第四章 事実は小説よりも奇なり その9
「地球侵略でもしにきたんかよ」
「ほほう、いい答えですね。ハズレではありません
よ。まあ君の考えている侵略とは、違うと思います
けど」
「おいおい、本気で言ってるんかよ。俺は冗談のつ
もりなんやけどな」
どんどん話が大きくややこしい事になっていく。
ほんま俺みたいなガキがきく話じゃないだろ。この
国の政府はどうなってんだ、こんな危ない奴を野放
しにしやがって。
「どうやって侵略するのか知らんけど、結構強いと
思うぞ、この星の軍隊も。お前たちの思い通りにい
くかよ」
「ふふふっ、地球の科学や軍隊など、アルドゥラン
にとってなんら脅威ではない。蟻を踏み潰すのと同
じぐらい簡単に勝てる」
アレンは小馬鹿にするように鼻で笑い、勝ち誇っ
た。
まあ力の差は言われなくても宇宙船を見た時から
理解してたけど、面と向かってこいつに言われると
腹が立つ。
「君は勘違いしているよ。先ほど言ったはずだ、君
の考えている侵略とは違うとね。私は最初から戦う
気などないんだよ。それにこの事は、私個人の野望
であり、アルドゥラン政府とはまったく関係ないこ
とだ。だから戦争などにはならないさ」
「個人の野望? 侵略しにきたのに戦わないって、
どういう事やねん」
「血を流さないということだよ、極力ね。私がまず
侵略するのは経済だ。この世界の経済を思いのまま
に操り支配する。そしてその後は政治だ。経済と政
治を支配する、それはこの星の人間の意思さえも支
配するという事だよ。分かったかな、快くん。私の
侵略、というか遊びを」
経済とか政治って言われても、いまいち俺には分
からん話だ。てか遊びってなんやねん。
「とりあえず金儲けがしたいんやろ、好きにやった
らええやん。てかもう商売やってるし、儲かってる
やろ。それに、お前の侵略にファムがなんの関係が
あるねん」
「ただのまめパンのままなら関係なかった。でも君
のまめパンは不幸なことに変身能力を開花させてし
まった。この先、強力な能力を身につける可能性が
ある。更に何故かその個体は、ロキの精神波を受け
にくかった。精神制御するために、前もって催眠術
をかけていたんですけどね。まあそういう事からも
危険な存在といえます」
催眠術……ファムの不可解な行動は、そういう事
だったのか。
もしかして、術の影響を受けにくいのは、泥棒に
頭を殴られた時に、いったん脳が傷ついたからじゃ
ないかな。すぐに治ったからよく分からんけど。
とにかく今の俺の立場は、大人買いされた食玩に
ついてる、小さいラムネの粒というわけだな。なら
ファムという不安要素にくっついてきたオマケの俺
は、確実に捨てられる切ない運命が待っているわけ
だ。って俺は何を冷静に例えてんだ。
「私の計画には、多くのまめパンが使われているん
ですよ。世界中に販売した物は全てそうです。君の
まめパン同様に、催眠術をかけてあり、離れた場所
からでもロキが自在に操れる」
「わかんねぇな。まめパンを制御して、どうなるっ
ていうねん」
「我々は宇宙人ですから、この星でビジネスをする
には当然、厳しい監視や制約がつきまといます。今
はまだ我々に対し恐怖はあれど、信用はありません
から。何をするにも簡単に許可は下りず、時間を無
駄にしてしまう。そこでロキとまめパンが必要とな
るわけです。まず各国の政府の者たちに会った時に
ロキの特殊能力の一つである、催眠術を全員にかけ
た。ロキの数ある能力の中で催眠術は別格で、目を
合わすだけで術をかけられ、更に精神をシンクロさ
せ、意のままに操れる。しかし人間相手の遠隔操作
は、遠く離れてしまえば難しい。人間への精神波は
それほど遠くまで届かないからね。だが同族になら
かなり遠くに離れてもロキの精神波は届く。それで
世界中に販売したまめパンが必要となるわけです。
各国の政府関係者が自分の国に帰って遥か遠くにい
ても、まめパン達を媒介にして精神波を飛ばし、催
眠状態で操れる。まあまめパンは、電波塔の役割を
はたすわけです。でも遠隔操作などしなくても、政
府の人間には、我々に不利になる事には反対し、利
益になる事に賛成するように、催眠暗示をかけてあ
りますけどね」
なっげー、相変わらず話し長いんだよ。聞いてる
こっちがもう喉からっからだし。
てかもう、ちゃんと理解してないけど、無茶苦茶
なこと言ってやがる。どんな理屈や理論か知らんけ
ど、本当なら変身まめパンの超能力凄すぎる。ホン
と何でもありの世界だぜ。流石奇跡の異生物という
べきか。それともロキが特別なのか。しかし不都合
があれば、催眠術で簡単に処理できるわけか。なん
ともよくできたシステムで便利なこった。
アルドゥランのペットショップの営業や、まめパ
ンの販売許可がすぐに下りたのは、既に政府の人間
が、ロキの催眠術で操られていたと考えると辻褄が
合う。っていうか、それってもうギアス超えてます
よ。最強すぎる。
「近いうちに、私が世界中の政府の人間を操れるよ
うになり、様々な新しいビジネスを展開し、経済を
支配するでしょうね。そうなれば、地球人も当たり
前に、宇宙に住むようになりますよ」




