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第二章  奇跡は突然⁉ その3


 程なくしてキッチンの方からカレーの匂いがして

くる。ファムは興味津々な反応をし、匂いの方向へ

と鼻を突き出しクンクンと嗅いでいた。


「快、こっち来て、もう食べられるよ」


「ファムの分も用意してな。こいつ凄い大食いそう

だし、俺と同じ量ぐらい、ペロっと平らげるやろ」


「大丈夫? 流石にカレーは食べないでしょ」


「まあ色々と試してみようや。なんか面白いし」


 自分でノリ軽、と思いつつ、やはりカレーを食べ

た後のリアクションが気になる。


「今日は私、お母さんと食事する約束があるから、

もう行くね。あんまりファムに無茶なことしちゃだ

めだよ」


「はいはい、わかってますって」


「食べ終わったらそのままにしといていいよ。後で

片付けにくるから」


 茜はダイニングのテーブルに二人分のカレーとサ

ラダを用意してから帰った。


 行儀は悪いが、俺はファムをテーブルの上に座ら

せた。二本足で立ち上がっても子猫のようなファム

では、椅子に座って食事できないからだ。


 まず見本として、俺が先にスプーンを使って実際

に食べて見せる。因みにファムには、少し小さめの

スプーンを手渡した。すると器用に片手で持った。


「どうだ、食べ方わかったか。食ってみろ」


 ファムはコクっと頷き、念入りに匂いを嗅ぐと、

ちゃんとスプーンを使ってカレーをすくい上げ、躊

躇いなく口に運んだ。


 モグモグと噛み締め食べると、ファムは俺の方を

見上げて嬉しそうに「にゅにゅ〜にゃあ」と言った

か鳴いたか分からない言葉を発した。多分、美味し

いとでも言っているのだろう。


 そしてバクバクと豪快に食べ始め、ペロっと平ら

げた。サラダもフォークを使ってちゃんと自分で食

べさせた。しかしトマトだけは残している。どうや

ら好き嫌いもあるようだが、苦手なものまで人間的

だ。


 ドSの俺は当然、ファムの残したトマトをフォー

クに刺し、鼻先に近付けてやる。


「ほれほれ、なんで食べないんだよ」


 ファムは鼻をヒクヒクさせると、顔をしかめそっ

ぽを向いた。


 なんかおもしれぇ。無理矢理にでも食べさせたら

どんなリアクションするのか見て見たい。


「ファム、あ〜んは、あ〜ん。ほれ、口開けろ。好

き嫌いは許しませんよ」


 ファムは恨めしそうにこっちを向き、俺の目をじ

っと見詰めた。そんな可愛い顔で凝視されると、更

にドS心が燃え上がるんですけど。そして恐る恐る

開けた口の中へトマトを放り込む。


 トマトを食べたファムは、苦虫を噛み潰したよう

に情けない顔をして、両手で頭を抱えゴロゴロと転

がり悶えている。


 本当にトマトが苦手のようだな。でも嫌な事でも

拒絶せず素直に命令に従うとは、どうやら飼い主に

絶対服従するという情報は本当みたいだ。


「ごめんごめん。そんなに嫌いとは思わなかったか

らな」


 今にも泣きそうに瞳を潤ませているファムを抱き

寄せて、頭を撫でてやった。すると簡単に機嫌がよ

くなり、嬉しそうに擦り寄って甘えてきた。この単

純さは茜と似ている。


 お茶が無かったので、ペットボトルの500㎖コ

ーラを飲むことにした。


 炭酸は大丈夫なのかと一瞬だけ考えたが、人間が

飲むものなら問題ないと思い、キャップを開けてフ

ァムに渡したら、ペットボトルとファムの身長がそ

れほど変わらないのが笑えた。


 始めにクンクンと匂いを嗅ぎ、いける、と自分で

判断した後、上手く銜えてこぼさないように顎を上

げ、器用に一口だけ飲んだ。その瞬間、ファムは衝

撃を受けたようにビクッとする。


 おっ? なんだ、もしかしてやばいのか、と思っ

たら、ゴクゴクゴク、と凄い勢いで一気に飲み干し

た。


 するとビールを飲んだ時にオヤジ連中が吐く「ぷ

はぁ〜」という息の如く、ファムは気持ちよさそう

に「はにゃ〜」と息を吐き出す。


 だが炭酸のきついコーラを一気するとは、よほど

気に入ったとみえる。


「ほれ、まだあるぞ」


 半分残っている飲みかけを渡してみると、また一

気で飲み干した。


 こいつメスのくせに飲み食いする時だけはほんと

男らしいな。他のまめパンもこんな感じなのかな。


 それから腹の具合が落ち着いてきたころ、風呂に

入ることにした。一緒に入るかファムに訊いたら、

嬉しそうに「にゅ〜」と発して手を挙げる。


 さっきも感じたんだが、やはり完全に言葉を理解

している。喋りかけると本当に会話をしているよう

に成立するしな。ファムを受け取る時、既に躾はし

てあるとアレンは言っていたが、言葉を教えていた

のかもしれない。


 でもこれだけ賢いと、飼い主の育て方しだいで、

見た目は変わらなくとも、それぞれかなり個性の違

ったまめパンになると思う。まさに人間と同じだ。


 風呂場に入るとまずはファムにボディーシャンプ

ーを付けて、もむように洗ってやる。試しに脇腹の

辺りをくすぐってみると、「ふにゃにゃにゃ、うに

ゃにゃにゃ⁉」と可愛くも変な笑い声をあげて悶え

た。なにこれ、マジおもしれぇ。


 それにしても全然、泡や水を嫌がらないし、犬や

猫のように暴れたりしないから扱いやすいぜ。


 泡を流した後、そのまま足のつかない浴槽に入れ

たら溺れる可能性があるため、オケに湯を入れて、

そこにファムを入れた。ちょうどいいサイズで、ラ

ッコのようにプカプカと浮いている。


 自分の体を洗っていると、ファムが「キュ〜、キ

ュ〜」と鳴きだし、何かしたそうに手を伸ばしてい

るのでオケから出してやった。


「なに、これが欲しいのか?」


 ファムは俺が体を洗っているタオルを掴んだ。も

しかして、体を洗ってくれるのかなと思い、ファム

に持たせてみる。


「じゃあ、背中でも洗ってくれよ」


 ファムがコクっと頷き答えたので、背中に手がと

どくように、ファムを浴槽の枠の上に立たせ、背を

向けてみる。


 ファムは泡まみれになりながら小さな体をめいっ

ぱい使って、「にゅっにゅにゅっにゃにゅ〜」と何

やらご機嫌で鼻歌を発しながらゴシゴシと洗ってく

れた。


 出会ったばかりなのに、ここまで献身的にやって

くれるとは、まめパンがほんとよく尽くす性質だと

分かる。流石1憶するだけあるな。


 だがその時、ファムの動きがピタッと止まった。


 ファムのやつ疲れたのかな、と思って振り返ろう

とすると、突然、背後でピカッと目が眩むほどの閃

光が走った。


 それと同時にファムの体が光を帯びる。放出され

る光の粒子が渦巻くようにファムを包み込むのが微

かに見えた。


 な、なんだ、何が起きたんだ? とりあえず眩し

くて振り返れない。


 でも謎の光は数秒ほどでおさまった。この時、俺

の背中に、ムニュ、と何か柔らかくて大きな物が押

し付けられた。


 感触からして、二つの物体が背中にくっついてい

るが、なんとも言えない気持ちよさだ。更にその柔

らかいものが背中を刺激したとほぼ同時に、色白の

細い腕が二本、俺の体を背後から抱き締めた。勿論

その腕は人間のものだ。


 んっ? 人間の腕? なんだぁ⁉ いったい何が

起こった⁉ ってこの腕なんだ、なんなんだよ⁉


「うわあぁぁぁぁぁっ⁉」


 と情けない声を反射的に上げ、俺は謎の腕を振り

払って体ごと振り向く。


「おわっ⁉ だ、誰やねん……」


 信じられない事だが眼前には、すっ裸で泡まみれ

の女の子が、きょとんとした顔をして座っている。

しかも超の付く美少女がだ。


 見た感じでは、歳は俺と同じぐらいで、目は大き

く青い瞳、腰の辺りまであるだろう長い髪は美しい

金髪だ。そして、ちょっと触れただけだが色白の肌

はスベスベである。


 座っているから正確な身長は分からないが、15

5ぐらいの小柄さだ。しか〜し、小柄なわりに、出

るところは出ていて、引っ込むところは見事に引っ

込んでいる。俺のバスト限定高性能スカウターでは

胸は間違いなく90はある。大きさも形もマジでベ

ストな巨乳だ。


 いったいどこのアニメの世界から出て来たんだ、

ってな感じの完璧な美少女。それによく見ると頭に

は、天然アホキャラの女の子に生えている、触角の

ようなアホ毛がビヨ〜ンと伸びている。もう可愛い

とかいう表現を突き抜けて、まさにその眩しさはエ

ンジェル級だ。


 って何じっくり観察してんだ‼ そんな場合じゃ

ねぇよ。なんだこの状況は。





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