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第二章  奇跡は突然⁉ その5


「またか。今度はなんだ……」


 光の渦の中心にいる人型のファムは、あっという

間に縮み、本来の姿であるまめパンへと戻った。


 それまでファムを包み込んでいた光の粒子は、夥

しい数の蛍が一斉に飛び散るように弾けて消える。

同時に、光を帯びていたファムの体も元に戻る。


 眩しくてはっきり見えていた訳じゃないが、眼前

で起こった光景は、なんとも神秘的であり、まさに

奇跡と称される事だけはある。だがあの美少女が、

本当にファムとはな……。


 変身の瞬間をこの目で見たからには、この摩訶不

思議な現実を信じるしかない。事が事だけに、夢オ

チの可能性も捨てきれんがな。


 まめパンに戻ったファムは、犬掻きのように手足

をバタバタさせてお湯を掻き、俺の胸元まで辿り着

く。


「お前、体は大丈夫なのか?」


 ファムを抱き上げ体に異常がないか確かめる。す

るとファムは「はにゅ」と元気に返事をしながら頷

いた。


 いったいどういう原理で、何がどうなったら変身

するんだよ。動物から人間に変身するのは宇宙ペッ

トとはいえ、地球では無茶な設定すぎるぞ。それと

も地球の生物の進化が遅れすぎてて、他の星では普

通のことなのか。でもこれがアレンが言っていた秘

密であるなら、奇跡な訳だし、やっぱ普通じゃない

よな。


「ちょっと快、なんとか言いなさいよ、この変態変

質者‼ その女は誰なのよ‼」


 おっと、ファムの変身に気を取られて、茜の事を

忘れていた。


 どうやら後ろを向いて目を閉じていたのか、ファ

ムが放った閃光には気が付いてないようだ。これは

好都合。


 ホンと運よくベストなタイミングで元に戻ってく

れた。これなら切り抜けられる。やはりピンチの時

こそ取り柄が役に立つ。


「お前さっきから何を訳の分からんこと言ってんね

ん。頭大丈夫か?」


 超絶白々しいが、ここは無茶を承知で押し通す。


「訳わかんないのは快の方でしょ‼ 大体なんで私

じゃないのよ。私だったらもっと……」


 茜はドアを蹴りやぶりそうな勢いである。だが後

半の妄想全開のアホな言葉は、急に泣きそうな声で

呟く程度に発した。


 しかし最後の「もっと」ってなんだ、いったい何

をしてくれるのか、続きが気になるんですけどぉ‼


「だからなんやねん。いい加減にしろ‼」


 止めを刺すためちょっと強めに言い放った。だが

このセリフで茜がキレる。


「その女は誰かって聞いてるのよ‼」


 茜は嫉妬に狂う般若の如き形相で発し、また勢い

よくドアを開けた。女を本気で怒らせるとマジで怖

いな。ドMの茜がここまでキレたのを見るのは初め

てだ。


「えっ……あれ? え〜っと……」


 怒りにまかせて踏み込んだ茜は、一目で見渡せる

狭い風呂場を見て、俺しか居ないのを確認すると、

混乱して言葉を失った。


 既にファムは元に戻っており、茜が見た女の姿は

どこにもないんだから、そりゃ混乱するわな。


 風呂場には窓があるが、人が出入りできる大きさ

じゃない。だからどこにも逃げる場所はないし、隠

れるところもない。それを茜は分かっているだけに

すぐに平常心を取り戻す事はできず、頭を抱えてい

る。


 なかなか面白い光景だし、このまま少しの間、見

ていたい気もするが、俺は混乱に乗じてあくまでも

白を切る。


「さっきから女女って、なんのことや。大体いきな

り来て風呂のドア開けるってどういうことやねん。

変態ですか君は」


「だって……確かにさっき女の子がいるのを見たの

に……それに声もしてたし」


「お前、マジで大丈夫か? 妄想のしすぎでアホみ

たいな幻覚みてんなよ」


「幻覚って……そうなのかな。でもさぁ、あんなに

はっきり幻覚って見えるものなの?」


「知るか‼ お前が見た幻覚を俺が見てるわけない

やろ。っていうか、いつまで堂々と覗いてんねん、

この変態欲求不満女」


「ご、ごめん。私なにやってんだろ」


 我に返った茜はいまの自分の状況に気付くと、顔

を真っ赤にして慌てて背を向けた。


「ほんと、私どうかしてるよね。じゃあ、洗い物ま

だ残ってるから」


 茜は首を傾げながらも、今は引き下がりキッチン

へと帰った。


 よしっ‼ 完全には納得してないようだが、信じ

たようだ。まあ当然、いきなり幻覚って言われても

普通は信じられないよな。でも確たる証拠の女がい

ないんだから追及のしようがない。


 茜の頭の中には当分の間、さっきのエロい光景が

焼き付いて消えないだろう。他人事だが悲惨だな。


 だがその場の流れで白々しくも無茶を押し通した

が、別にファムの秘密を内緒にすることはなかった

ような気がする。いま言っておいた方が、後々面倒

なことにならずにすむかもしれない。でも変身が解

けてしまったから、うまく説明できないだろうな。


 そして風呂からあがりジャージに着替え、ファム

はドライヤーを使って乾かしてやる。


 しかし、なんでいきなり変身したんだ。奇跡と言

われているからには、そう簡単に変身するのはおか

しいし。変な組み合わせのものを食べさせ過ぎたか

らか? そんなわけねぇよな。


「お前、自分の意思で姿を変えられるのか?」


 と訊くと、ファムは首を傾げるだけだった。どう

やらまったく分かってないようだ。自分が人型に変

身したことじたい、理解してないかもしれない。


「まあ、難しい事は置いといて、コーラといきます

か」


 風呂上がりのコーラは、これから恒例行事となる

だろう。


 ファムはコーラという言葉に敏感に反応し、嬉し

そうに「こーにゃ、こーにゃ」と発している。


 惜しい。後ちょっとでコーラと聞こえるんだが。


 それから俺たちは冷蔵庫へと向かった。すると茜

はリビングのソファーで体育座りして頭を抱え、何

やらブツブツと独り言を発していた。当然だがまだ

パニクっているようだ。


「茜さん、白と青のエロ可愛いシマシマパンツ見え

てますよん」


「…………」


 からかってやろうとしたら、茜はなんの反応もな

く、ただうな垂れている。まあ仕方がないわな。と

いうことで、遠慮なくパンツ見学させてもらう。


 やはり好きな女の子のパンツを眺めるのは格別で

すなぁ。太もものむっちり感がたまらん。


 じっくりと堪能した後、茜はそのまま放置して、

ファムにコーラを渡してやった。その後は勿論、灼

熱の砂漠に居るかのようにアグレッシブに一気飲み

する。


 コーラを飲んでいる、こんな普通な事でも、ツイ

ッターやインスタ、ユーチューブに上げたら、どえ

らい事になるんだろうな。あっという間に一億再生

とかで、幾らでも稼げそう。今は色々と怖いからや

らないけど。とにかく俺は、金のなる木を手に入れ

たことをあらためて自覚しよう。


 さて放心状態の茜だが、マジで大丈夫かな? あ

る意味、俺のせいだしちょっと心配になってきた。

とか思いながらも、パンツに目がいってしまう思春

期な俺。


「茜、今日は帰ってゆっくり休めよ」


「うん……じゃあそうする」


 随分と弱ってるな、声にまったく覇気がない。こ

の分だと悪夢にうなされるだろうな、可哀相に。


 そして茜はトボトボと元気なく帰っていった。だ

がファムが人間に変身するって知ったら、茜のやつ

腰抜かすほど驚くだろうな。


 しっかしファムはいい体してやがったな。唇もプ

ニュプルで気持ち良かったし。って俺は何考えてん

だ。ファムは動物で俺のペットだぞ。発情してる場

合じゃねぇ。


 とにかくファムを連れてペットショップに行かな

いと。変身することがアレンの言っていた奇跡かど

うかもまだ分かんないし。


 でも、実際にこの目で見たけど、未だに夢かな、

と思ってる自分がいるんだが、アレンに変身の事を

話しても、笑われて終わりそうな気がする。だって

あまりにもトンでもないことすぎる。さっき誤魔化

すために、茜には幻覚と言ったが、俺もその幻覚を

一緒に見ていたのかもしれない。


 やべぇ、考えてたら頭が痛くなってきた。


 結局この後も色々考えすぎて、まめパンを手に入

れた優越感に浸る余裕もないまま、時間だけがすぎ

ていったが、ファムが眠たそうにしていたので、二

階の自分の部屋のベッドで一緒に寝ることにした。


 まあ何にしても、今日という運命的な出会いをは

たした素晴らしい日は終わった。



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