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again〜再び

 人の気配のしない校舎。

僕の周りを飛ぶカラスは、「カッカッ」と鳴いていた。この声は[不吉なことが起きる]時の鳴き声だ。

 そしてまた何かに、面白い何かに、僕を誘ってくれる。そんな予感がする。

 このまま何もせず、突っ立っているだけじゃ、何も始まらない。ならば、僕は僕の好奇心に従う。ただそれだけ。

 そして僕は堂々と、正面玄関から校舎に入っていく。

 しかし、入った途端に、校舎が静かな理由がわかった。

 生徒は見るも無惨な姿になっていた。

 血のプール、臓器の山、もはや肉ですらなく、ミンチを通り越して液体になっていった。

 そして、血や肉片が飛び散った壁。

 廊下と教室を隔てている壁はバラバラになっており、教室の中も、椅子や机と一緒に肉片が散乱していた。

 この状況なら誰かが通報してもいいくらいだが、そうか、窓が閉じられていたから血の匂いがしなかったんだ。

 しかもここはグラウンドやプールとかの施設を確保するために、結構山の近くに学校が建てられている。近くに家が全くないんだ。だからこの異変に気づく人はいないんだ。

 そして、僕はこの地獄のような廊下につけられた、血で形どられた足跡を見つけた。軽く見ただけで人間の顔ほどある三本指の足跡。

 いつかの博物館で見た恐竜の化石みたいだ。

 一瞬、あの森で遭遇した化け物が脳裏によぎった。

 そしてその足跡は階段へと続いていた。今の僕に、この階段を登るほどの勇気はない。

 これは僕の手に負えない、警察に通報すべきだ。

 そしてスマホを取り出し、110番に電話をかけた。だがそれは、とてま大きなミスだった。

「プルルル」と甲高い音が、この廊下に響く。直後に

「ドンドンドン!」と上の階から足音がして、段々と自分の真上に近づいているのがわかる。

 外に出てから電話をするべきだった。コール音がこの惨事の"元凶“に聞かれてしまった。

 僕の真上で足音が止まると、一瞬間が空き、更に「ドォーン!」と大きな足音と共に、天井にヒビが入る。

 手の中のスマホから、『大丈夫ですか?!どうしましたか?!』という声が聞こえる。

 どうやら警察に繋がってるようだが、今応答している暇は1ミリもない。いや1マイクロメートルだってありはしない。

「ャバイ!!」

 僕は危険を感じ、咄嗟に逃げ出そうとしたがすでに遅く、天井のヒビが「メリメリ」と広がり、上から巨大な、四足歩行の巨体が落ちてくる。

(親方空から怪物が!!)

 なんて言ってる場合じゃない。

 なんとか横に跳ぶのが間に合った。真上からの直撃でぺちゃんこになるのだけは回避できたが、一瞬でも判断が遅れていたら…僕は死んでいた。

 横たわっている僕の脚に乗っかっている瓦礫を振り払い、落ちてきた巨体を見据える。

 トカゲ?オオサンショウウオ?ワニ?形はそれらの動物と同じってだけで、大きさはそんななまっちょろいものではない。

 横幅は学校の廊下の横幅より少し細いぐらい。

 頭から尻尾までゆうに教室一つ分の長さがあった。

 頭のてっぺんを見るには見上げる必要がある。高さは2mほどありそうだ。

 なんともおぞましい風貌に萎縮する。

 グゥォー、と喉を鳴らした時に見せた口の中は、血みどろ、完全に噛み砕いてない肉、この学校の制服と思わしき布切れ。

 今完璧に理解した。こいつだ、こいつが僕以外の生徒や教員を食い殺したのだ。

「逃げろ」そう僕の脳が僕に警報を鳴らす。

 金縛りを無理やり解き、後ろを向いて逃げ出そうと右脚を前に出す。

 なんだ、誰だいったい、この大事な時に、僕の足を引っ掛けてきた…やつ………は、ああ人の腕だ。「お前だけ生き残るな」とでも言うように、僕を転ばせたのだろうか。

 この腕の()持ち主だろうか、生気のない目でこちらを見ている。

 奴は「グロロ」と喉を鳴らした。

 口の中のものを全て飲み込んだのだろう。僕を口の中へ迎え入れる準備は万端というわけか。

 奴は廊下に倒れた僕を見つめる。そうか、死ぬのか、死ぬなら最後にアイツに、(れん)に………。生きて(れん)に…会いたい

 そう何もかも全て諦め、死を受け入れようとする。 だが、心の奥底にはまだ、“生きたい”というエネルギーが存在していた。

(なんか以前にもこんなことがあった気がするな…。あの日あの森で迷子になった…あの時も…、死を覚悟してたのに、“死にたくない”って思っちまってたな)

 この想いを感じ取ったのか、そのエネルギーは心を飛び出し、全身を廻り、やがて身体から溢れ、黒い羽根へと変わり、カラスが現れる。

 そいつは窓から入ってきたわけではない。僕の体から溢れたエネルギーが集まり、だんだん鳥の形になり、そいつは現れた。

 カラスは体格差が何十倍もある化け物に、恐れず僕と化け物の間に佇む。

 コイツはただのカラスではない、僕のエネルギーが源となった通常ではあり得ない力を持ったカラスだ。

 わからない、正体不明だ。科学的に絶対ありえない。

 だが一つ、たった一つだけ分かることがある。それは「このカラスは僕の味方である」ということだけ、それだけだ。それだけだが、現状を打破するには充分である。

 あぁ。そうだ、あと一つ、“戦わなければ死ぬ”ということだ。

 化け物の咆哮にすら怯まず、逆に「カァ!」と威嚇し返す。

 しびれを切らし、先に攻撃を仕掛けたのは化け物の方だ。飛びかかり、巨大な口を開き、噛みついてくる。

 カラスは宙に一つの円を描き、旋回し、軽く攻撃を避け、逆にその勢いを利用して、鋭い鉤爪(かぎづめ)がヤツの背中を裂いた。

 だがこの狭い廊下では満足には飛べず、あまり攻撃にキレがない。ならば僕が動こう。僕が今できること、それはカラスが戦いやすいように立ち回ることだ。

 化け物がカラスにだけ集中していることを確信してから、そっと教室へ入る。

 あたりをざっと見回し、そこらに倒れている机をもっとぐちゃぐちゃに倒す。

 アイツ(化け物)は地に足をつけなきゃいけない。対してカラスは宙にいる。足場を悪くして不利益を喰らうのはアイツだけだ。

 次に教室の右後ろ端まで走って、掃除ロッカーの中を物色する。やっぱりあった。ほうきだ。

 さっきの机を倒す音にヤツが反応しないのは分かっている。つまりヤツは大きな音を出しただけではターゲットを替えることはない。

 じゃあ何かぶつけられたらどうだろう。長いほうきをやりのように投擲(とうてき)してヤツに当てれば、ヤツは自分に不利なこの場所に来るかもしれない。

 この間もカラスとヤツは死闘を繰り広げている。一撃必殺の噛みつきで果敢に攻める化け物。対してそれを華麗に回避しながら、ヒット&アウェイで地道にダメージを与えるカラス。

 僕は機を見てほうきを投げる。決してダメージを与えることはできなかったが、投げたほうきは綺麗に頭に当たった。

 ヤツは投げられた方を睨み、「グゥーゥ」と唸るが、そこには誰もいない。

 僕はほうきを投げるやいなや、窓を開けて校舎の外へ出ていた。ここが1階で本当よかった。

(まあ2階ぐらいの高さだったらギリ飛び降りてそうだったけど…。でも窓から逃げられないなら、机で歩きにくくするなて自殺行為だからやらなかったし、ここが2階で本当によかった)

 そして案の定ヤツは、自分にほうきを投げた犯人を捜して、誰もいない教室へとその重たい脚を動かす。

 廊下での闘いを見て分かった。あの巨体を仕留め切れないのは場所が悪いから。だけじゃない。体格差がありすぎて、ダメージが通らないんだ。

 もちろん首の所とかを攻撃すれば倒せるかもしれないけど、そこまで精密に動けそうでもない。

 ならばどうすればいい?答えは簡単だ、“増やせばいい”。

 感覚はなんとなくさっきので掴んだ。体中に、エネルギーを満たすような感覚で。

 そして“生きるために戦う”て“闘志”を強く…もっと強く念じる。

(今なら…なんか、できる気がするッ…!)

 僕の中で、何か確信めいたものを掴んだ気がする。僕の目の前で黒い羽が舞う。今度は一度に3羽出すことができた。合計4羽。

 この教室の広さなら、お互いが飛ぶのに邪魔になることもないだろう。

 更に僕はまだもう一つ秘密兵器を隠している。

 これでヤツを絶対に倒す。

 ヤツはいきなり敵が4に増えたことに困惑したように見えたが、すぐに大きく口を開き飛び掛かる。

 だがカラスが浮かんでいる高さまで、到底届かない。多分足場がぐちゃぐちゃで、踏ん張りが効かないのだろう。

 ちゃんと飛びたいなら翼でも生やすんだな…お前の敵と同じように。

 カラスは多少広くなった地形をうまく活かし、更にアグレッシブで洗練された攻撃を繰り出す。

 一方的な展開。このまま順調ならば倒せそうだ。

 だんだんとヤツは窓側にジリジリと近づいてくる。足場が足場なだけに、勢いをつけられず、完全にその場に止まっている。

(今だッ!)

 僕はその場で立ち上がり、さっきと同じ投擲ホームをとる。

 でも今度投げるのはほうきなんかじゃない。椅子の足に使われている、金属のパイプだ。ヤツがこの教室の生徒を食うために暴れた時のだろう。先がとんがった形で、手頃な長さに折れていたのをさっき拾ったんだ。

「これなら確実にッ!ダメージ入んだろ!」

 一瞬。ヤツが僕を見つけ、咄嗟にこっちに噛みつこうとしてきたが、近くにいたカラスが体当たりをして、阻止してくれた。

 フルパワーを込めた僕の一撃は、ヤツの眼へと吸い込まれ、豆腐に針を刺すように、ズボッと刺さった。

「ギャァーー!」と腹の底から出たであろう、苦痛と怒りに満ちた悲鳴。

 そしてパイプはストローの役割を果たし、真っ赤な噴水がここに出来上がった。

 とてもグロッキーだか、僕の勝利を祝福するにはちょうどいい派手さかもしれない。

 でもいつまでもこうしているわけにはいかない。

 多分さっきの通報で警察がもうすぐここに来ると思う。

(どうする?[怪獣を倒した最強少年]てテレビに取り上げてもらうか?)

 一難去ってまた一難。

 面倒ごとはけして無くならない。それが僕の人生である。

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