第四章 事実は小説よりも奇なり その4
「おっ、まだ食い足りないってか」
まめパンは一袋食べ終わると、すぐ次の袋に手を
伸ばし、今度は自分で袋を開ける。
しかし案の定、力を入れ過ぎで、勢い余って袋は
全開状態になり、中身のポテチはポップコーンが弾
けるように、見事に舞い上がり飛び散った。
子供が開けるとよくこうなるんだよなぁ。だがそ
んなことはお構いなしに、まめパンは落ちているポ
テチをバリバリと食べ始めた。
「わぁ〜い、ポテチポテチ。これ好き〜」
飛び散ったポテチを見て、ファムはテンションM
AXになり、謎のまめパンの横に蛙のように座り込
んで、床に落ちているポテチを無頓着に食べる。
「コラっ、拾い食いすんじゃねぇ」
一応は注意したが、全く聞こえてない。本当に食
うことに対し貪欲な奴だ。まあ動物だからいいんだ
けども、今は人間の姿に変身してるから、落ちてい
るものを嬉しそうに食べている光景は、流石に受け
入れがたい。
だがこうして本来の姿であるまめパンの状態と、
奇跡と称される人間へと変身した姿のまめパン、こ
の二匹が並んでいるところを見たら、眼前に当たり
前にある光景が、やはりトンでもない事だと確認さ
せられた。
もしも変身能力が世間に知られてしまったら、い
ったいどれだけの騒ぎになるのかは、想像もできな
い。
更にまだ、変身したまめパンは特殊な能力を身に
つけるっていうし、秘密がバレた時のことを考える
と怖くなる。
「それだけバリバリ食ってたら、喉が渇くだろ」
キャップを外してまめパンにコーラを手渡すと、
クンクンと匂いを確かめた後、ゴクっとコーラを飲
んだ。
その瞬間、まめパンの動きがピタっと止まり、可
愛い顔がしかめっ面になると同時に、まるでコント
のようにダラダラと口から垂れ流した。
「あれ? お前の口には合わなかったか。ファムと
同じかと思ったけど、色々と好みがあるんだな」
俺はまめパンの手からコーラをとってファムに渡
した。
「でも、他に飲み物あったかな」
キッチンを物色すると、カ〇ピスの原液が見付か
る。
まめパンに渡してちょっと匂いを嗅がせてみる。
すると原液のままなのに躊躇いなく、ゴクゴクと飲
んだ。
それは甘すぎるだろ。と思ったが飲み終えた後、
ファムがコーラを飲んだ後に見せる幸せそうな顔と
同じ表情を見せた。
どうやらこいつは可なりの甘党のようだ。しかし
カ〇ピスを原液で飲むとは、こいつか虫か銀さんぐ
らいだろ。
その後、満腹になったのか、トコトコと二本足で
歩き、リビングの窓から庭に出ていこうとする。
だが何やら鼻をヒクヒクさせ、俺の方に寄ってき
た。すると俺の体をクンクンと念入りに嗅ぎはじめ
ると、一瞬気持ちよさそうな顔をした。そして窓へ
と歩き出し、外に出ていこうとしたが、また戻って
きて、今度はアグレッシブに胸元までよじ登り、脇
の辺りに鼻先をねじ込み、存分に匂いを嗅いだ。こ
の時、謎のまめパンがニヤっと満足気に笑った気が
した。なんかよく分からん奴だ。
それから謎のまめパンは、外に出ると皐月の家と
なったテントの中へと、当たり前のように入ってい
った。
まさかそこに住む気か? なんかえらい事になっ
てきたぞ。
因みにファムは、まだ床に散らばったポテチを拾
い食いしている。まったく、呆れてかける言葉が出
てこないぜ。まあ可愛いから許すけども。
とにかく謎のまめパンをどうするか考えねば。と
思っていたら、突然ファムが立ち上がり、モジモジ
と落ち着かない様子で、慌ててリビングから出てい
った。
なんだ? 今まで見たことのない反応だ。てか人
間としてみるなら、あの動きはトイレか?
ファムの行き先を確認すると、やはりトイレに入
っていった。しかし、俺は使い方を教えてないし、
人間の姿のまま一人でちゃんとできるのか心配だ。
でもトイレのドアを開けるのはできない。そこまで
の度胸はないし、俺はそっち系を楽しめる変態でも
ない。とか思いつつ、トイレの中の光景を想像して
しまう。
ドアの前に張り付いているのは、レディに対し失
礼だから、暴走寸前のアホな妄想を押さえつつ、リ
ビングで待つことにした。
ファムは意外と早く帰ってきた。そして何もなか
ったかのように、ソファーに座っている俺に、無邪
気に抱きついてくる。
「ってお前、なんで脱いでんねん」
ファムは体操服とブルマをトイレで脱ぎ捨て裸で
あった。
しかし一人で行ってちゃんと済ませてきたという
事は、ショップにいる時にこの世界の人間の行動や
トイレの使い方を、躾けられていたのかな。
アルドゥランには、簡単に別世界の言葉などを覚
える事ができるシステムがあるというし、まめパン
は知能が高いから、似たような機械を使ったのかも
しれない。
てかウォシュレットは使えたのか、お尻はちゃん
と拭けたのかが気になる。でも流石に動物の姿じゃ
なきゃ、見て確認はハードル高すぎるぜ。もしも拭
けてなかったらどうすんだよ。
「うわっ、眩しい」
ファムは全身から光を放ち、青い瞳の金髪美少女
から元のまめパンの姿へと瞬時に戻った。
「やっと戻ったか。やっぱまめパン姿の方が落ち着
くなぁ」
勿論、人間姿は最高だけど、まだ慣れてないから
緊張して、精神的に疲れる。でも相変わらず変身は
突然だ。なんの予兆もないからいつも驚かされる。
なんとかして変身する時の法則を探さねば。
それから一息入れ、やけに重く感じる目蓋を少し
の間だけ閉じ、俺は新しく家族になるかもしれない
まめパンの名前を考えた。だがいつの間にか、また
ソファーに座ったまま眠っていた。




