16.✴︎君がいなくなった日
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アンジェラ。君がいなくなってから、僕の心は空っぽになってしまった。
あの日せっかく君に会いに行ったのに。
君の病と余命宣告を聞かされてショックを受けていた時に、同じ応接間にいたジェシカから、突然抱きしめられてしまったんだ。
君が、医者からの詳しい説明を受けに行っている間に。
引き離そうとしたけれど、ジェシカはー。
「お姉様の事がショックで、悲しくて……!
ミッシェル様!どうか家族として、私を抱きしめて下さい…!」
彼女は僕に縋りつき、震えて涙を流した。
あの時は僕も混乱していたし、だから仕方なくジェシカをハグした。
だが抱きしめたら抱きしめたで、ジェシカはとんでもない事を口にして————
「お姉様はもう長く生きられません!
だから、彼女との結婚を諦めて、どうか私と結婚してください、ミッシェル様……!」
この異母妹は、本当に——————!!
ジェシカを引き離そうとした直後、まさかその現場を君に見られたうえに、逃げられてしまうなんて。
追いかけようとする僕の背後からまたジェシカが抱きつき、行く手を阻んだ。
「行かないで下さい……ミッシェル様!
どうせお姉様は死ぬのに!
あなたほどの高貴な人が、どうして……!」
「ジェシカ。君は本当に最低な人だ。
姉の病気に同情するフリをして、僕に結婚を迫るとはな。
金輪際。僕に近づかないでくれ。
例えアンジェラが余命わずかだとしても、僕は彼女以外の人と結婚する気はない。」
これまではアンジェラの異母妹だからと、あまり露骨に嫌わないようにしていた。
でも、もうそんな体裁はどうでもいい。
自分でもよく分かるくらい、この上なく冷え切った眼差しをジェシカに向け、その足でアンジェラを追いかけた。
だが広い屋敷で彼女を見失ってしまった。
「ミッシェル様。アンジェラは今、あなたに会いたくないそうですわ。
あの子もショックを受けているようで…」
騒ぎを聞きつけたミランダ夫人が、心底困ったように対応した。
アンジェラが僕に会うのを拒絶していると。
「わかりました。今日のところはこれで……ですが、彼女が心配です。
どうか、アンジェラに伝言を頼みます。
明日改めて会いに来るからと。」
———アンジェラ。ごめん。
絶対に君を傷つけたはずだ。
いくら同情だとしても、君をずっと虐めていたジェシカを抱きしめた自分を呪い殺したい。
今誰よりも辛い思いをしているのは、君なのに。
不治の病に侵されて、あと半年の余命宣告を受けたんだ。
謝りたい。心底君に。僕が愛してるのは君だけだよと言って安心させたい。
僕が結婚したいのはこの世で君だけだし、君がこの世から去るのだけは絶対に嫌だ。
だから僕は君を病から救う方法を、必ず探し出す。
だから、どうかそばに居させて。
なのに君はあの日を最後に、僕の前から姿を消した。




