一話 : だから勘違いですってば!
青く澄んだ青空に、ぽかぽかと気持ちのいいお日様。
肌を撫でるそよ風は心地よく、風が吹くたびについ目を閉じてしまう。
周りに一切の雑音はなく、自然の音だけが木霊している。
草が風にしおれる音、小鳥のさえずり、風が耳元をかすめる音ーー
自然のオーケストラが、私の耳元で開かれていた。
目を開けば、眼前に広がるのは一面の草原。
青々とした草たちは、心地よさそうにお日様を浴びて喜んでいる。
昔、絵本で読んでもらったような牧歌的な風景。
勉強や人間関係なんて全て忘れて、ただひたすらにここでゴロゴロしていたい。
そう思って草原にごろりと寝転んだ瞬間、私は大事なことをにわかに思い出した。
「ーーここ、どこ?」
✴︎
「うーーん、全然分かんない!!」
草原から起き上がって少し散歩してみたものの、ここが何処なのかが全然分からない。
見渡す限り草原だし、私のいる場所は少し小高い丘みたい。
目の前に一本立派な木があるくらいで、他には何も見つけられない。
そもそも、なんで私こんな所にーー?
「確かさっきまで学校にいたよね?お母さんの作ってくれたお弁当を食べて、余った時間に窓際の席で居眠りをした……と、思うんだけど……」
おぼろげな記憶を辿るも、やっばり進展はなし。
こうなるといよいよ、ここが何処だか分からなくなってきたなーー。
「ま、いっか!どうせ夢だよね!こんなのどかな所私知らないし!」
そう、おそらくこの風景は夢だ!
明晰夢とかいうやつだろう、多分!
リアルに体験できるとかいう夢。私はおそらくそれを見てるんだろう。
「そうと決まれば、もう一眠りしますか!次の時間……英語だから……今のうちに寝とかないと……」
そう思えば、いやでも頭が睡眠モードへと切り替わる。
ゆっくりと草原に座って、そのまま両手を広げて後ろに倒れる。
仰向けになると睡魔はいよいよ私を侵食してきて、次の夢の世界へと私を誘おうとしてくる。
心地よい日なたの下、私は目を閉じて夢の世界へ入ると…………
…………
……
…
.
「なーーーーに寝てんですか魔王様っっ!!起きてっっ!起きてくださいーーーっ!!!」
「わっ、きゃ、なに!?」
急に耳元で発生した大声に驚いて、私は勢いよく体を上げる。
のどかな風景に、綺麗な小鳥のさえずりーー。
そんな牧歌的な光景に似合わない美少女が、目の前にいた。
赤紫の長髪に、真紅の瞳。
すらりとした四肢と整った体を覆うのは、同性の私でも思わず目を晒してしまうようなきわどい服。
子供のようなあどけなさを残しつつも大人びた雰囲気を持つその美少女が、私の後ろに立っていたのだ。
しかも、その背中に黒い翼を2つ携えて!
「あ、ああ悪魔!?」
「いきなり悪魔呼ばわりですか!いくら魔王様でも失礼ですよ!さっきからおかしな行動ばっかり!さ、早く魔王軍を作りますよ!」
「ちょっと待って魔王軍ってなに!?私そんなの知らない、多分その魔王様ってのは人違いじゃ」
「なーーにとぼけてるんですか!まさかこの数年の間で腹心の姿すら忘れたって……言うんじゃ……」
そこで不意に言葉が止まる。
先ほどまで怒っていた美少女は眉をしかめ、真紅の瞳を徐々に私の顔に近づけて、まじまじと顔を観察するとーー
「え!?あれ、違う!貴方魔王様じゃない!」
急にそんな事を言い出した。
「だから、さっきからそう言ってたじゃん!!」
そんな私の大声は、草原中に木霊した。
初めての作品です!
拙いところもありますが、読んでいただけるとありがたいです。
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もししていただければ、作者が夜通し祝詞を唱えますっ……