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なまけものおじさんと妖精

作者: 初心者

 昔々あるところに、ダメ蔵というひとりのおじさんが住んでいました。

 ダメ蔵さんは農家の一人息子ですが、パパママが死んじゃった後は碌に仕事をせず、家で酒を飲みながらだらだら過ごしています。

 当然周りの評判は悪いです。今日だって朝から博打に行こうとしたら、庄屋さんに「親不孝者」「人間のクズ」「消えちまえ」と罵詈雑言浴びせられました。楽しい気分をぶち壊しにされたので、博打に行くのはやめることに。


 本当は寝たかったけど、さすがに田畑を放置しておくわけには行かないので重い腰を上げて耕すことにします。少しは見直してほしいし。


 耕し始めてから暫くすると、鍬が何か堅い物に反応しました。とても大きいです。

 何とかして掘ると、大きな箱が出てきました。

 ダメ蔵さんは欲が深いので、埋蔵金ではないかと疑います。

 疑いつつ箱を開けると目の前が急に眩しくなりました。

 

 ようやく目が慣れてきたのでゆっくり目を開けると、そこには一人の少年が。

「だ、誰だお前は」

「僕?僕は妖精。おじさんのパパママに封印されてた妖精だよ」

 この妖精はダメ蔵さんのパパママによって長年この箱に封印されてたそうなのです。


「おじさん僕を助けてくれたから、お礼に3つだけ願い事叶えてあげる」

「マジで!?」

 どうやらこの話に登場する妖精も願い事を叶えることが可能みたいです。

 

 欲の深いダメ蔵さんは早速こんなお願いをします。

「俺を大金持ちにしてくれ!」

「わかった。じゃあ1つ目の願い事を叶えるね。えいっ」


 次の瞬間、ダメ蔵さんの腕が急に重くなりました。重たい重たい千両箱を持たされているのです。降ろそうとしても手がくっついて千両箱から離れません。

「ちょちょちょちょっと!こいつは一体どうなってんだ」

「だっておじさん、“大金持ち”になりたいんでしょ?願いが叶ったんだから離しちゃだめだよ」


 本当の意味で大金持ちになっちゃいました。これでは意味がありません。

「も、元に戻してくれ!」

「わかった。じゃあ2つ目の願い事にするね。えいっ」


 次の瞬間、元に戻りました。

「死ぬかと思った......」

「でもおじさん、願い事はあと1つだよ」


 そうです。もう2回も使っちゃいました。もう欲の深い願い事はしたくありません。そうなると残るはあれでしょうか。

「いつか庄屋をとっちめてやろうと思ってたからな。よし、俺を透明人間にしてくれ」

 ダメ蔵さんは透明になって庄屋さんに日頃の恨みを晴らそうと考えているようです。

「いいよ。でも一つだけ注意。透明になったおじさんの声を聞けるのは僕だけだから、そこは気を付けてね」

「おう。とにかくあいつに俺の存在が気付かれなければそれでいい。じゃあ俺は行ってくるぜ」

 ダメ蔵さんはそう言うなり走って家を出て行きました。


「あのクソジジイめ。今に見てろ」

威勢のいいことを言ってるうちに庄屋さんの家に着きました。


 とにかくおどかしてやろうと障子を開けた瞬間です。

「ワンワン!ワン!」

 なんと飼い犬が5匹も飛びだしてきたではありませんか。たとえ透明人間になったとはいえ匂いまでは消えないので、人間よりも遥かに嗅覚の優れている犬にはすぐに見破られます。庄屋のジジイはセキュリティ面でもぬかりなかったわけです。ダメ蔵さんはたちまち傷だらけになりました。

「くそ!このままじゃ復讐どころじゃねえ。とりあえず撤退だ!」

 すぐに自宅へ逃げました。


 家にはまだ妖精さんがいたので、透明人間の解除を申し出ます。

「復讐に失敗した。とりあえず俺を元の姿に戻してくれ」

 でも妖精さんはすぐには口を開きませんでした。

「何ボーっとしてんだ。早く戻してくれよ」

「おじさん、今までいくつ願い事したか覚えてる?」

「あっ......」


 今更気付いても遅かったのです。ダメ蔵さんは既に3つ願い事をしたので、もう元の姿には戻れません。

「じゃ、じゃあ俺は一体どうなっちまうんだよ」

「どうなるかって?透明人間の姿が続くだけでしょ」

 当然のように言う妖精さんの表情は既に冷めていました。

「おじさんのおかげで僕は自由の身になれた。僕はこれからこの世界を思う存分堪能するよ。じゃあね、おじさん」

 妖精さんはそう言うと、消えました。


「お、おい待ってくれよ。何とかしてくれよお(涙)」

自分の声が誰にも聞こえなくなった今、助けを求めるダメ蔵さんの声はどこにも届きません。



 数日後、ある山道でお侍さんの乗る馬が“何か”をひいたみたいなのですが、それが何なのかは未だにわからないそうです。





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