20.✴︎君の夢
しかし僕が極端な貴族至上主義で、冷酷な差別主義の伯爵家の令息だと知ったら、きっとアンジェラに距離を置かれてしまう。
だからトリスタンのアドバイス通り、まずは平民を装って彼女に近付く事にした。
日曜日、彼女が孤児院に行くと、僕もボランティアに来た平民だと嘘をついて知り合いになった。
人を騙すのは好きじゃないけど、今回ばかりは仕方ない。
どうしてもアンジェラに近付きたかったから。
暫くは孤児院に足蹴もなく通い、彼女と同じように子供達と遊んだり、子供達の食事の準備をしたりした。
すると彼女は徐々に僕に心を許すようになっていった。
嬉しい反面、好きなアンジェラの隣にいると、いつも僕の心臓は爆発しそうだった。
「アンジェラは日曜日は孤児院でボランティア、その他は殆ど侯爵家で働いてるんでしょ?
体は平気なの?」
「大丈夫よ、ミッシェル。
私はこう見えて頑丈なの。
ミッシェルこそ……その、侯爵家で働いてるんでしょう?屋敷ではあまり会わないけど…
びっくりしたわ。まさかトリスタン様とご友人だったなんて。」
「ま……まあね。
トリスタン、さ、様はいつも平民の僕らに、とお〜っても優しくして下さるんだ。」
何でお前まで孤児院にボランティアに来るんだよ、とアンジェラの横にいてニヤニヤとするトリスタンを睨みつける。
だがトリスタンは楽しいから〜と笑うだけ。
冷やかしに来てるのがバレバレだ。
「私は将来、親のいない子や恵まれない子供達のために、孤児院を創りたいと思っているの。
懸命に生きる子ども達の、力になりたい。
そして一人一人に、愛してるよと伝えてあげたいの。
だってこの世に、生まれてきてはいけない子なんていないのだから……。」
「そうか……そうなんだね。
アンジェラのその素敵な夢。僕は応援しているよ。」
「うふふ。ミッシェルが?
もしそうだったら嬉しいわ。」
眩しくて純粋な笑顔にいつも心がキュンとなる。
優しいアンジェラの夢は僕の夢に近くて、いつも心が温かくなった。
人を好きになる事がこんなにも幸せだなんて。
僕が君の夢を応援するのは当たり前だよ。アンジェラ。
好きな人の為だったら僕は必ずそうするし、ハーシェルにあげられなかった沢山の愛を、美しい君に惜しみなく捧げたいんだ。
「じゃ〜俺もその夢、手伝っちゃおうかな?」
「え?トリスタン様まで?どうしてです?」
「ふ!それはな、アンジェラ!
ただ面白そうだから、だ!ははは!」
相変わらずトリスタンは意味不明だが、悪い奴じゃなかった。
貴族でありながら、唯一同じ価値観を持った、親友。
こうして僕達は眩しい青春時代を過ごした。




