13.子爵家の破滅
お父様の事業が潰れたとなれば、もう満足いく生活は望めないだろう。当然、負債も抱えているはずだ。
あれだけ派手好きだったミランダやジェシカが、あの二人が、これまでとは真逆の生活に耐えきれるのかしら?
オーロールの収益で、子爵家は潤っていたのだから。
『まだ、あんな奴らを心配してるのかよ!
アンジェラ……あんな小さい頃からお前を、蔑ろにして虐めてきた奴らを、心配?
あ……いや、そうだよな。アンジェラはそんな奴だって分かってた……
はあ。そうだな。あの三人はまあ、何というか。』
幼い頃から私の事情を知っていたトリスタン様が、今どんな顔をしてお怒りになっているか、容易に想像ができた。
『相変わらず恥知らずで、ミッシェルに泣きついてきたよ。』
「そうなのですね。ミッシェルに。それなら当然、援助したのでしょう。
ミッシェルはジェシカと結婚するのですから。好きな人を不幸にしたままなんて…』
『まだ言ってんのか?アンジェラ。
あいつもあいつだけど、お前も大概だよ。
————あの二人が結婚するはずないだろ!
ミッシェルの好きな人がジェシカ?
病気で苦しんでいるお前に言うのは酷だが、友人だから言わせて貰うぞ。
ミッシェルが、ジェシカを好きなわけないだろ!勘違いにもほどがある!』
ミッシェルがジェシカを好きなわけない?
だったらあの日の抱擁の意味は……
ひどくトリスタン様が苛立っている様子だと、マイケルがこっそり教えてくれた。
『はあ。お前たちは本当に、良く似てるよ。
勝手に悪い想像ばかりして、変な方向へ先走って!変なとこがそっくりだ!
いいか?アンジェラ。
良く聞くんだ。お前たちはもっとちゃんと、話し合え!ケンカしていいから、ちゃんとお互い思っていることを言い合え!
焦れったいんだよ……!
ミッシェルが幸せになるなら、それでいい?
何、自己完結してんだよ!今のあいつが、本当に幸せだと思うか?
——————愛してるんだろう!!ミッシェルを、今でも!!」
ガツンと、心臓に刃を突き立てられるような衝撃を受けた。
心が震える。
そうだ、私はまだ彼を愛している。こんなにも。
————トリスタン様が仰った通りだ。
あの日、ミッシェルとジェシカが子爵家で抱き合っている姿を見て……
逃げてしまって以降、一度もミッシェルとは話しもしていない。
落ち着いてからでもよかったのに。
どうしてミッシェルに、ちゃんと尋ねなかったの?
怖くてもいいから、真相を聞くべきだったのに。
『ジェシカに心変わりしたの?もう、私のことは愛してないの?』と。
私がしたことは、愛していた人から臆病にも逃げただけ。
自分だけの考えで、ミッシェルから逃げてしまったのだ。
私の余命宣告を知った彼が、あの時一体どんな気持ちでいたのか、知ろうともせずに。
「すみませんでした。トリスタン様。
ですが、お陰で目が覚めました。
————その。
私が、彼に会うことはできますか?」
強い口調でそう告げると、またマイケルの手がピクリと動いた。
『ああ。…会えるよ。すぐ会える。
アンジェラ。すぐミッシェルに会えるよう、セッティングしてやる。』
トリスタン様は漸く落ち着いたように、溜息を吐かれたという。
近いうちに、ミッシェルに必ず約束を取り付けると仰ったそうだ。




