浦島キャット
にゃいってば。
むかしむかし浦島キャットが砂浜を歩いていると子猫たちが亀をジッとみつめていました。
キャットはそれを見ても何も思わず横切りました。
横切っただけですが、キャットは大きめのねこなので子猫たちはこわくなってにげてしまいました。
「助けていただきありがとうございます」
「んに?」
キャットはそれでも歩みを止めません。
歩きたい気分なのです。
「待って!どうかお礼をさせてください!私の背中に乗ってください。海のなかの楽園……竜宮城につれていってさしあげますよ」
キャットは
(海のなかはちょっとなぁ)と思いました。
ねこは基本水が嫌いです。
塩水なんていやいやん。
キャットが止まらないので亀はカチカチの琥珀色の石をキャットの前に投げました。
よい香りの石です。
キャットはそれをガジガジしました。
「乾燥ホタテ貝柱があってよかった!よし!今のうちに織姫さまをつれてこよう!」
ボジャンという音が聴こえましたが、キャットはもうホタテに夢中です。
どれぐらい時間がたったでしょう?
キャットがホタテを食べ終え顔をあげると亀の横に女がたっていました。
「あなたが亀を助けてくれたのですね?私は織姫。亀を助けてくれたお礼にあなたにこれを差し上げます。これは玉手箱。決して蓋を開けてはいけません……」
織姫は海にかえっていきました。
キャットは織姫の着物が桃色だったので
(桃色だった)
と考えながら五分ほど海をみつめていました。
日もくれはじめ、寒くなってきたのでさて帰ろうと後ろを振り替えると様子が変です。
なにもなかった場所にみたこともない建物がたくさんあります。
驚くほど高い。
『にゃんにゃんにゃんニャンキーホーテー♪』
『えー次は秋葉原ー秋葉原ー』
「にゃー」
どうやら知らない世界にきてしまったなぁとキャットは鳴きました。
「にゃー」
まあいいかとキャットは鳴きました。
とりあえず温かみあるところにいこうとキャットはあるきだしました。
玉手箱は無視しました。
おもしろいものではなさそうですし、食べ物でもない。
『開ける』という意味もキャットにはわからないので興味なし。
その後キャットは乾物屋のおじいさんに拾われジェームスという名前をつけられ、時々ホタテ貝柱を貰える幸せな生活をおくったとさ。
めでたしめでたしだよね、こ。
しつこいにゃ。