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第四章  事実は小説よりも奇なり その1



 我が家へと辿り着き優さんと別れた後も、色々と

考えていると、そんな俺の様子を見てファムが心配

そうに寄り添ってくる。まったく可愛い奴だ。傍に

いるだけで癒される。


 しかし、どうやらゆっくりとくつろぐ時間はなさ

そうである。何故なら、ソファーに腰かけて数分と

経たぬうちに、庭の方からガサゴソと怪しい物音が

したからだ。


 泥棒に襲われたばかりだし、はっきりいってビビ

っていたが、ここは自分の家だし、堂々と毅然たる

態度で、庭に面していて出入りできるリビングの窓

を、勢い良く開けた。


「だ、誰や‼ 出てこいや‼」


 どもりながらも強めに発したが、本当に誰か出て

きたら、それはそれで困るんですけど。


「うわっ⁉」


 暗がりの中から生物と思われる白い謎の物体が飛

び掛かってきて、覆いかぶさるように押し倒され、

尻餅をついた。


「な、なんや、やめろって」


 白き謎の生物は、いきなり俺の顔面を、ペロペロ

と犬のように舐めまわしてくる。


 目を開けると眼前には、真っ白い犬がいた。どこ

からどうみても、さっき見かけた皐月だ。


「なんやお前か、驚かせんなよ。ちびるかと思った

やんけ」


 この時ファムは、俺の背に隠れて人見知りするよ

うに皐月をチラ見していた。でも俺とじゃれている

のを見て安心したのか、トコトコと二本足で歩いて

出てきて皐月に近付き、よく犬同士がするように匂

いを嗅ぎあった。


 どうやらお互い相手を気に入ったようで、じゃれ

あって遊び始める。


「お前、帰るところがなくてここに来たのか?」


 皐月は言葉を理解したように「ワンっ」と、ひと

吠えして返す。首輪をしていないので、やはり逃げ

出してきたと思われる。


「別にいいぞ、好きなだけここに居ても。お前は友

達だからな。ちょうど頼りになる番犬が欲しかった

し」


 そう言って頭を撫でてやると、皐月は抱きついて

きて、また俺の顔をペロペロと嬉しそうに舐めた。

ファムは状況を分かっていないが、俺の肩まで上が

ってくると、真似をして頬をペロペロと舐めてくれ

た。


「そういや背中に乗せてた相棒はどうした。まさか

落っことしてきたとか?」


 皐月に気を取られて、謎のまめパンの事を忘れて

いた。庭を見渡しても姿は見えない。


 くそぉ〜、気になってしかたがねぇ。なんで皐月

とまめパンが一緒にいたんだよ。やはりペットショ

ップから逃げ出してきたと考えるのが普通か。それ

に優さんの情報では、皐月はペットショップの近く

の町に預けられていたみたいだし、脱走した二匹が

偶然知り合ってここまで来たと考えれば、少し納得

いくかも。


 まあ今は色々ありすぎて混乱しているから、まめ

パンの事は深く考えないようにしよう。ただ、嫌な

予感はますます大きくなっていく。


 バトル漫画の王道パターンで、強い敵が現れボコ

ボコにやられて、修行して強くなってやっと倒した

と思ったら、また強敵が現れボコボコにされるとい

う、エンドレスな状況にはまりかけてて、運が良い

だけじゃ回避できない、途轍もなく大きな悪い流れ

の中で、より悪い方へと流されているような気がす

る。


 こんなことを感じるのは初めてのことで、時折押

し寄せる胸の高鳴りには、恐怖という感情が入って

いることに、俺は気付いている。


「よし、まずは家を作ってやるよ、皐月」


 因みに皐月は今どき珍しく、外に犬小屋を置いて

飼われていた。そういう風に躾けられているので、

皐月は基本的に家の中には上がらない。だから犬小

屋かそれに代わるものが必要だ。


 確かキャンプの時に使っていた、放り投げれば瞬

時にテントになるワンタッチ式の便利なものがあっ

たはずだ。


 大人が二人ぐらい入れる大きさだから、皐月一匹

なら十分に快適だろう。


 そしてテントを庭に設置し、中に毛布を敷いて寝

床を作った。


「これでどうだ、けっこういい感じやろ。中に入っ

てみろよ」


 皐月はテントの中へ入ると、毛布の上に寝そべり

嬉しそうに吠えて答えた。


 その様子を見ていたファムは、続いてテントの中

へと入り、楽しそうにゴロゴロと転がって遊んでい

る。


「これでまた、家族が増えてしまったな。よし、じ

ゃあ飯にするか。腹へってるだろ」


 皐月とファムは同時に喜びの雄叫びを上げた。飯

という言葉に敏感な奴らだ。皐月もけっこう食うだ

ろうし、食いしん坊コンビの誕生だな。これから食

費が大変だぜ。まあ、茜に頼めば幾らでも食い物持

ってきてくれるけどな。


 とりあえず、ファムにはコーラとポテチを食べさ

せ、皐月にはコンビニで買ってきた弁当を食わすこ

とにした。


 お皿に中身を取り出し眼前に置くと、皐月は一気

に平らげた。ここまで歩くだけでも大変なのに、ま

めパンを背に乗せて来たんだから、そりゃ腹ペコだ

よな。


 しかし今更だが、こんないい加減な食事ばかりさ

せといていいのかな。ポテチは美味しいけどお菓子

だからな。


 喜ぶからつい与えてしまうけど、体調崩す前に考

えないとだめだ。時には心を鬼にして、厳しく躾け

るのも、飼い主としての役目だ。


 とは言うものの、俺自身が親に厳しく躾けられて

ない、怠け者のぐうたら息子だからな。ペットは飼

い主に似るっていうし、ファムの今後が心配になる

ぜ。てか自分で言ってりゃ世話ないか。




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