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離愁のベゼ ~転生して悪役になる~  作者: ビタードール
四章『ベゼの誕生編』
42/93

第四十話『オルニス.ルスキニア』前編

 周りは死体と血で染っていた。

 家や畑が燃えて居る光景は、僕が最初に襲ったエアスト村を思い出させる。


「まさか、ベゼの正体が人間だったとは」


 僕は『ベゼの顔』を『マレフィクスの顔』に戻した。

 そして、能力番号23『息を強風に変える能力』を使い、強風を起こす。


「息がこんな強風にぃ?」


 オルニスは羽根を広げて、風を受けながら後方に下がる。


 ――能力番号17『指を銃に変える能力』。


 スナイパーライフルに変えた指を、オルニスに向けて弾丸を一発放つ。

 空中に居たオルニスは、避けるのが間に合わず弾丸を体に受けた。


「ぐはぁ!このガキィ……うげぇ!?」


 ――能力番号22『鉄製の物を大きくする能力』。


 それだけでなく、オルニスの体に入った弾丸が、体から飛び出すくらい大きくなる。


「ああぁ!?何だこれは?弾丸が大きく見える……ぞぉ?」

「能力番号24『影から死神を出す能力』!」


 更には、僕の影から這い上がるように死神が現れる。

 黒い影を服のように纏い、大きな鎌を持った太い骨が特徴的な骸骨――死神は浮いており、僕の三倍は大きい。


「悪魔と死神のコンビから、どう逃げる?チープな魔物よ」


 僕は羽根を広げ、死神は鎌を鎌を構える。

 二人で、オルニスに攻撃を仕掛ける。


 オルニスは慌てて、羽根を弾丸のように飛ばし、頭の羽根を鋼に変え、僕や死神に振りかざす。


 僕と死神は羽根を避けながら、双剣や鎌を振るう。

 しかし双剣も鎌も、オルニスの硬い硬い羽根を断ち切ることは出来なかった。


「硬ぇな」


 明らかに、先程より皮膚が硬くなってる。

 しかし、代わりに動きが遅なった。

 どうやら羽根の強度を上げると、スピードが落ちてしまうようだ。


「図に乗るなベゼ!お前はもう、死の一歩手前だ!」


 オルニスの腹の骨が光を放った。

 その光から危険を感じ、死神を前に持っていき、出来るだけ後方に逃げる。


「もう遅い!」


 オルニスの骨が光と電流を放ち、僕へ向けて魔法を放たれた。


「フンッ!」


 ――能力番号31『体の一部にバリアを張る能力』。


 右手に張ったバリアで、光と雷の魔法を防ぐ。

 しかしバリアは、呆気なく破壊される。


「ありゃ……思った以上に強度弱――」


 魔法は死神をチリにして、背後に居た僕にも当たった。


「がはぁ!」


 黒い羽根は無くなり、地面に落下する。

 オルニスはニヤニヤと笑いながら、真っ黒焦げになった僕に近付く。

 腹に刺さった大きな弾丸を抜き、傷を羽根で塞いでいる。


「可哀想に……直撃し――」


 慢心したオルニスの胸に、銃が放たれる。

 その銃弾は大きくなり、オルニスの胸を大きく削った。


「ぐはぁ!まさかお前……生きて!?」

「逆に死んだと思ったのかい?」


 僕の体は、焦げてしまった硬い岩で守られていた。

 この岩は、布を岩の鬼――『ロッツ.オグル』の皮膚に変えた物だ。

 おかげで、致命傷にはならないで済んだ。


「いや死ねよ」


 オルニスは胸の弾丸を引き抜き、睨みを効かせる。


「僕に命令できるのは僕だけだよ。あっ、そうか……力が無いから自分では殺せないのか……だから本人に頼んだんだね?可哀想に……」

「あぁ?寝ぼけてるのか?」

「それお前だ……来いよ寝坊助野郎」


 オルニスは羽根を大きく広げ、鋼の羽根を飛ばす。

 僕は羽根を手から出すバリアで防ぎながら、周りを猿のように走り回る。

 走って逃げる道中に、冒険者の死体に触る。

 いや、正確には冒険者の着ている服に触れてる。


「何!?」

「大ボケオルニス?何間抜けズラしてんの?」


 死んだ冒険者の服が、次々と『ボーン.アダラ』に変わる。

 サイズは僕の身長にも満たないが、代わりに動きが早い。

 アダラの軍隊は、羽根を掻い潜りながらオルニスに向かって行く。


「「ロオォォ!!」」

「雑魚が何体居ても変わない」


 アダラの軍隊は、オルニスが起こした風で軽くあしらわれた。


「逃げてく?怖気付いたかな?」


 アダラの軍隊は、オルニスから離れるように一ヶ所に逃げた。

 そして皆で体を寄せ合い、震える。

 こう見ると、アダラも可愛く見える。


「震えてもダメ、皆死のうね」


 オルニスが光と雷の魔法を放とうとしたその瞬間、アダラの軍隊は、光を放って合体した。

 アダラの大きさは、通常のサイズに限りなく近くなる。

 オルニスなんか踏み潰せそうな大きさだ。


「合体!?」

「ロオオオオォォ!!」


 アダラは元々小さな服で作った存在……だから服を集めて巨大なアダラになれた。

 しかしオルニスは、上空を空高く飛んでアダラの頭上に身を置いた。


「所詮、魔法をぶつける為の骨の塊」


 オルニスは再び光と雷の魔法を放った。

 だが、先程の魔法とは威力が桁違いだった。

 アダラの体は、魚の背骨が綺麗に剥かれるように、魔法で裂かれた。


「ロオオォ……」


 アダラが死に、その姿が元の服に戻る。


「凄い威力だった!僕にはその威力の魔法は無いし、能力ですら破壊力に欠ける!本当に凄い!」

「それはどうも……お礼に最大級の威力をプレゼントしようか?」


 ゆっくり地に降りてきたオルニスは、爽やかな笑顔を見せる。

 僕に近づき、大胆に距離を縮めて来る。


「ぜひ。しかし、プレゼントを先に贈るのは僕だ」


 再びローブを羽根に変え、宙を舞う。

 オルニスの一歩上に出た僕は、オルニスに被せるように、大きな布を広げた。


「君がアダラと遊んでる間に村中のカーテンや布を集めて来た」


 この布は、集めた衣類を能力番号25『物と物を接合する能力』で接合した巨大な布。

 そしてこの布は、巨大な生き物に姿を変える。


 ――能力番号19『衣類を生物に変える能力』。


「君が可愛そがっていた、レフコス.ドラゴンだッ!」

「なにぃ!?うげぇ!」


 布は一瞬にしてドラゴンの姿に変わる。

 ドラゴンと地面の距離が近かった為、オルニスはドラゴンと地面に挟まれてしまう。


「うぉぉぉ!!」

「へへっ!せいぜい醜く頑張れ!世界一醜いサンドイッチの完成よ!」


 オルニスはドラゴンを押し上げようと、手足を必死にドラゴンの体に押し当てる。


 ――能力番号3『手から釣り糸を出す能力』。


 手から出した釣り糸をオルニスに引っ掛け、ドラゴンの上から引っ張る。

 釣り糸をこの状況で強く引っ張ることで、より重い圧がかかる。

 オルニスは力を入れ、自身とドラゴンの間に羽根も入れるが、重力とドラゴンの体重の方が強い。

 オルニスは腕が折れて、血を吹いて地面に挟まれた。


「ハハッ!可哀想に……こんな汚ぇ奴を踏み潰したドラゴン……君が可哀想だよ」


 ドラゴンから降り、潰されたオルニスを確認しに行く。

 ドラゴンの下から血が溢れ出て、オルニスの腕が引きちぎれていた。


「貴様ァァァァ!!ベゼェェ!!」

「がはぁ!?」


 しかしオルニスは生きていた。

 ドラゴンの下から這い上がるように出てきて、血だらけで体が潰された状態なのに、鳥のような足で蹴りを入れて、僕の体に乗った。


「ああああああああぁぁぁ!!!私の腕が無くなってしまった!!再生するまで無様で不便で仕方ないんだよぉぉ!!」


 怒り狂い、僕の顔の前で叫ぶ。


「だから何だよ」


 ――能力番号27『二秒間重力を反転させる能力』。


 能力により、オルニスの体は周りの物や家と一緒に、地面から離れる。

 僕はその隙を着いて、後方に下がる。

 二秒間が立つと重力が戻って、勢い良く家や物が地面に落ちる。


「負け犬の遠吠え……君は鳥っぽいけど、君にピッタリだね」

「私のプレゼントがまだだったな?プレゼント内容は先に教えてやる……この村全てに範囲が及ぶ雷魔法だ……逃げることは出来ない」


 オルニスの目に嘘は無かった。

 ハッタリでも無い……僕はそれを知って慌ててオルニスに立ち向かった。

 逃げることが出来ないなら、魔法を放つ隙を与えないことが必要だと悟ったからだ。


「マーちゃん急げ!奴を止めるんだよ!」


 自分で自分を奮い立たせる。


「もう遅い!雷魔法、フォス.セリーニ!」


 僕が攻撃するより先に魔法が放たれた。

 オルニスを中心に、地面が歪む程の電撃が走り、周りが一切見えなくなる。

 家や畑が台風の後のように荒らされ、消し飛んだ。

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