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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

2人のなくしたもの

作者: 宵街

※短いし、文章能力の乏しさが・・・・・・

何故そこに立っているのか、ここは何処なのか、さっぱり分からない。気づいたら【私】はここに居た。


目の前に広がる景色は墓地と、真っ黒な服を身に纏った黒髪の女の子だった。彼女はホロホロと静かに涙を流していた。


私に気づいた彼女は、綺麗な涙を流しながら私に優しく微笑みかけ、「あなたも、誰かを亡くしたの・・・?」と聞いてきた。


亡くした・・・?分からない。だって私には何故ここにいるのかも、私が誰なのかも分からないから。

だから彼女に「思い出せないんです」と伝えた。


彼女は自分の口元に手をやり「まあ」と呟いた。


「あなた、記憶喪失なのね・・・?可哀想に・・・」


その言葉に唇を噛む。

憐れまれるのは、嫌い。なんとなくそう思った。


「・・・私、もう行きます」


「まぁ、何処に行くの?記憶がないのでしょう?」


「・・・・・・」


何故か、私はこの場を離れたいと思っている。

何故?さっきの言葉が癇に障ったから?それだけで?


私は自分自身の気持ちすら分からなかった。


「ねぇ、大丈夫?私心配だわ。記憶がないのに1人でどうにかして行くなんて、きっと大変よ」


彼女は私の腕を掴み、私の顔を覗き込んだ。

彼女の瞳は恐ろしいくらい真っ黒で、吸い込まれてしまいそうな感覚に陥った。


「だ、いじょうぶ、ですから・・・・・・」


「ダメよ。今夜寝るところはあるの?食事は?あぁ、やっぱり心配だわ」


掴まれている腕に鈍い痛みが走る。

彼女が手に力を入れたからだ。


「ねぇ、あなた、私の家にいらっしゃいな」


「・・・・・・え・・・・・・?」


「大丈夫。私の家、結構お金があるのよ。1人増えるくらい、構いやしないわ」


美しい顔を綻ばせて笑う彼女は、どこか異質なようにも感じた。


だって、見ず知らずの人間を、彼女は養いたいと言う。

普通、そんなことしない。なんで?どうして彼女は・・・・・・。


「・・・・・・私がおかしいと思う?」


「え」


もしかして口に出していたかと、思わず口を塞ぐ。

彼女はそれを見て、悲しげに笑った。


「当然でしょうね。普通なら、その日会った人間を無償で助けるだなんてしないもの」


そう言い、ふっと長い睫毛を伏せ、「私ね」と続ける。


「今日、愛する人を亡くしたの。とても大事な人よ。その人とは、幼なじみだったの」


「・・・そう、だったんですか・・・・・・」


「そう、だからね。今日愛する人を亡くした私と、自分を亡くしたあなた。・・・・・・きっと神様が導いてくれたのだと思うのよ」


そう言った途端、彼女の瞳からポロリと1粒の涙が零れ落ちる。


あぁ、彼女は寂しいのか。

だから記憶のない私で寂しさを埋めたい、そういうことなのだろうか。彼女からすれば、きっと自分の中に出来た穴を塞いでくれるなら誰でもいいんだろう。

たまたま、今日ここに、記憶のない都合のいい人間が現れた。

だから彼女は提案した。

なんて自分勝手、なんて残酷な人。

―だけど、それを愛おしいと思う私はなんなの?


私は両手で彼女の頬を包み込む。


「泣かないで。あなたの泣き顔は、何故か見ていると辛い」


「・・・・・・」


「あなたの言う通り、行くあてはない。心配する振りをして、本当は自分のことを優先するあなただけど、いつかあなたの心が癒えるまで、あなたの傍に居てもいいと思った」


「・・・・・・本当?いいの・・・・・・?」


「いいと思った、って言ったでしょ?」


そう、私の心が彼女に動かされた、それだけ。

彼女は私の言葉を聞くと、「ありがとう」と小さく呟き、頬を朱に染め微笑んだ。

まるで天使みたいに。


彼女は私の手をとると「帰りましょ、私達の家に」と言い、手を引きながら歩き出した。


私は頷き彼女にたどたどしくついていく。



ふと、彼女が立っていたお墓の前に1枚の写真が置いてあることに気づく。

その写真には、人影が2人分あった。

目を凝らして見ようとすると、突然強い風が吹いて、写真は空高く舞っていってしまった。


「あ・・・・・・」


「どうかした?」


「あなたの写真が、向こうに・・・・・・」


「あら、そう、飛んでいったものはしょうがないわ」


「え?」


その答え方はあまりにも軽く感じた。

てっきり、愛する人とやらとの写真だと思ったのに・・・・・・


「だって、あの写真はもう必要ないもの」


彼女がボソッと何かを呟いた。


「何か言いました?」


「いいえ、なんでもないのよ。行きましょう」


後に振り返っても、あの時の彼女は愛する人がその日に亡くなったとは思えないほど、幸せそうだった。





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