第四章 事実は小説よりも奇なり その13
そしてファムを包んでいた光は弾けるように飛び
散って消えた。だがまめパンの姿に戻ってない。フ
ァムは人間の姿のままだ。でもなんだろ、少し違っ
て見える。
雰囲気が違うだけじゃなく、容姿が少し変わって
いる。成長したといえばしっくりする。
年の頃は二十歳ぐらいで、大学生のお姉さんみた
いだ。身長は10センチほど伸びてるし、顔付きも
可愛い感じから美人に変わっている。胸は元から大
きかったけど、少し育って93ってとこか。まさに
理想の大きさ。お尻も迫力があっていい感じに大き
くなっている。
しかしセクシーすぎるというか、なんかエロいん
ですけど。フェロモンが全身から噴き出ている。す
っぴんでこれだけ美人なら、化粧をしたらどれだけ
色気が出るのか末恐ろしい。
ていうか、やっぱ変わりすぎだ。更にアホ毛がな
くなってるし。これは天然とかアホじゃなくなった
ということか?
「まさか……二段階の変身だと……まだ生後数か月
の子供なんだぞ、どうなっている。この星には、ま
めパンを覚醒させる何かがあるのか」
アレンは目を見開いて驚いている。やはり凄いこ
とらしい。
「ファム、体は大丈夫なんか?」
「えぇ、大丈夫よ。それより快、あなたはもっと下
がってなさい。良い子にしてたら、後でご褒美あげ
るわよ」
ええぇぇぇぇっ⁉ ちょっと何これ、なんか性格
変わってるんですけどぉ‼
ソフトな女王様タイプというか……ただ随分と頼
もしいじゃないか。それにご褒美とはなんだ、やっ
ぱりエッチなやつかね。ぜひ欲しいんだが。とかバ
カなこと考えているうちに、大人ファムが突撃し、
ロキとの戦いが再開された。
凄い……二人の動きが更に早くなった。変わった
のは見た目だけじゃなく、身体能力も飛躍的に上が
っている。もうほとんど何をやっているのか分から
ない。時折、動きを止めた時のみ、はっきりと姿が
確認できる。
しかし相変わらずロキの余裕の表情は崩れない。
ただ気のせいか、ロキは誰もいない山の奥の方に、
たびたび目線をやるように見える。
「なによそ見してんだ‼」
ファムは怒号を発しながら手刀を繰り出し、ニケ
を捕まえているロキの手に命中させた。
当然この隙にニケは逃げ出したが、その場から離
脱せず、まだ戦う気満々だ。
「お前は邪魔だ、下がってな」
まさに女王様口調で、ファムがニケに命令した。
「ふんっ」
ニケはファムの言葉を鼻であしらう。どうやら気
の強い子のようだ。
でもまめパン姿のニケが戦うのは無茶だ。攻撃す
るにも、噛むか爪で引っ掻くか、捨て身の体当たり
ぐらいだろ。
「あっそ、勝手にしな。でも邪魔だけはするんじゃ
ないよ」
ファムは素っ気なく言うと、その場に残像を残し
疾風の如く突撃する。
ニケも負けじと続いたが、やはり人型の二人と比
べると、まめパン姿のニケの動きは遅く感じる。と
はいえ、ポケモンとタイマンできる強さだと思う。
ファムとニケは戦いの素人らしくなく、フェイン
トを入れながら素早く動き回り間合いを詰めている
が、ロキは微動だにしない。
すると痺れを切らしたようにファムが踏み込んで
拳を繰り出す。だがロキは、何かを放つように右の
手の平を突き出した。
さっき俺が飛ばされた時と同じで、目に見えない
気功波のようなものが、突風の如く凄まじい衝撃と
なり、ファムに襲い掛かる。
ファムは回避できず直撃を食らい、後方へと吹き
飛び、受け身も上手く取れず、地面に叩きつけられ
た。
でも明らかに手加減されており、大きなダメージ
は負っておらず、すぐに立ち上がった。この時、ニ
ケも勇猛果敢に爪を出して襲い掛かっていた。だが
ファムと同じ攻撃を喰らって、車にでもはねられた
ように吹き飛ぶ。
普通に考えれば、二人が受けた攻撃の威力が同じ
なら、人型のファムと違い、まめパン姿のニケは小
さい分、受けるダメージも大きくなる。そしてニケ
は俺の方へと凄い勢いで飛んでくる。
俺はサッカーのキーパーのように、とっさに飛び
つきニケを胸元で受け止めた。でもその衝撃は凄か
った。踏ん張る事ができず、一緒に後方へと飛ばさ
れ、地面を転がった。
「ううぅぅぅっ、マジで痛い……」
ニケは少しダメージを負ったようだが、俺の胸元
で元気にもがいている。手を放せば今にも出撃して
いきそうだ。
「お前はアホか、どんなけアグレッシブやねん。今
はファムに任せろ。お前はもう俺の家族だからな、
無駄死にさせるわけにはいかん」
そう言ったらニケは急におとなしくなり、俺の目
をじっと見詰めた。その時、ニケは突然、俺の唇に
キスをした。それはまさしく、絶対の服従を誓う契
約のキスだ。
何故こんなタイミングで? と思った瞬間、ニケ
の全身が光に包まれ強烈な閃光が飛び散った。まさ
か……これは変身か⁉
ニケを包み込んだ光が眩い粒子となり弾けて消え
ると、そこには人型に変身したニケがいた。勿論、
すっ裸の状態でだ。
しかしこれは……この顔は、夢に出てきた少女と
瓜二つだ。それに二段階変身前のファムとよく似て
いる。
長く美しい金髪に青い瞳、色白の肌、グラビアア
イドル級のスタイル、本当にファムと似ている。た
だ目付きの感じだけが、ファムよりも鋭く見える。
んっ? よく見ると、ニケにはアホ毛がないぞ。
因みにニケの年頃は、俺や茜と同じで中高生ぐらい
だ。
「あっ、こらっ‼ なにどさくさ紛れにやってんの
よ。快はこの私の物よ。手を出すんじゃないわよ」
大人バージョンの女王様ファムが、透かさずツッ
コミを入れた。
「ふんっ、誰が早いもの勝ちと決めた」
ニケは小馬鹿にするように鼻で笑い、クールに言
い返す。
「な、生意気な……後で決着はつける」
なんかよく分からんが、ますます変な展開になっ
てきたぞ。
「はははっ、なんて面白い奴らだ。さあ、二人でか
かってこい」
ロキは楽しそうに高らかに笑った。まるでやんち
ゃな子供を相手に、一緒に遊んであやす父親のよう
だ。
「あんたなんか、私一人で十分よ‼」
ファムはご機嫌斜めで吠えるように発し、ロキに
突っ込んでいく。




