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10.驚くべき誕生日プレゼント



 「ジャ〜〜〜ン!!」


 威勢の良い掛け声と共にリビングに現れたのは、ガスパルと車椅子。らしい。


 「きて、アンジェラ。

 ガスパルさんと一緒に、車椅子を買ったんだ。」


 外は木枯らしが吹く、寒い日のようだ。今は昼だという。

 暖炉は薪が燃えている音がし、冬を感じさせない程暖かった。

 助けられながら昼食を終えて。

 ほとんど介助が必要な私に、マイケルが丁寧に暖かい上着を着せてくれて、マフラーまで優しく巻いてくれた。


 なぜかマイケルは朝からソワソワし、今日はずっとお客さんがくる、お客さんがくる、と言っていたけれど。

 何と来客はガスパルだった。

 

 「アンジェラ!元気だったか?」


 「ええ、ガスパル、お陰さまで。」


 思いっきりハグされて、意外とガスパルも頑丈である事が判明した。

 引き離すように手を引かれ、マイケルが私を車椅子に座らせた。

 柔らかい革製の椅子にすんなり腰が沈む。


 「どう?アンジェラ。これ、ガスパルさんと相談して決めた、特注品なんだよ。」


 「すごく素敵よ。でも有り難いけど、悪いわ。高かったのでは?

 さすがに契約の予算ではちょっと。」


 「心配するなって、アンジェラ!何と金はマイケルのポケットマネーから払ってある!

 こいつはなあ———相当な金持っうぐっう!」


 「大丈夫?ガスパル?」


 途中からガスパルの声が変になったので、慌てて立ちあがろうとしたら。


 「あ、大丈夫だよ、アンジェラ!そのまま座って座って。」


 「この〜マイケル、お前っ、魔法使い様に向かって何たる無礼を」


 「はいはい。偉大なる魔法使い様、どうもすみませんでしたね。」


 いつの間にこんなに仲良くなったんだろう。

 マイケルとガスパルのやりとりを聞いてると、懐かしい感じがした。

 何だかミッシェルとトリスタン様みたいで。

 

 「どう?アンジェラ気に入ってくれた?

 これならもっと自由に動き回れるよ。」


 「これを私に?本当にいいの?」


 「いいって!俺とマイケルからのプレゼントなんだから、有り難く受け取るんだな!」


 「その、プレゼントって…」


 プレゼントを貰う意味すら分からないと私が首を捻ると、ガスパルが叫んだ。

 

 「お前、アンジェラ!今日が自分の誕生日だって知らないのか!?」


 「!?」


 「12月12日。アンジェラの誕生日だろう?」


 「……なぜ、知っているの?」


 「なぜって……」

 「アンジェラ〜!悪い!俺がうっかりコイツに話してしまったんだ!

 契約書にそう書いてあったから!」


 私とマイケルの間に割って入り、ガスパルが声を張り上げた。

 

 「ごめん、アンジェラ。個人情報を勝手に話したりして、本当に悪かった。」


 「いえ、いいのよ。ガスパル。ただ驚いただけで。」


 「アンジェラ、ごめん。僕がどうしてもって、ガスパルさんに迫ったんだ。

 君の誕生日が知りたくて。契約違反だったね。」


 二人して声のトーンが落ちたので、きっとしゅんとしているのだろう。私は思わず笑ってしまった。


 「いえ、いいのよ。マイケル。ガスパル。

 確かに今日が誕生日だったわ。

 もう21歳の誕生日は迎えられないと思っていたけれど…ありがとう。嬉しいわ。」

 

 「良かった〜!アンジェラ様、天使様!

 やっぱりアンジェラは最高だ!」


 ガスパルにもマイケルにも何か誤魔化された気がしたけど、悪い気はしなかった。

 子供達をあやすように、「仕方ないわね。」と私は笑った。

 

 それに契約違反と言うけれど、私はマイケルに、自分の身の上は大体のことは話してきた。


 だけどその一方で、私はマイケルの事をほとんど何も知らなかった。

 敢えて何も尋ねないのは、勿論契約の事もあるけれど、もうすぐ死にゆく私がマイケルのプライベートを聞いてどうするのだと言われそうで、怖かったからだ。


 「それで、アンジェラ。

 良ければなんだけど、今から君の誕生日をお祝いしたいと思ってるんだけど。

 どうかな?」


 遠慮がちにマイケルが尋ねてくる。


 「誕生日を?今から?」


 驚いて声のする方に顔を上げると、意外と近くにマイケルのいる気配がした。

 ふと感じる、不思議で良い香りのする服。

 聞こえる息遣い。優しいリズムの声。

 また気遣ってくれているのね。


 誕生日にあまり良い思い出はなかった。


 だが、あるとすればミッシェル……

 彼とトリスタン様だけは、知り合ってから毎年私の誕生日を祝ってくれていた。

 あまりお金を使わないで欲しいと頼む私に、ミッシェルは気を使わせない程度に、お祝いしてくれた。

 それは、ミッシェルが伯爵令息だと発覚してからも変わらなかった。

 私が何もお返しできないと言うと、いつも二人は何も要らないから気にするなと、笑ってくれた。


 思えば幸せな瞬間もたくさんあったのだわ。

 ミッシェルには、返しきれない程たくさんの幸せを貰った。


 「アンジェラ?」

 

 「いいの?私には何も返せないのに…」


 「何言ってるんだ、アンジェラ。

 お返しなんて何も要らないよ。

 ただ、君を喜ばせたいだけなんだから。」


 まただ……。マイケル。

 あなたが優しくしてくれる度に、私の胸は甘く切なく、何処か苦しくなる。

 

 初めからあなたの顔は良く見えなかった。

 だけど、あなたの温かさや優しが時々、契約以上に深いものに思えてくる。

 その度に、なぜかミッシェルの顔を思い出してしまうのだ。


 違うと分かっている筈なのに。

 髪の色も違うし、何よりマイケルには想い人がいる。

 それに今頃ミッシェルはジェシカと結婚し、幸せな筈だから。

 だが、見えない暗闇の中に存在する姿はまるで、ミッシェルそのものだった。


 

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