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『ユグドラシル(宇宙の大神樹)』の秘密:存在と幻影の境界線  作者: 如月妙美


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第十四章:高天原の新生と侍従長の微笑

ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れた庭園の、柔らかな、瑞々しい芝生の上であった。  小川のせせらぎが、これまで以上に澄んだ、魂を洗うような音色で聞こえ、鳥たちが新しい創世の始まりを祝う歌を歌っている。しかし、以前とは何かが決定的に、そして根源的に違っていた。  空気はより濃密に、色はより鮮やかに、そして吹く風の向こう側に、確かに「誰か」が見守り、慈しんでいるような、深い安心感が宿っている。物理的な不条理バグはもはや存在せず、すべての現象の奥底に、生きる喜びという名の熱い波動が静かに、しかし力強く脈打っている。

「起きたか、アダパー。新しい世界の朝は、心地よいか?」  傍らには、黄金の輝きをさらに増した六枚の翼を優雅に休め、ミカエルが穏やかに座っていた。その表情には、かつての「任務としての天使」の峻厳さはなく、一人の「生きる友」としての、深い温かさがあった。

「……ミカエル様。私たちは、やり遂げたのですね。世界は、まだここに在る。いや、前よりもずっと『在る』気がします」

「ああ。ユグドラシルは、君という勇敢な観測者によって、新しい意味を与えられたのだ。もはやここは、冷たい計算機が見せる無味乾燥なシミュレーションではない。私たちの自由な意思と愛が、一刻一刻を創り上げていく、正真正銘の本物の『現実』になったのだよ。君の疑念が、世界に血を通わせたんだ」

 宮殿の方から、賑やかな、活気溢れる声が聞こえてくる。 「ちょっと二人とも! いつまでそこでサボってるのよ! エンキ様が待ちくたびれて、池の水を全部あふれさせそうなんだから! 宴の準備はできてるんだからね!」  イナンナが、今まで以上に輝かしい、生命力に満ち溢れた笑顔で大きく手を振っている。その後ろではクトゥール神が計器を放り出して珍妙なダンスを披露し、ガブリエルが祝福のファンファーレを空高く吹き鳴らしていた。

 アダパーは、自分の指先をじっと見つめ、それからそっと小川の水面に触れた。  今度は、波紋は決して逆流しない。ただ、優しく、美しく、無限の広がりを持って、どこまでも、どこまでも広がっていくだけだ。  彼の心に、かつての冷たい疑念は微塵も残っていなかった。代わりにあったのは、この不確かな、しかし最高に素晴らしい世界への、無限の信頼と愛であった。


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