第二章 奇跡は突然⁉ その4
ホワ〜イ、夢か、夢なのか? 夢だとしても随分
とリアルでエロすぎるぞ。とりあえず頭の中がぐち
ゃぐちゃで、何も考えられない。
いったい俺はここで何をしているんだ……って風
呂だよここは。じゃあなんでこの狭い風呂場の中に
俺と美少女が二人でいるんだ? わ、分からん。
「ご主人しゃま〜」
謎の美少女が、小さな子供のような発音の可愛ら
しい声でそう言って、飛び掛かるように俺に抱きつ
いた。
ムニュウ、と音が聞こえてきそうな程、その大き
な胸が俺の体に押し付けられる。
「き、気持ちい〜」
って言ってる場合か‼ だがすぐに突き放せない
のが男のサガか。
しかしなんだこの中学生の妄想が暴走したような
エロすぎる状況は、まったく理解できん。
更に謎の美少女は抱きついたまま甘えるように顔
をすり寄せてくる。これがまた、スベスベぷにぷに
の肌で、なんとも気持ちいい。
だがそんなに刺激されると、健康な男子の体は敏
感に反応してしまうんですけど。特に下半身の一部
分が。
と思っていると今度は、ムチュ、と唇にキスをさ
れた。その瞬間、俺は放心状態に陥った。でも、そ
んな俺のことはお構いなしに、謎の美少女は無邪気
な笑顔を見せて、何度も何度もキスをしてきた。
「あっ、やべぇ⁉」
これ以上くっついていると、我を忘れて暴走して
しまいそうだ。
とにかくパニクっている場合じゃない。名残惜し
いがなんとか突き放し、テンションMAX状態の前
を隠して浴槽に逃げ込んだ。
「だからお前、誰やねん」
そう問いかけると、謎の美少女はきょとんとして
首を捻った。そして、体のどこも隠さず、勢いよく
浴槽にダイブしてくる。
おいおい、普通は手で胸とか隠したりするだろ。
天真爛漫にもほどがある。
「ご主人しゃま、だ〜いしゅき」
また訳の分からない事を言って、今度は腕だけじ
ゃなく足も使って、親にしがみつく子供のように全
身で抱きついてくる。
だからダメだってば。この状況では体は頭の命令
を聞かないんだぞ。いい加減、我慢できん。しかも
狭い浴槽の中でがっしりと抱きつかれているので、
まったく身動きが取れず、この気持ちいいが理解不
能な状況から逃げ出せない。これってやっぱ夢なの
か?
んっ? ご主人さま? そういえばファムがいな
い。ま、まさか……そんなことあるわけないよな。
でも、この状況からして、それしか考えられない。
「お前……ファムか?」
抱きついて離れない謎の美少女に、俺はバカな事
と考えながらも恐る恐る訊いた。
「しゅきぃ、ご主人しゃまぁ〜」
駄目だ、会話になってない。だが声は似ている。
やっぱこいつはファムかもしれない。
もしかして、これが奇跡といっていた、まめパン
の秘密なのか?
そうだとしたらトンでもないぞ。でも本当にこん
なことがありえるのか。とにかくすげぇぞまめパン
は‼
さっき突然、凄い光が発せられた時に、人間の姿
に変身したんだな。しかし、いくら地球外の生命体
だからといって、やっぱこんな常識はずれな展開あ
りか?
本当に夢じゃないのか……いや、この気持ちいい
感触は本物だ‼
ってなに楽しんでんだ。とにかくファムを引き剥
がさなければ、いくらなんでも我慢の限界だ。
「こら、ファム、離れろ」
俺は体をねじってもがき、ファムとの間に隙間を
作る。だがファムは遊んでいるのと勘違いして、更
にじゃれてくる。それでもなんとか隙間に両手を滑
り込ませ、ファムの体を掴んで突き放す。
あれ? なんか柔らかい感触が……。
この時、ファムは頬を赤らめ「ふにゅ〜」と桃色
めいた色っぽい吐息を漏らした。
おわっ‼ 俺はいったい何を掴んでんだよ。どさ
くさ紛れにファムの胸を鷲掴みにしてしまった。
だがなんだ、このプルプルのプリンのような感触
は。指が食い込んで握り潰してしまいそうなほど柔
らかい。でも柔らかいだけじゃなく、つきたての餅
のようにちゃんと弾力もある。これぞ神の造りし最
高傑作‼
とかアホな事を思いながらパニクっていたら、ま
ったくもって予期せぬ事態が起こる。茜の怒鳴り声
とともに突然、風呂場のドアが開いたのだ。
「ちょっと快‼ なにやってるのよ‼」
俺はビクッと驚き、ほぼ同時にドアの方を振り向
く。
目が合った瞬間、俺と茜は瞬間冷凍されたマグロ
のようにカチカチに固まる。まさに時が止まる瞬間
とはこのことだ。
数秒後、先に体が溶けたのは茜だった。思い切っ
てドアを開けたはいいが、裸の金髪少女の巨乳を鷲
掴みにしている光景が、あまりにショッキングすぎ
たのか、見てはいけないものを見てしまったように
茜は反射的にドアを閉める。
「な、なによ、なんなのよぉ⁉ 快、ちゃんと説明
してよ‼」
茜はドアを背にしながら猛獣が吼えるように発し
た。
説明しろと言われても、何をどう説明していいも
のやら。
バグか裏設定か、どういったルートで発生したイ
ベントか知らないが、このエロい状況は不可抗力の
偶然だし、どんな敏腕弁護士でも言い訳できないは
ずだ。するだけ無駄というものですよ。
だが突然、ファムの体が光を帯び凄まじい閃光を
放つと、全身から放出される光の粒子が、変身した
時と同じようにファムを包み込んだ。




