表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/53

14.契約を超えた愛情


 今日は12月何日だろう。クリスマスは過ぎたかしら。

 日増しに眠たい日が増え、起きてる時間はもうほとんどない。

 私ったら、熊みたいに冬眠でもする気かしら。

 

 『アンジェラ、もう眠たい?

 それならベッドに運んであげるね。』

 

 「ありがとう。マイケル。

 ……あなたには本当に言葉では言い表せられないくらい、感謝しているわ。」


 素直にそう伝えると、マイケルは私の体を丸ごと持ち上げて、ベッドまで運んでくれた。

 

 「本当に力持ちね。マイケル。

 好きな人もそうやって、寝室に運んだ経験があるの?」


 『———アンジェラだけだよ。こんな風に触れたのも。触れたいと、思うのも。』


 ベッドに深く沈まされ、今日もまた、愛の告白のように甘い伝言を、手のひらに受ける。


 「でも、マイケルは言っていたじゃない。

 花の世話が大好きで、物知りで、すごく努力家で、とても純粋な人に恋してると。

 確か、教会の讃美歌も歌うのよね?」


 『そうだね。………確かに僕はその人が好きだった。

 そして今もまだ、その人に恋してる。』

 

 「まさか、片想い?なの?」


 『……うん、今もずっと追いかけてる。』


 「それなら、私に構っている場合じゃないわ。

 彼女が逃げてしまうかも。もう二ヶ月以上も、私と一緒にいるでしょう?」


 『うん、だから逃げられないように、努力しているんだ。』


 ————愛しているんでしょう?

 その人を、今も。

 

 違う。

 本当に聞きたいのは、知りたいのはそういった話じゃないのに。

 あの日の真相をマイケルに尋ねるべきなのに、遠ざかる。

 知りたくないのか、もしくは知ることを怖がっているのか。私の意気地なし。


 ミッシェルも………まだ私を愛してくれている、なんてことがあるのかしら?


 『お休み、アンジェラ。良い夢を。』


 また優しいキスが額に降ってくる。

 この唇の感触を、いつも懐かしく感じる。

 仕草や、髪に触れる手の感触。話す内容や、柔らかいイントネーション。

 まるで貴族のような立ち振る舞いや、教養の深さ。

 初めは料理を作るのが苦手だったが、今ではシェフ並みの腕前を発揮する。

 彼もそうだった。初めは花壇の手入れも、庭履きも苦手だった。

 けれどすぐできるようになった。今のマイケルみたいに。


 『アンジェラの隣にいたいから、努力するんだよ。』


 何か私の役に立ちたいからと、あのミッシェルも慣れない手つきで庭を履いたり、一緒に花の苗を植えたりした。

 マイケルもまた、慣れないと言いながら料理を作ったり、できない私の代わりに家事をしてくれた。

 初めは慣れない様子だったけれど、今ではプロ並みに家事ができるようになった。


 『アンジェラ、どう?美味しい?』


 『アンジェラ。君の悩みも不安も、全部聞くから、僕にはなんでも話して。』


 『粗相をした?下着を汚した?

 気にしなくてもいいんだよ。そんなことで、僕は怒ったりしない。』

 

 『君のことなら、何だってするよ。

 嬉しいんだ。君のことをこうやって、支えられるのが。』


 これが————契約?


 赤の他人が、ただの時間売買の契約者が、ここまでの事をしてくれるだろうか?


 ただの同情だけでこんな風に、契約を超えた愛情を注げるだろうか?

 四六時中、ほとんど側にいて、もうほとんど何もできない人間の世話を焼く。

 これがただの契約だっていうの?


 私が眠りに落ちたと思ったのか、マイケルが私の髪にそっと触れる。

 今度は手のひらに指が触れ、また文字が描かれた。


 『アンジェラ。僕の誕生日は3月7日だよ。

 春生まれなんだ。……君が最も好きな季節だよね。』

 

 ああ。—————マイケル。

 あなたの誕生日って、ミッシェルと全く同じ日だったのね。


 いつの頃からか、私は夢を見るようになった。

 そんなはずないと思いつつも、儚く、甘い夢を。

 けれどマイケルがもしも————。

 見えかけた答えを胸に秘め、私はそのまま深い眠りに落ちた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ