第四章 事実は小説よりも奇なり その18
「それよりいま思ったけど、アレンは地球に来た時
に、すぐ捕まえたらよかったんじゃないの。政府の
許可なしで地球に来たんでしょ」
「いえ、許可はあったのよ。下の方のだけどね。だ
から対応が遅れたってのはあるかな」
「あっ⁉ 分かった、ロキだ。ロキの催眠術で役所
の人間を操って、無茶な許可を出させたんだ」
「正解よ。それと、誰が何を企んでいるか探るため
に、少し泳がせることにしたの。もしかしたら大物
の黒幕がいる可能性があったし。実際、ロキという
大物中の大物がいたわけだけど。ただ、まさか来て
早々に地球人の前に姿を現すとは思ってなかった。
これは完全に予想の斜め上をいかれたわ。しかも日
本の大阪だし」
「そうか、アレンがバカな事しなかったら、一般の
地球人はいまも知らないままなんだよな。俺がファ
ムとニケに出会うこともなかったわけだし。ある意
味では、アレンに感謝だな」
「でも、まめパンを譲ったことで快君に危険が及ぶ
ような展開になるとは、本当に申し訳ないと思って
る」
「謝る必要ないよ。確かに今日は殺されるかと思っ
て本気でビビったけど、まめパンをもらった事は感
謝してるし。それにみんな無事だったからね」
「そう言ってもらえると助かるわ」
「あっ、そういえば不思議な事があった。ロキが俺
を攻撃しようとした時、手になにも持ってなかった
のに、突然銃が現れたり消えたりしてん。あれって
優さんとかもできるん?」
「いや、人間にはできないわ。それができるのは変
身したまめパンだけで、私が知っている限りでは、
今は恐らくロキしか使えない能力よ。自在に自分だ
けが所有する亜空間を、開けたり閉めたりできる。
その亜空間に様々な武器を入れておけば、好きな時
に取り出せる。それを、亜空間ウエポンラックシス
テム、と呼んでいるけどね。まったく凄い能力よ。
戦闘時、ストックが尽きないかぎり、無限に武器を
取り出せるんだから。更に戦車や戦闘機、その他の
大型兵器でも、亜空間の入口を広げる事ができれば
自在に出し入れできて、軍隊であろうとどこまでも
簡単に持ち運べる」
この説明をしている時の優さんは、少し怖い顔を
していた。
てか亜空間と言われても、さっぱり分からん。漠
然としているが、ニュアンス的には四次元ポケット
と考えればいいのかな。ただそれが怖いことは理解
している。
「た、確かに、無限に武器が使えたり、いきなりそ
の場に軍隊を出せたりとか、トンでもない反則能力
やね」
「そう、反則なのよ。もしも、どこまでも亜空間の
入口を開く事ができるなら、それはもう、銀河系す
ら飲み込んでしまう、超大型のブラックホールと同
じということなのよ」
「ブラックホールって……ヤバすぎですね……」
「恐らくロキは、星を破壊するぐらいは簡単にでき
るはずよ」
「星を破壊って……それもうフリーザ様じゃないっ
すか。超絶怖いんですけど」
「まあこれは私個人の考えだから」
「てかどうやって星を破壊するんですか? ただ亜
空間に飲み込むだけ?」
「例えば、月が地球に落ちたら、終わりでしょ。そ
ういうことなんだけど」
「な、なるほど。分かりましたよ方法が。月とか巨
大な隕石を、亜空間に入れて運んで、地球に落とす
んですね」
「正解。よくできました」
「ってことは、優さんが言ったように入口を無限に
開く事ができれば、別の銀河系で亜空間に入れた銀
河系を放出して、ビッグバンを起こすこともできる
ってことか」
「まあ理論上は、だけどね」
「ヤ、ヤバすぎる……ロキ恐るべし……」
まめパンとはどこまで凄い生物なんだよ。ただた
だ怖いぜ。
しかし、人間を遥かに超えた身体能力にサイキッ
ク、更に強力すぎる特殊能力、そして命令には絶対
服従、これだけの条件が揃えば、兵器として戦争に
使われたのが、いま色々話を聞いて、改めて分かる
気がする。
「それじゃあ快君、私はもう行くね、仕事があるか
ら。近いうちにまた会おう」
そう言って優さんは、闇の中へと消えていった。
でも宇宙人だったとは、やっぱ複雑な気分だ。こり
ゃ茜には言えないな。
とりあえず、めっちゃ疲れた。なんか頭もクラク
ラする。俺もさっさと帰って寝よ。流石に今日はこ
れ以上、驚く事は何も起こらんやろ。
そういえば、話に夢中になって、ファムとニケの
ことを忘れてた。
二人を見ると、しゃがみ込んで互いに寄り添うよ
うにもたれかかって寝ていた。その横には、皐月が
行儀よくお座りした状態でまだ寝ている。
みんな今日は色々あって、かなり疲れたようだ。
ほんとよく頑張ってくれた。ありがとうな。
そして三匹、いや、今は二人と一匹を起こし、俺
たちは我が家へと山道を歩きだした。その間、大人
ファムとニケは相変わらず口喧嘩をしていた。まあ
吠えていたのはファムばかりで、ニケはクールにあ
しらっていた。
双子みたいなものなのに、なんでこんなに仲が悪
いのやら。
その時、ファムは突然、体を光らせ閃光を放つ。
勿論これは変身の光だ。そしてファムは、二段階変
身前の、アホ毛がある中高生姿に戻った。
ファムはまだまだ変身をコントロールできないみ
たいだし、外出は危険だな。




