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離愁のベゼ ~転生して悪役になる~  作者: ビタードール
三章『世界旅行編』
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第二十三話『目的達成』

 *(マレフィクス視点)*


 人々は、燃えるホテルの中から出て来た女性を保護した。

 その女性は、まだ中に人が居ることを人々に告げたが、皆にできることは消防隊を待つことだけだった。


 しかし、ホアイダの強力な水魔法により、10分ちょっとでほとんどの火が消えた。

 結局、消防隊は消火の仕上げをするだけで済んだ。


「はぁはぁ……疲れました」

「お疲れ」


 魔法を使うのにはあ体力が必要だ。

 強力な魔法を10分間使い続けたホアイダは、かなり疲れただろう。

 例えるなら、5㎞走った後の疲労だ。


「下がって下がって!」


 消防隊が、ホテルの中から生存者や死体を運び出す。

 怪我や火傷を負った者がほとんどで、死体は数える程しかない。

 それでも、人々にとっては、かなり痛ましいことなのだろう。


「マレフィクス……あの服って……」

「あまり見るな……僕らの想像通りであってるよ」


 消防隊が運んでいる死体の中には、運び屋フォリアと見られる者もあった。

 見覚えのある服装、皮膚は全身焼けただれているが、間違いないだろう。


 あまりの悲惨な死体の姿に、ホアイダも腰を抜かしている。

 顔色を悪くし、目から光が無くなっていく。


「そんなことって……」

「残念なことだが……真実だ。人も集まってきた……この場を去ろう」


 僕は、青ざめて苦しそうにするホアイダの背中を押し、フードを被ってその場を立ち去った。


 * * *


 先ほどの火事も、フォリアを殺したのも、全て僕の計画の内だ。

 フフッ、つくづく思うよ……僕って悪だなって。


 しかしだ。

 おかげ欲しかった能力が手に入った。


 現在の能力は以下の通りだ。


『0』能力を奪う能力。

『1』爪を尖らせる能力。

『2』行ったことある場所に転移する能力。

『3』手から釣り糸を出す能力。

『4』水を熱くする能力。

『5』相手から恐怖を無くす能力。

『6』鉄を消す能力。

『7』痛みを一つ消す能力。

『8』音が目に見える能力。

『9』皮膚の一部を硬くする能力。

『10』髪の毛に意志を与える能力。

『11』影を水に変える能力。

『12』スライムを作る能力。

『13』周りの死を感じる能力。

『14』木を枯らす能力。

『15』岩を降らす能力。

『16』涙を垂らした場所に爆弾を仕掛ける能力。

『17』指を銃に変える能力。

『18』鏡を作る能力。

『19』衣類を生物に変える能力。

『20』姿形を変える能力。


 能力数『25』になるまであと九十人。


 ちなみに、入れ替えを行ったのは能力番号2だ。

 もともとは、『風の向きを操る能力』だった。

 この能力はボーン.アダラとの戦で一度きり使った。

 特別強い能力でなければ、入れ替えても良いだろうと思い、これにした。


 *(ヴェンディ視点) *


 目の前には、焼け焦げ消火されているホテルがある。

 消防隊は生存者の保護や死者の確認で忙しく、周りの人々は唖然としていた。


「ノウ.アトラスで感じた危機ってのは火事だったのか……クソッ!間に合わなかった」


 今現在、俺が居るのは世界番号11『ニューデリー』だ。

『地図を見れば世界の危機的状況が分かる魔法ノウ.アトラス』で危機を感じ、この国にすっ飛んできたが……一足遅かった。

 殺人犯を裁いてから来たのが遅れた原因だ。

 火事だと分かっていれば、こちらを優先させていた。


 だが妙だ……今まで家事が危機的状況として反応することは無かった。

 まだ憶測でしかないが、ひょっとしたらこの火事は意図的に誰かが起こしたもの――つまるところ放火なのかもしれない。

 そう考えると、ノウ.アトラスに反応した理由に納得できる。


「あの少女が火を消していなかったらもっと犠牲者が増えていましたね」

「少女が火を消した?初耳だが?」


 消防隊の話が俺の耳に入ってきた。

 どうやら、消防隊が来る前に誰かが火を消していたらしい。


「もう向こう側に去っていきましたけど?」

「見てないな。どんな子だった?」

「色白で白髪の小柄の子でしたよ。大きな荷物を持っていたので旅行客では?ちなみに彼氏持ちでしたよ」


 消防隊の話を聞き、俺の頭にはホアイダの顔が浮かんだ。

 色白で白髪、カタラ人のような特徴を持つ人間は少ない。

 それに大きな荷物、旅行者というのも当てはまる。

 彼氏持ちってのは、マレフィクスのことだろう。

 二人は旅行をしているし、偶然この場に居てもおかしくない。


「向こう側ってのは、地図で言えば西側か……西側!?」


 この街の地図を開き、俺は唾を飲み込んだ。

 地図を間違えたのかと思い、思わず二度見したくらい驚いた。


 地図の西側、それはどす黒い程の赤色の危険信号がある場所だ。

 赤くなっている場所は豆粒くらい小さいが、色が異常だ。

 こんな悍ましい色で危険信号を見るのは初めてだ。


 それだけではない。

 あろうことか、この赤い危険信号は西側に向かってほんの少しずつ動いているのだ。

 スピード的に、人が歩くスピードだ。


「マレフィクスとホアイダが心配だ……何か起こる前に行かなくては」


 消防隊が指を指していた方向に向かって、駆け足で移動する。



 数分後、マレフィクスとホアイダを見つけたので、追跡することにした。

 地図を見たとこ、危険信号はマレフィクスとホアイダから放たれている。


 つまり、この二人に危険が起きるってことだ。

 ただしこのドス黒い色だ……危機はかなり大きなもので、近いうちに起きる出来事だということになる。


 二人を守る為、セイヴァーとしての活動は今しばらく休まなければならないようだ。


 *(マレフィクス視点)*


 この旅行の目的である能力は手に入れた。

 しかし、まだ行っていない竜の土地も行く。


 その理由としては、能力番号2『行ったことある場所に転移する能力』で転移できる場所を増やしたいからだ。

 この能力は自身が訪れた場所しか行けない。

 つまり、マインクラフトの地図のように、これから地図埋めを行わなければならない。


 それは時間を掛けて行えるが、最低限今訪れれる三つの土地には訪れておきたい。

 そうすれば、今後の地図埋めがとても効率的になる。

 ゲームだと思えば、結構楽しいものだろう。


「落ち着いた?」

「えぇ、かなり」


 焼けたホテルから歩いて数分、僕とホアイダは小さな喫茶店で一休みしていた。

 苦しそうだったホアイダは、ココアを一飲みし、心も体も落ち着いたようだ。


「なぜホテルが燃えたか……気になりますね。誰も気付かなかったなんて、少し引っ掛かります」

「んなこと知らないよ。気にしたとこで何にもならないよ」


 ――まぁ、僕が燃やしたからなんだけどね。


「そうですね。ですが、フォリアさんが死んだのは信じられませんね。彼は転移の魔法を持っていました。なのに、脱出できなかった……なぜだと思いますか?マレフィクス」

「さあね。自分が逃げることより、生存者の救出を優先させたとかだろうよ」

「あるいは……能力を使う前に、火が燃え移り、とどめを刺されたとか……」

「まるで誰かに殺されたみたいな言い方だね」

「その誰かが居るなら、放火魔でしょうね」


 まるで、何か知っているような言いぶりだ。

 なよなよしているホアイダの発言にしては、自信たっぷりって感じだ。

 それにこいつ、勉強はできない癖して意外と賢い。

 感も良いと見た。


「放火魔?あのホテルを意図的に燃やした犯人が居るとでも?仮にそうだとしても、放火する理由が見当たらない」

「放火の理由、可能性だけならたくさんありますよ。ホテル内の誰かに恨みがあったり、ホテルを燃やすことで何らかの利益があったり……可能性はあるほうだと」

「じゃあフォリアをホテル内で殺す理由は?」

「何か見られてはいけないものを見られたとかでしょうね。殺し方もたくさんありますし……直接ではなくても、魔法か能力で遠隔で殺したかもしれませんし」

「つまり、何が言いたい?」

「あの火事は放火魔の可能性が高く、もし本当にそうなら許せないということです」


 ホアイダ……やはりこいつは変人だ。

 いじめを打開することもできない弱者のくせに、その力に共わない正義感がある。

 だが、不思議とムカつきはしない。

 それはきっと、こいつがそこら辺の偽善者とは違い、常に正しくあろうとし、誠実でいる本物の善人だからだろう。

 弱く、正しく、誠実……僕とは真反対の奴だ。


「証拠がない……考えても無駄なことを考えるな」

「……すみません。私個人の感情と憶測にマレフィクスを巻き込んでしまいました」

「別にいいよ。その代わり、何かあることに謝るな」


 今日この日、ホアイダが僕の正体を知った時がより楽しみになった。

 一体どんな表情を見せてくれて、どんな行動をし、どんな対応を取るのか……ワクワクが止まらない。

 積み木を高く積み立てている途中、崩れた時のことを考えるとドキドキするような、それに似た気持ちが僕を包み込む。

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