第3話 異世界社会での負け方 part2
「この世界の仕組みとかを教える前にひとつ教えてくれ、あんたはどこ出身だ?」
どうしよ、なんて答えればいいんだろ。
「俺はこの土地のずーっと東の国からやってきた。けど俺がいた国は魔法も、騎士もいない平和な国です。そこで国のレールに沿って学業に専念して生きてきました。」
そういうと筋肉3人衆は互いに顔を見合わせて不思議そうに返してきた。
「あのな、レン。見知らぬ土地で、見知らぬ男たちかもしれねーが、嘘は言っちゃダメだぜ。」
なんか嘘でも言ったかな?
「え..?何か自分虚言でも言いましたか?」
ユキラスは苦笑いをし、返答した。
「まさか、無自覚ってわけではないよな?
昨日の夕方に自分がやったことを覚えてないのか?」
昨日やったこと?なんもしてねーよ。
「覚えてないのなら、教えてやる。昨日あの森を燃やして灰にしたやつはお前なんだよ。レン。」
えーっと、さっぱりわからないんですけど。
俺の顔があまりにも驚いていたようで、サリウコスがフォローしてくれた。
あ、やべ。サリウスだった。
「本当にわからないんだろ?だったらこいつにこの世界の仕組みとやら。教えてやってもいいとおもうぜ。」
「ありがとうございます。サリウ、サリウスさん。」
ミスってはないけど。ミスってはない。
「おう!」
「元から教えるつもりだ。安心しろ。」
よかった。ありがとうユキラス。
マッチョも慣れればいいヤツと思えてくるよ。
「あんたを何も知らない、赤ん坊だと思って説明するからよおく聞いとけよ。」
「あぁ。頼みます。」
「まず、この街の名前はイヴァーラル。平たく言うなら商業都市ってところかな。ここはあまり、戦いが好きじゃないやつが集まって暮らす場所なんだ。」
「だから、クエスト発生場所はほとんどあの森だったんだが、レンが燃やしちまった。ってことだな。」
あー、そういうことね。だからさっき少し怖かったのか。
てかタスク久しぶりに喋ったな。
「まあ、それで15歳を超えると何かの職業に着かなければいけない。って言っても職業は大きく分けて5つだ。」
3つじゃないんだね。
「大きく分けてってことは、実際もっと多いってことですか?」
「そんなところかな。それで1つ目がソルジャー、2つ目がウィザード、3つ目がプリースト、4つ目がガーディアン、5つ目が商人だ。」
商人以外、全部かっけーな。
「ただまあ、職業は自分では選べない。集会所へ行って適正試験を受け、その結果によって職業が決まる。適正外の職業を選ぶことは許されない。」
「例えば全部適正外だった場合どうなるんですか?」
純粋な疑問だ。
「あーそれなら、大丈夫だ。商人には適正がない。つまりそういうことだ。」
なんも適正がなかったら問答無用で商人かよ。
それは是が非でも避けたいものだな。
「安心しろ。あんたほどの魔法を使える人物なら、ウィザードかプリーストだろうからな。」
ユキラスさん。こんな言葉を知っていますか?
”フラグ回収“という言葉を。
何フラグをばらまいてるんだよ。
「次に、レベルの話だ。クエストを受注してモンスターを狩ったり、目的物を採取したら経験値が手に入る。そうしてレベルが上がる仕組みだ。」
テンプレかよ。安定だなぁ。
「レベルの上限は今のところは10だ。って言っても、現状最強レベルのギルガメッシュさんでも6だからなぁ。」
ギルガメッシュ...ね。なんかすげー懐かしく感じちゃうな。
「暮らしていくためには金が必要だ。基本、人からお金を盗んじゃダメだ。まあ一部例外はあるが、今割愛する。
簡単に金を稼ぐ方法はクエストを受注して達成すれば手に入る。あとは、賭博施設があるがあそこはオススメしない。」
賭博施設はやめておこう。あとクエスト受注する場所でも教えて終わりかな。
「一個気になったんだですけど、あなた方の職業はなんですか?」
あー、聞くまでもなかったわ。もれなく全員壁だわ。
ユキアスがまとめて答えてくれた。
あぁーユキラスか。どっちも覚えずれなーな。
「俺らはみんなガーディアンのレベル2だ。ちょっと意外だろ?」
意外じゃなくて、びっくりするぐらい妥当だわ。その筋肉はやっぱり壁だったのか。
まあレベルはよくわかんないけど。
「、はっはは。意外っすねー....」
「それで何というか、ここで会ったのもなんかの縁だしな、レンも俺のギルドの仲間にならないか?」
....え? えぇーーやだなぁー。
マジで嫌なんだけど。ていうかいつになったら美少女出てくるんですか?
ねえ男4人の冒険ストーリーを見てさ、なんかいいことあると思ってんの?
そう、こいつらはホモ、はっきりわかんだね。
「誘いはすごく嬉しいんですけど、お断りさせていただきます。」
誘ったユキラスは振られたことで放心状態であった。
どんだけ、心弱いんだよ。
けれど、これでいいんだ。
「昨日は、助けてくれてありがとう」と言ってこの筋肉どもから立ち去るのだ。
「って言ってもレン。お前装備なし、金もなし、寝床だってねーだろ。どうするつもりだ?」
サリウコスめ、そういうことは言わなくていいんだよ。全く痛いとこついてくるな。
あーサリウスね。あーもうサリウコスでいいわ。
「ああぁぁああ。はっきり言いますよ。僕は男より女の子と暮らしたい、と言っているんですよ!」
昨日の振り絞って出した声と同様に出た。
もうこれでわかってくれたよね。そうだよね?
「なんだ。そんなことか。一応俺らのギルドメンバーにあと一人いるんだけど、そいつ女だぜ?」
違うのだよ。サリウコス。俺が求めているのは4対1ではない。1対4なんだよ。
あとそいつもどうせガーディアンのマッチョ系女子だろ。
「いや。俺が求めるものはここではなかったみたいです。昨日は助けてくれてありがとうございましたぁーーーー」
そう言いながら玄関のドアを開けると、、、目の前に騎士の甲冑を纏った美少女が荷物を持って立っていた。
顔は少し童顔の、黒髪ロングであった。
「.......どいてもらえる?」
目があってから数秒後やっと言葉を発してくれた。
期待してたけど、女の子と話す免疫力なんて備えてねーよ。
「....え?なんか言いました。?」
いや、聞こえてるけどねーー。
「どいてくれますか?」
「あ、俺今このギルドに誘われてて、あなたもこのギルドの方ですか?」
我ながらなんて言い返しだろう。100点満点だな。
「だから、どいてって言ってるのが聞こえないの?」
あれ、おかしいな。なんか怒ってるように見えるんだけど。
そりゃそうだよな。あいつらと一緒なんて疲れるよな。
「まあ、そんなに怒るなって、“リア”。こいつまだここに来て日が経ってないんだ。レンもどいてやれ。」
サリウコスっ、、、会話の途中にだったのに。
仕方ない。一回俺がどいたあと、話せばいいんだよね。
「あ、前に立っててすみませんでした。」
「...............」
華麗なる無視。やめてよぉー。今絶対HP0になったよ。
「けど、悲しいな。お前も一人で頑張れよ。また辛くなったらいつでも来ていいからな!」
サリウコスめ、そこまでして俺とその美少女との関係を持たせたくないのか。
この鬼め。いや悪魔だな。
そう言われて、俺は筋肉3人衆と謎の美少女はいるギルド館を後にした。
この後どうしよ。
とりあえずユキラスが言ってた、職業適性のテストのとこを探して行ってみるか。
大丈夫さ。ヒロインなんて、ヒロインなんて、別に、美少女騎士じゃなくても、いいしっ!!
街を歩いていて、一つ絶望した。
文字が全くもって読めないのだ。
「っはは。なんだこれ。何語だよ。」
こうなったら戻るか?いや、歩けばすぐ街みたいだし、テキトーに人に尋ねれば、大丈夫だな。
もちろん女の子に話しかけます!
「あっ、あのー、職業適性検査を受けることができる場所まで連れてってもらえませんか?」
「............。」
「............。」
「............。」
「............。」
「............。」
奇跡かと思った。話しかける女子全て可愛いのにも関わらず、全て俺の頼みに対して無視だったのだ。
もういやなんだけど
あのギルドの場所も、もうわからないしなぁ。