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第二章  奇跡は突然⁉ その1


 マスコミの待ち伏せにあいややこしい事になった

が、バーゲンセールで前の人を無理矢理かき分け押

しのける、大阪のオバちゃんの如く、なんとか強行

突破して逃れた。


「すみませんが俺は一般人なんで、取材はお断りし

ます。トラブルのもとになるので、そこらへんは察

してください」


 後々のことを考えて、そう言っておいたが、落ち

たら脱出不可能な蟻地獄みたいなイメージのマスコ

ミ相手に、効果あるのかは疑問である。


 この後は、指名手配を食らった犯罪者みたいにコ

ソコソとだが、とにかく無事に我が家へと帰ってく

ることができた。


「ここが今日からお前が暮らす家だぞ」


 まめパンを鞄からだし、胸の辺りに抱いて家を見

せてやった。


 我が月杉家は、まったくもって変わったところが

ない普通の一軒家である。小ぢんまりとしているが

二階建で庭もあるし、親が普通のサラリーマンの一

般家庭にすれば、かなり頑張ったほうだろう。それ

に三カ月前から一人暮らしだし、快適な生活環境と

いえる。


 因みに正面には家が並んでいるが、見える範囲の

両隣に家はなく、すぐ裏はもう広大な山であり、そ

の山のはしっこに我が家がある感じだ。


 父親は旅行代理店で働いており、今はアメリカに

いる。母親は、中学生でしかも受験生である俺を一

人にするのが心配だからといって日本に残った。て

かそれが当たり前なんだが、いい歳こいて週三ペー

スでエッチな事をしているラブラブなこのアホ夫婦

は、一週間で寂しくなり、結局母親がアメリカへと

追い掛けていった。


 それいらい三カ月、戻ってきていない。俺が久し

ぶりに二人だけで恋人気分を楽しんでくれ、と言っ

たからだが、まさか本当に帰ってこないとはな。ま

あ生活費と小遣いは、毎月ちゃんと口座に振り込ま

れてるから、このままでも何の問題もない。むしろ

この歳で気楽な一人暮らしができているから、逆に

有り難い。


 それに大人が必要な時は、我が家のアホで変態な

夫婦よりも数百倍は頼りになる、茜の両親が色々と

面倒をみてくれるから大丈夫だしな。


 とにかく赴任期間の三年間は、我が家の状態はこ

のまま変わらないだろう、と思っていたが、今日か

ら家族が一匹増えた。新しい生活の始まりである。


「じゃあまた後でね。着替えたらすぐにそっち行く

から」


「なにしに来るねん、毎日のように。お前は給料歩

合制の外回り営業マン並みに必死か」


「べ、別に快に会いに来るわけじゃないよ。私はま

めパンと遊びたいだけだし」


「はいはい、そういう事にしといたるわ。来るんや

ったら、食うもの持ってきて、一人と一匹分」


 今のところ俺は自炊などをする必要がない。召使

いならぬ飯使いの茜が、せっせと食べ物を運んでく

るからだ。


 一人になってすぐの頃は、朝飯まで用意してくれ

てたが、毎日だと悪いので、今は止めさせている。

だが晩飯は、気が向いた時にご馳走になっていた。


 茜の家は大昔からこの辺りの大地主であり、今も

絶大な権力を持っている家系だ。更に大河内家は様

々な業種のビジネスを展開し、大河内グループとい

えば世界的に知られる超大企業であった。つまり茜

はトンでもないお金持ちのスーパーお嬢様である。


 そして家は一応、隣の土地にあるが、はたしてお

隣さんと呼んでいいのか疑問である。何故ならお隣

は、何百坪とか何千とかいう範囲ではなく、その辺

りの山がまるごと全部、とにかく見える光景の全て

が茜の家が所有する敷地というわけだからだ。


 俺の家からは茜の家は見えない。見えるのは山を

構成する木々だけだ。山道の途中から百メートルほ

ど石畳の道を歩き、何十段という階段を上がり、ま

た石畳の道を歩き、何度かそれを繰り返してやっと

家がある。でも正面となる方にはちゃんと車が通れ

るアスファルトの道も作られている。


 家は伝統的な古い日本家屋で、幾つも巨大な蔵が

あり、まさに昔でいうところの大名屋敷だ。堂々た

る巨大な門構えといい普通じゃない。その門を抜け

れば手入れされた広大な日本庭園が造られていて、

テレビで見たことのある有名な寺の庭と比べても遜

色はない。何もかもが半端じゃない大きさで、代々

仕える住み込みのお手伝いさんが何十人もいる。


 俺はまめパンを膝の上に乗せてリビングのソファ

ーに座り、茜が差し入れを持ってくるまで、テレビ

でも見て待つことにした。


 ニュースでアルドゥランのペットショップ関連の

事が報道されており、内容は詐欺容疑で何人もが逮

捕されたということだ。


 どうやら抽選会の一等の当たり券を偽造して、ま

めパンを貰おうとした大馬鹿な奴が何人もいたよう

だ。


 そういえば一等の券をもっていった時、スタッフ

は怪しい奴でも見るような顔をしていた。愛想の悪

い奴だなと思っていたが、偽造したニセ券を持って

きた奴がいたから、俺も詐欺と思われたわけだな。

これで納得いった。


 更にその後のニュースの映像には、おもいっきり

俺が映し出されていた。てかめっちゃ恥ずかしいや

ん。やっぱ顔にモザイクするようにお願いすればよ

かった。


 しかし、どのタイミングで何回放送されたかは分

からないが、もうずっと友達や親戚、お前は誰やね

ん、といった奴らからの電話が幾度となくかかって

いた。途中から相手をするのが面倒臭くなって、家

電は留守電にして、スマホはマナーモードにして放

置しておく。だがウザい事に普段から親交のない近

所の人たちが、まめパン見たさに家に来て、呼び鈴

を鳴らしまくっている。


 俺は当然のように無視を決め込む。だが数日は、

この騒ぎは収まりそうもない。


 まあ、まめパンが当たったんだからこれぐらいの

混乱は予想していたが、これからどんなトラブルが

起こるのかと考えると、ちょっと怖い。でも、今こ

の手に抱いているまめパンを見ると、そんなことは

どうでもよく思えてしまう。とにかくまめパンは超

ラブリーで癒される。


 一応、大事な電話があるかもしれないので、留守

電を確認したら、アメリカにいる親からも電話があ

った。情報が広まるのホンと早すぎる。

 

 因みにテレビには茜もバッチリ顔出しで映ってお

り、既にネットの掲示板やSNSでは茜のことが噂

になっていた。てかもう茜祭りである。


『あの可愛い子は誰だ⁉』

『どこのアイドルグループのメンバーだ』

『おっぱい凄すぎ、神すぎる』

『あの子は俺の嫁』


 などなど、とにかく茜で盛り上がっている。しか

も既に個人情報だだ洩れで、大河内グループの娘で

あることや、茜という名前まで知られていた。


 誰だよ情報流したのは、絶対学校の奴らだ。俺の

顔もバレてるし、盗まれないように改めて気を付け

よう。


「心配すんなよ、お前は俺が守ってやるからな」


 その言葉を聞いたまめパンは、軽やかな身のこな

しで俺の肩までよじ登り、チュッとほっぺにキスを

してくれた。知能が高いだけあり、言葉を理解して

いるかのようだ。





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