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無題  作者: ナナシ
第2章
23/102

第1話 『涙』

 どうして、みんな怖い顔をしてるんだろう?


「そいつを殺せ! いまならまだ間に合う!」


「ふざけるな、こいつは私の息子だ。させると思うか?」


 ーー優しかった薬師のおじさん。


「忘れたのか!? 危険すぎる! 力をつける前に始末するべきだ!」


「可能性に過ぎん。いいから出ていけ」


 ーーよく遊んでくれた戦士長さん。


「保証がないと我々も許容できん。暴走したらどうする? 被害が出てからでは遅いのだ」


「そうならないように育てるのが私の役目だ。万が一の場合は、私が責任を持つ」


 ーーいつも見守ってくれた里の長。


 みんな、いつもと全然違う。

 すごくぴりぴりしてる。

 母さんも。

 叱られるときより、ずっとずっと怖い顔。


 みんなが僕を見て、にらんでる。

 どうして?

 みんなと違うから?

 違うのは、そんなに悪いことなの?

 僕が悪いの?


「ニュクス。お前が息子を大切にしているのは分かっている。だが、皆が不安なのだ。

 家族を失ったものもいる。彼らの恨みの矛先が向くかもしれん。争いの芽は積むべきだ」


「ならば、息子を連れて里を出ればいいだけの話だ。

 ......頼む、長。私から息子を奪わないでくれ。この通りだ」


 母さんが、頭をさげてお願いしてる。

 里で一番つよいのに。

 戦ったら誰にも負けないっていってたのに。

 僕のために。


 みんなが、だまってる。

 びっくりしてる人もいっぱい。

 母さん、あんまり謝らないからかな?


「......明日話をする。今日はもう遅い。お前達も、この件に関しては口外を禁ずる。

 ニュクスの子にも手を出してはならん。良いな?」


 里の長のいうことを、難しい顔して聞いてる人ばかり。

 ぞろぞろ、家の扉から出ていくみたい。


「すまないな、ニュクス」


 すこし優しい顔に戻って、里の長が母さんに話しかけて、いなくなった。

 家の中がすごく静かで、ほっとする。

 ふくろうが鳴いてる。お腹すいたのかな?


「大丈夫か? フュフテ。怖い思いをさせたな。泣くな。男だろう?」


 母さんが、頭をなでてくれる。

 僕は泣いていたみたい。

 体もぶるぶる震えてた。

 怖かったんだ。


「すまない。お前は悪くない。全て私のせいだ」


 母さんが抱きしめてくれる。

 ちょっといたい。

 でも、あったかい。大好き。


「......っ、すまない......」


 あれ?

 母さんも泣いてるの?

 初めて見たかもしれない。

 泣かないで。

 僕も悲しくなるから。


 頭がぼおっとする。

 眠くなってきたのかな。


 おやすみ、母さん。ごめんなさい。

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