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第四章  事実は小説よりも奇なり その8



「答えは兵器だよ。人型に変身した個体を戦争に使

うための兵器として、政府は作り始めたんだ。この

当時アルドゥランは、周辺の星に移民した同じアル

ドゥラン人と戦争をしていたからね。そして拷問と

いえる厳しい戦闘訓練を積み、完成した戦士はまさ

に無敵だった。更に兵器で武装したその戦闘力は、

たった一匹で数艦隊にも匹敵し、戦局に大きな影響

を及ぼすと、あっという間に長く続いた戦争を終わ

らせた」


 遺伝子の次は兵器とか戦争とか、ハードすぎる話

になっている。はっきり言って、完全に話について

いけてない。


「終戦後、戦争を終わらせた英雄であるまめパン達

は、どうなったと思う?」


「想像もつかないな。でも、どうせ酷い事をしたん

やろ」


「酷い事か、まあ正解だな。多くの戦士は激しい戦

闘で限界まで力を使いすぎ、終戦の時には既に、体

も精神もボロボロの状態で、朽ち果てるように死ん

でいった。まだ戦える者達は回収された後、いつ暴

走するかも分からない危険な存在として、全て殺さ

れた。作った側の人間でさえ、その力に恐怖したん

だ。人とは恐怖を感じるものを傍には置けないもの

だ。かといって遠ざけるだけでは恐怖は消えない。

結局はこの世から消し去るしかなかった。そして変

身はできるが戦士になれなかった力の弱い者達は、

奴隷として飼われることになった。一部の科学者や

政府のものたちが、研究データやまめパンのサンプ

ルを、裏社会の闇ルートに流し、金に換えていたん

だ。まあ時代が変わり、いつしか奴隷という風習は

なくなったが、今でも少なからず変身できる個体は

奴隷として扱われていることが多い」


「ひでぇ話だな。お前ら酷すぎるぞ。いったい何様

のつもりだ」


「そんなに酷いですかねぇ。私はこの星の人間のこ

とを学びましたが、この世界にも奴隷は存在してい

たじゃありませんか。しかも、人が人を奴隷にして

いた。そちらの方が酷いと思いますがね。それに戦

争も絶えることなく続いており、兵士は次から次に

使い捨てにされています。我々と違いがあるとは思

えませんね」


「確かに、そうやけど……」


 くそっ、何も言い返せない自分が情けない。なん

でこんな話になってんだ。俺、普通の中学生なんで

すけどぉ‼


「しかしまあまめパンは主人に対し絶対の服従をす

るわけですから、奴隷には打って付けです。現在も

アルドゥランでは、まめパンを戦士に育て上げ、傭

兵として戦わせて、大金を稼いでいる飼い主もいま

す。アルドゥランでは小規模な戦争は絶え間なく起

こっているからね。需要は尽きないわけです。ただ

今の時代の戦士は、政府が本気で作り出した大戦時

の戦士と比べると、随分と強さのレベルが劣ります

が」


 耳が痛いぜ。地球でも未だに戦争は絶えないから

な。それに兵士として子供を戦わせているところも

あるってきくし、なんとも複雑な気分だ。


「このロキの前の主人も、ロキを戦士に育て、戦場

へと送り込んでいた。きっと巨万の富を得ていたで

しょうね。まあどこの世界にも、そんなクズはいる

ものです」


 アレンが好き勝手饒舌に話していたこの時、ロキ

は既に戦闘態勢なのか、その表情は般若と化してい

た。もう俺を殺る気満々じゃん。あまりに怖すぎて

立っていられない。正直なとこ、少し漏らしたと思

う。


 てかロキが戦士……そうじゃないかと少しは思っ

たが、アレンの言葉から察するに、ロキはまめパン

が変身した姿ということか。


 さっきから俺の体の自由を奪っている、凄まじい

プレッシャーの正体も、放っている相手が人間でな

いなら納得できる。


 じゃあいまファムを何かの特殊能力で操っている

のはロキってことだな。


 でも戦士と呼ばれる奴を相手に、どうやったらフ

ァムを助けられるんだよ。この場面で誰よりも凡人

な俺が、ファムを助けて逃げるなんて、蛙が蛇を、

鼠が猫を、ザクがガンダムを倒すようなものだろ。

運が良いとか通用する相手じゃないし、無理ゲーす

ぎる。


「もしかして、変身できるようになったファムを、

その戦士とやらに育てるつもりで、連れ戻しに来た

のか?」


「さあ、どうでしょうね。まあ展開次第ですね。そ

れよりも、まめパンのルーツを、楽しんでいただけ

ましたか」


 アレンはムカつく笑顔を見せ言った。それにして

も長々とよく喋ったもんだ。いま何か願いが一つ叶

うなら、逃げる事よりも、マジでこいつをボコボコ

にぶっとばしたい気分だ。


「随分と勉強になりましたよ」


 俺は素っ気なく返した。しかし可愛らしいまめパ

ンに、そんな悲惨な過去と秘密があったとはな。


 いま俺がその話を聞いて分かる事は、人とは自分

勝手で救いがたい生き物だってことだ。


 でも、なんでこんな追い詰められた最終局面で、

道徳の勉強しなくちゃいけないんだ。今から死ぬか

もしれないのに。


「快くん、私が何をするためにこの星に来たか、分

かるかな」


 また問題かよ。てかまだ話し続くのかよ。ホンと

ペラペラとよく喋る奴だ。「はっきり言って、お前

のことなんかどうでもええねん」と声を出して言っ

てやりたかったが、怒らすと厄介なのでやめた。




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