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第三章 ピンチと秘密と皐月現る その4



 結局その日、起きたのは昼過ぎで、既にファムは

元通り元気になっていた。


「お前マジで凄いな。どんな体してんねん」


 ファムは褒められたと思い嬉しそうにはしゃいで

いる。


 とにかく今日は、変身の事が気になって仕方ない

ので、アレンに会いに行くことにする。


 ジャージをジーパンに穿き替え、フードの付いた

コートを着て、まあ変装という訳ではないがキャス

ケットの帽子を深めにかぶった。


 因みにスマホを確かめたら、相変わらずトンでも

ない事になっていたので、こりゃ対処しきれないと

思い、全部無視することにした。


「ファム、ちょっとここに入ってみろ」


 試しにフードの中にファムを入れたら、いい感じ

にすっぽり納まる。


「そこで大丈夫か?」


 と訊くと、ちょこんと顔を出し「はにゅ」と答え

た。なんかこれ、ピカチュウを背負うサトシの気分

だな。


 そしてアルドゥランのペットショップへと出かけ

る。辿り着くまでには、まず電車に乗り、途中から

はバスでの移動になる。ファムが見つかって騒ぎに

ならないか心配しながらも、なんとか無事に到着し

た。だが平日とか関係なく、ここは相変わらず凄ま

じい数の人間がいる。


 俺は人込みと行列を足早に通り抜け、入口の辺り

に居た昨日と同じスタッフに声をかけた。


 どうやら俺の事を覚えていたようで、すんなりと

裏口へと案内してくれた。そこで他のスタッフに連

れられ、またこの前と同じ部屋へと案内された。


 部屋の中にはまだ誰もおらず、ここで少しの間待

つように言われた。


 俺はファムをフードの中からだしてソファーに座

った。それから程なくして、奥のドアが開き、アレ

ンとその相棒のまめパンが姿を現す。


「こんにちは。確か快くんといいましたね。急にど

うしたんですか?」


 アレンとまめパンは正面のソファーに座った。


 アレンのまめパンは初めて会った時もそうだった

が、ファムとは違い落ち着きがあり、威厳すら感じ

られる。多分だが、既に何十年と生きている大人じ

ゃないかと思われる。でも大人だろうとその姿が可

愛い事に変わりない。


「まあ色々と訊きたいことがありまして。あっ、こ

いつの名前を付けたんですけど、ファムっていいま

す」


「そうですか、いい名前ですね。それに元気そうで

安心しました」


「そっ、そうなんですよ、とにかくもう元気いっぱ

いで……」


 いきなり大怪我させたとは言えないな。


「快くん、ここには私たちだけしかいませんから、

何でも相談してください。私は口が堅い方ですから

秘密は守りますよ」


 アレンは俺が言いにくそうにしているのを察して

優しい口調でそう言ってくれた。


「実はですね……アレンさんが言っていた奇跡につい

て聞きたいんですが」


「奇跡と言うと、公表されていないまめパンの秘密

についてですね。それで、何か奇跡と思われること

はありましたか?」


 アレンの顔から一瞬だけ笑みが消え、代わりに怪

訝な表情が現れた。


「俺も未だに信じられないんですが……まめパンの

秘密って、人間の姿に変身することじゃ……」


 アレンは驚いた表情を見せ、雛壇芸人がツッコミ

を入れる時のように勢いよく立ち上がった。


「ま、まさか快くん、君はその変身を見たというの

かい?」


「はい。何度か見ましたけど……」


「信じられない……それが本当なら凄い事だよ。ま

さかそんなことがあるとは……まさに奇跡だよ。君

はなんという運の良い人なんだ」


 今までずっと穏やかでクールだったアレンだが、

可なり興奮している。アルドゥラン人にとっても、

まめパンの変身は、それだけ凄い事のようだ。


「じゃあ、やっぱり奇跡の正体は、変身の事で合っ

てるんですね」


「勿論そうだよ。しかも前人未到の歴史的記録とい

えるよ。たった一日でまめパンの変身能力を開花さ

せるとはね」


「元々ここにいる時から、変身能力は持ってたんじ

ゃないですか?」


「いや、それは違うよ。変身能力はね、基本的に契

約のキスを交わしたまめパンしか、何故か身につけ

ないんだよ。だからこそたった一日で奇跡を成し遂

げた君は、飼い主として凄いんだよ。それに契約の

キスを交わしたからといって、変身できるわけじゃ

ないんだ。現在では99%に近い程の確率で、ほと

んどのまめパンが普通のままで、能力を開花させる

ことはない。一昔前は稀に程度は見かけられたけど

ね。だから奇跡なんだよ。まあ過去の資料によれば

例外的に、契約のキスを交わさずとも、変身したと

いうまめパンが居たらしいが、私の知る限りでは、

まだそういったまめパンは見たことがない」


「なんか話を聞いてると、確かに凄い事だなって思

いますね。でもこいつ、まだ変身を自分の意思では

できないみたいなんですよ」


「まだその子は子供だからね。でもいずれ自在にコ

ントロールできるようになるはずです。それがいつ

になるかは分かりませんが」


 テンションMAXだったアレンは、ここまで饒舌

に説明してくれたあと、一息入れてやっとソファー

に座った。


「それより、私の方が質問したいんだが、何か特別

な事でもしたのかい?」


「え、え〜っと……これといって特別なことはして

ないんですけど」


「う〜ん、実に興味深い。地球の環境や食物の中に

は、何か能力を引き出すものがあるのかもしれない

ね」


「とりあえず俺、これからどう行動すればいいんで

すか?」


「まさかこの地球で本当に、奇跡が起こるとは思っ

ていませんでしたが、とにかく今は、まめパンの変

身の事は秘密にしておいた方がいいでしょう。とて

も大きなトラブルの原因になる可能性がありますか

らね。アルドゥランでも能力を開花させたまめパン

が原因で、戦争にまで発展したことがあるんだよ。

変身能力を身につけたまめパンは、その昔は奴隷と

して高値で取引されていたからね。地球でも同じだ

と思うけど、大きな金が絡めば、人という欲深い生

き物は、冷酷で醜い姿をすぐに見せる。まあ、戦争

というのは昔の話だけど」


「そ、そうですよね。秘密にしておく方がよさそう

ですね」


 既に金がらみの最悪なトラブルは起こってるんで

すけどね。


 しかし戦争とは話がデカすぎる。流石についてい

けない。


 でも奴隷か……昔はこの世界にもそういうのがあ

ったんだよな。今でも金目当ての人身売買があるっ

てニュースとかでもやってるし、あの泥棒もそれが

目的だからな。色々と考えさせられるぜ。


「実はまだ、まめパンには秘密があって、それを今

から教えておこう。何かあった時に少しでも対処で

きるように」


 この時、アレンの目が鋭くなったように感じた。

それだけ真剣な話しということみたいだが、まだ秘

密があるのかよ。聞くのが少し怖くなってきた。



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