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離愁のベゼ ~転生して悪役になる~  作者: ビタードール
二章『大都市メディウム編』
20/93

第十九話『新たな目的』

 学校を一週間以上休むことになった。

 この世界では、医療技術そのものはあまり発展していないが、医療系の魔法がある。

 そのような魔法を使える者のほとんどが、医療関係で働いている。

 その魔法を使っても、僕の体は一種間以上安静にしないといけないらしい。


「ほんとすげえなお前、記事を見るまでボーン.アダラなんて空想の魔物だと思っていたよ」

「さすがマレフィクスです」


 学校を休んだことで、ヴェンディとホアイダがお見舞いに来た。

 お見舞いに来たことで、ギルドに加入したことがバレた。

 バレて問題は無かったが、できれば内緒にしておきたかった。


「それにしてもギルドに加入したとはな。俺誕生日二月だから待ち遠しいぜ。ホアイダは十二月だっけ?」

「はい。十二月六日です」

「君がギルドに参加した時には、僕はSランクになってるよ」

「ハハッ、さすがに調子乗りすぎな」


 この二人が居る病床は、かなり賑やかだ。

 暇している僕には、正直ありがたい。


「そうそう、お前が学校に来なかったから渡せなかったんだよ。な?ホアイダ」


 ホアイダが、ヴェンディの問いかけに小さく頷く。

 そして二人は、僕に小さい箱を二つ渡した。


「誕生日おめでとうございます。白い箱が私からで、黒い箱はヴェンディからです」


 そう言えば、二人に誕生日を教えていた。

 この二つの箱は誕生日プレゼントということになる。


 まず最初に、横に長く黒い箱から開けよう。

 リボンを解き、少しわくわくしながらゆっくりと箱を開ける。

 中には、端っこに金で描かれたポム吉のようなキャラクターが居る。

 ちょっと高級そうなお財布だ。


「そのキャラ、ポム吉みたいですね」

「僕も思った」


 次に、小さな白い箱を開ける。

 箱の中には、宝石で出来た赤色のヘアピンと、先端にこれまた金のポム吉のようなキャラクターが付いてる赤のイヤーカフ。


「またポム吉……」

「マレフィクスは髪が長いのに切らないので、ヘアピンがあると便利かと……」

「イヤーカフは?」

「単に私が、イヤーカフ仲間が欲しいだけです」


 少し恥ずかしそうに言うホアイダ。

 こいつが右手でポム吉を意味なくいじってる時は、大抵表情に困っている時だ。


「二人ともありがとう」


 今この場で、貰ったばかりのプレゼントを燃やすのも良いが、この品は思い出の品として貰っておこう。


 * * *


 結局、退院したのは二週間後だった。

 月も六月から七月に変わったしまった。

 この地方の季節で言えば、冬から春だ。


 七月五日、土曜日。

 この日、退院して初めてギルドに訪れると、多くの人に褒められた。


「お前さんがエリオットの一番弟子か!若いな!」


 とか。


「凄いな君、エリオットがべた褒めしていたよ」


 とか、


「よお!ボーン.アダラ殺しの少年!」


 とか。


 これは退院中に得た情報だが、ボーン.アダラのことはニュースにもなった。

 ボーン.アダラという幻の魔物が実在したこと、ボーン.アダラが倒されたこと。

 つまり僕は、歴史的な瞬間に直で立ち会えたことになる。

 凄くラッキーだ。


「おめでとうございますマレフィクス、『ボーン.アダラ殺し』の称号をギルド本部から授与されました」


 称号というのは、功績だと捉えていい。

 何か大きなことを成し遂げると貰えるらしいが、僕は初クエストで貰えてしまったようだ。


「どうも」

「ランクも上がっていますからご確認ください」


 受付人も凄く嬉しそうだった。

 称号をギルドカードに記入する時も、気分よさそうにしていた。


「マレフィクス!久しぶりだなぁ」


 元気な声と共に、エリオットが僕の肩を優しく叩いた。


「久しぶり」

「君にプレゼントがある。ちょっと二階まで付いてきな」


 ――プレゼント?誕生日ならとっくにすぎたけど……なんだろう。


 そう思いながらも、黙ってエリオットに付いて行く。

 エリオットが向かった場所は武器屋だった。

 この前武器と防具を買ったお店で、おっちゃんの店主がこれまた嬉しそうに、待っていた。


「坊主すげえな、エリオットと二人でボーン.アダラを倒しちまうなんて」

「まあね。僕天才だから」

「それはともかく、お前さん武器破損したよな?」

「うん」

「新しい武器を用意しといた」


 そういって店主が渡したのは、前のデザインと変わらない双剣だった。

 だが、黒い刃の素材が前と違う。


「気付いたか?その刃の素材は坊主が倒したボーン.アダラの骨だよ。鉄なんかよりずっと硬く丈夫な素材だ」

「値段は?」

「スマイル一つ」


 つまりお金は要らないってことだな。

 お礼に、軽く笑ってやろう。


「フッ、ありがと」

「おうよ」


 エリオットが言っていたプレゼントってのは、この双剣のことだった。

 新し武器を買うのに、お金を気にしていたから、正直嬉しい。


「マレフィクス、今日はクエストに行くのかい?」

「もちろんだよ」

「なら一階に行こう。そろそろハンナも来るはずだ」

「分かった」


 これからも、ギルドでエリオットを利用し、もっと多くの魔物を殺して行く予定だ。

 多くの魔物を殺すことで、能力番号19『衣類を生物に変える能力』でより強く、より多彩な魔物の力を得ることが出来る。

 今回、『ボーン.アダラ』を殺せたことはかなりの収穫だった。

 Sランクの魔物に出会えることは滅多にないからね。


 * * *


 七月七日、月曜日。

 今日から学校へ復帰だ。


「正直お前が居ないと学校はつまらないぜ」


 いつも通りの三人で、昼食を取っているときに、ヴェンディがそう言った。


「ホアイダ、こいつキモイな」

「どこがですか?」

「マレフィクス、やっぱお前最低だな」


 ヴェンディは、言って後悔したような表情を浮かべ、少し拗ねる。


「けど、私もマレフィクスが居る方が楽しいです。クラスにはマレフィクスしか友達居ませんし」

「だろうね」

「それはそうと、もうそろ春休みだぜ?」


 ヴェンディに言われて思い出した。

 この学校の春休みは七月十五日、春休みまであと一週間と一日なのだ。

 この国の学生にも、日本で言う夏休み冬休みがある。

 長期休みの制度は国によって違うだろが、この国では春と秋だ。


「確かさ、春休みにしたこと?思い出的なことを発表する宿題無かったけ?」

「ある。けど俺、発表するほどの予定今のとこ無いんだよな。お前らはある?」

「ん~、そういえば、春休み始まってすぐにお母様の誕生日があるので、お父様とケーキでも作ってお祝いをすると思います」

「ほお~ん、良いじゃん。親孝行してんな……マレフィクスは?」

「世界征服」


 僕の発言以降、一瞬空気が凍った。

 二人とも、どう反応していいか分からないって表情だ。


「世界征服って……具体的にそれは何をするんだ?」

「世界中の観光都市に訪れる」

「お前それ……世界旅行だろ!何が世界征服だ!分かりずらいギャクだったから反応に送れたろッ!このアホォ!」

「イテッ……」


 別にギャクじゃなかったが、当然のように打たれた。

 だが、おかげでヴェンディもホアイダも、表情が戻った。


「世界旅行というのは本気なのですか?」

「本気」

「お前の爺ちゃんと行くのか?」

「いや、僕一人」

「嘘!?お金は?移動手段は?行く場所は?」

「爺さんに出させる。移送手段は馬とか船とか地形による。場所は『ニューデリー』とか大国から小国までいろいろ」

「スゲー行動力。ほんと尊敬するよ」

「君も行くかい?ヴェンディ」

「いや……俺は、やめとく」


 ――ダメ押しで誘ってみたが、やはり来ないか。


 ヴェンディはセイヴァーとしても行動しなくてはならない。

 僕と世界旅行してる時に、セイヴァーとしての活動は出来なくなるから、来ないのは当然。


「あの、私も行くって言ったら、困りますか?」

「え?別に、困りはしないけど……まさか、行きたいの?世界旅行」

「はい」


 まさか、ホアイダが自ら行きたいと申し出ると思わなかった。

 ホアイダを連れてくメリットはなさそうだし、計画の邪魔になるかもしれない。

 しかし、ヴェンディを誘った後に、ホアイダを断るのは不自然だし、旅の話相手が居るのは良いかもしれない。


「良いよ。一緒に行こう」

「ありがとうございます、マレフィクス」


 ホアイダは瞬驚きつつも、嬉しそうに笑った。

 こうやって笑うと、ちょっとボーイッシュな女にしか見えない。


 それはともかくだ。

 なぜ世界旅行をするか、不思議に思ったよね?

 実は、大国に欲しい能力を持つ人間が居ることが分かったんだ。

 つまり、世界旅行を装い、その人間を殺して能力を奪うことが今回の目的。

 その能力、それは『行ったことある場所に転移する能力』。

 世界中で悪さしたい僕には、とても必要な能力。

 春休み、これを取りに行く。

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