第四章 事実は小説よりも奇なり その15
すると突然、何もなかったはずの空に、車とも戦
車とも思えるような謎の物体が、十数体現れた。そ
れは不自然に空中に浮き、ヘリコプターみたいにデ
カい音を出すでもなく、その場で停止している。
これは、アルドゥランの宇宙船で使われてた、姿
を消すのと重力を操るシステムか。
いったい何が起こってるんだよ。アレンも驚いて
て知らなかったみたいだ。
空から俺たちを見下ろす謎の乗り物が、地上にラ
イトを向けて照らしだす。その場は昼間のように明
るくなり、周囲を見渡すと、暗くて見えなかった木
々の方に大勢の人が居るのが分かった。
謎の集団はぞろぞろと出てきて、俺たちを逃がさ
ないように大きめに取り囲んだ。恐らく百人以上は
いる。
その人種も様々で、白人に黒人、アジア人系もい
る。性別は男女半々で、スーツ姿の者もいれば、軍
服の奴らもいて、全員が未来的な武器らしいものを
装備している。
とにかく何者なのか見当もつかないが、怪しすぎ
るぜ。だが今のところ、俺たちに危害を加える気は
なさそうだ。
てか超怖いんですけどぉ‼ 足がガクガク震えて
立ってるのがやっとだ。心臓もバクバクして息苦し
い。マジでどうなるんだ俺。もう夢オチであるのを
願うしかない。
そして謎の集団の後ろから、女性が一人、俺たち
の前へと出てくる。
「えっ⁉ 優さん? なんで……」
姿を現したのは、間違いなく我が親友の優さんで
ある。いつも通りスーツを着ている。
なんだ? 俺の脳味噌は溶けてしまったのか。ま
ったく思考が働かない。
「来るのが遅れてごめんね。まさかアレンが今日の
うちに、快君のところに行くとは、予想外だったん
で。それに色々と、準備するのに手間取ってしまっ
て。でもホンと無事でよかった」
優さんはいつも通り爽やかな笑顔を見せ言った。
「えっと……何がどうなってるの? 頭痛いんです
けど」
「まあちょっと待っててよ。後でちゃんと説明する
から」
優さんはそう言った後、アレンの前に移動した。
「もう分かっていると思うけど、私はアルドゥラン
政府のものよ」
なんですと⁉ 優さんが政府の人間……てことは
優さんはアルドゥラン人ということか。そんなバカ
な。
「何故こんな小さな星に政府の人間が……」
アレンは力なく発した。
「あなたのように他の星に行って、犯罪を犯す者が
多いからよ。まったく、恥を知れ‼」
優さんは眉間に皺を寄せ、睨んで強く言った。
「それじゃあ私の計画は最初から、ただの無謀なも
のだったということか」
アレンは肩を落とし、呆然と俯いたままボソッと
独り言のように呟く。
「アレン、あなたを侵略および殺人未遂の容疑で逮
捕する。それにまだ他の罪状もつくと思いなさい。
あと計画に加担したあなたの部下たちも、既に捕ま
っているわよ」
優さんは毅然たる態度で決め台詞を言った。まる
でドラマのラストシーンのようで、優さんは美人だ
から絵になる。マジで惚れてまうところだ。
その時、ロキがゆっくり堂々と歩いてアレンに近
付く。ロキが動いた瞬間、周りを取り囲んでいた全
員が、緊迫した空気を強めた。
「ロキ、まさかお前が裏切ったのか」
「冗談はよせ。俺はお前の傍にずっと居ただろ。そ
れに政府の人間は嫌いだ」
「じゃあ何故、こんなことになるんだ」
「運がなかった。それにお前の計画は、俺の力に頼
りすぎ、万全というにはほどとおいものだ。更に最
後まで、注意すべきところには目がいかず、ただ前
を、そして上だけを見過ぎた」
「バカな……」
「お前の野望は終わりだ。まあここまでの男だった
ということだ」
「まだだっ‼ まだ終わらない‼ 私にはお前がい
るではないか。お前ならこいつら全員を簡単に倒せ
るはずだ。さあやるんだロキ、こいつらを殺せ‼」
「もう終わったんだ、アレン。それが分からぬ程、
バカではないだろう」
ロキはゆっくりと顔を左右に振った後、どことな
く哀れむ表情で言った。
「主人である私を裏切るのか‼」
「裏切る? 何を勘違いしている。俺がいつお前を
主人と認め、主従の契約をした」
「ぐうぅぅ……そ、それは……だがこれまで、私の
命令に従っていたではないか。何故いまになって見
捨てる」
「それは、お前が我が主を愚弄したからだ‼ 主が
死んで契約が切れても、ともに過ごした時間や絆が
失われるわけではない‼ いいかアレン、貴様ごと
きが理解し語れるほど、我が主の生きざまは、浅く
も安くもないのだ‼」
ロキは鬼の形相でアレンを睨み付け強く言った。
その迫力に圧倒されたのか、アレンは操り人形の糸
が切れたように膝から崩れ落ちる。
なるほど、分かったぞ。少し前に見たあのロキの
鬼の形相は、俺を殺そうとしたんじゃなく、主を悪
く言われたから、本気で腹が立ったというわけか。
まさにこれは、口は災いの元ってやつだ。
「さよならだ、アレン。お前と過ごした時間、それ
なりに楽しいものだったぞ」
何故かその言葉に嘘はないような気がした。それ
にアレンを見下ろすロキの顔は、どこか悲しげにも
見える。
「なんかよう分からんけど、俺の方は運があったみ
たいやな」
その場の空気など関係なく、緊張が解け気が抜け
た俺は、思わずそう言ってしまった。
しかし俺の運の良さは神がかってる。まさかまだ
助けが来るとは。しかも最後は宇宙人だった優さん
だし。
だが俺のこの不用意な言葉を聞いたアレンが勢い
よく立ち上がった。
「ふざけるな‼ 私の計画に運など関係ない、全て
完璧だったはずだ‼」
アレンは狂気じみた表情で言い放ち、ナイフを取
り出した。
どうやら俺は余計な事を言って、寝た子を起こし
てしまったようだ。いま口は災いの元とか学習した
ばっかなのに、何やってんだ俺は。




