はここに在る」と強く、深く願い、この不確かな、しかし可能性に満ちた世界を愛そうと決めた時、あなたの周囲の何気ない風景もまた、真実という名の、まばゆい、永遠の光を放ち始めるのである。
(完)




