第2話 異世界社会での負け方
まあなんとも寝ていた場所が街の路上というか路地裏だったため、頭が痛くなるのは当然のことであった。
それにしては頭が痛いな。
起き上がって路地裏を抜けてみると、そこは何を隠そう、異世界であった。
そして街を歩いてる人は大きく分けて3通りだった。
騎士風の人、魔法使い風の人、商人風の人である。
しかし格好がどれもそれっぽくてかっこいい。
....って待てよ。異世界に飛ばされたとして、何をすればいいんだ?
んー、わからん。大体こういうのはモンスターに襲われているところを美少女騎士さんが助けてくれる。
そしてまあこの世界のことを手取り足取り教えてくれる。
最終的にはその子が俺に恋をして結婚をしてくれる。
これが異世界の鉄板HTM(助ける-help 教える-teach 結婚する marry)である。
そして俺は、異世界で、異世界で、
あれ、どうしたいんだろう?
まあいいさ。とりあえずは美少女様に出会おうではないか!
この無防備の異世界初心者感をだして、助けてもらおうではないか!
数分間街をさまよい、徘徊してるうちに偶然森らしいところを見つけた。
街を歩いてる時、俺のことを見て、不思議そうに笑っていた。
ふぅー。あとはモンスターがいるところを探すだけかっ。
見つけた森はとても神秘的でなんとも言えない。
そうさ。
あの詩はこの森を題材にしてたのだ。
なんてね。
「おっ!! あれは、なんかの影か?」
森に入った直後にモンスターらしいものを発見できるだなんて、幸運としか言えないな。
期待してその影に向かって走ると、その影の正体は3人組の男たちであった。
「あなたたちはここで何をしてるんですか?」
無難に質問したところ、3人組のリーダー的存在の人が応答してくれた。
「お、なんだよ。あんた商人出身かい? ここの森はあんたじゃ、まだ早いぜ。」
「ご親切にどうもありがとうございました。そうさせて、もらいます。」
そうだ。もし強いモンスターに出くわら大変だ。
まだ俺は無防備の装備なしだもんね。
親切な助言通りに道を引き返そうと後ろを向き、歩く。
あれ、おかしいぞ。
そんなに森の奥深くに進んでいないはずだよな。てか速攻で見つけたよな。
「あのー、帰れなくなったんで、街まで送ってもらってもいいですか?」
後ろを振り向いたが、誰一人いない。
....仕方ない、一人で帰ろう。
その後、ひたすら歩き続けたが一向に森から出ることはできなかった。
ぁー、喉乾いたな。腹減ったな。誰か助けてくれないかな。
夕日が消えそうな時、茂みから一匹の狼風のモンスターが現れた。しかも結構大きめ。
「嘘でしょ。俺のことを睨んでるよ。この狼。」
あぁ〜俺の異世界転生は初日に狼の餌となって終わるのか。
そうだ。なら、最後にひとつ詩を言おう。
死だけに詩みたいな。
カラカラの喉を必死に動かして、大声で叫んだ。
『太陽は闇に消えて、街からは光が溢れる。
しかし、夜の森に光はない。ならば俺が灯してやろう。灼熱の嵐と共に!』
ふぅー、即興にしてはなかなかの腕前かな。
けど、これが人生最後の詩だなんて、かっこ悪いな。もっと綺麗詩が読みたかったな。
詩を読み上げた直後のこと。
恐ろしくも俺は意識を失って倒れた。
けれど、さっき叫んだ所為だとは思いたくはなかった。
狼に食われて、もう目覚めることはないと思っていた。
が、俺は異世界生活二度目の目覚めを体験することができた。
しかも、今回は物理的に気分が良く起きることが出来た。
目を覚ますと、大きすぎる3つの疑問点にぶちあたった。
まず1つ、ここは路上ではなくどこかの屋敷のベッドであること。
2つ、寝ていたはずなのに、喉が潤っていること。
そして最後に3つ、驚くべきことに同じベッドの隣に寝ている人がいること。
4つ、その正体が美少女騎士様!!ではなく、筋肉系男子であったこと。
あ、いっけね。4つになっちまった。
いやいや、そうじゃねーーだろ!!!
「お、お、おいあんた、何でここで寝てるんだよ!!!」
そう言いながら、隣で寝ている筋肉系男子を揺さぶる。
するとすぐに、目を覚ましてくれた。
「おぉーお前さん、起きたのか。気分はどうだい?けど今は朝だから、少し静かにしなきゃダメだぜ。」
説教を受けました。
「あ、はい。ごめんなさい。」
いや、お前はこの状況おかしいと思わないのかよ。
2人男が同じベッドで寝てるだなんて、誰得ですかね??
「理解が早くて助かるぜ。俺はもうちょっと寝るから静かにしててくれよ。」
「は、はい。......じゃねーよ。あんたには聞きたいことがたくさんあるんだよ!!?」
どうしてお前が美少女じゃないのかって事とかな!
「はぁー。せっかくの朝だってのに、それで何が聞きたいんだ?」
「まず、ここはどこか? そしてあんたは俺を助けてくれたのか?」
「そう警戒しなくたって、危害なんて加えたりしないさ。昨日の夕方頃に焼け上がった森でぶっ倒れてる無装備のあんたを見つけて連れて帰ったのは俺だ。そしてここは俺のギルドのギルド館だ。」
なんだって、焼け上がった森? 森ってあの森だよな?
「焼け上がった森っていうのは、俺がいた森の名前か何かかですか?」
「いや、違う。あの森は昨日、魔法によって焼け上がったのさ。しかもあの規模を燃やして灰にする魔法なんて、聞いたことがねーな。」
その魔法使いがその魔法を使わなかったら、今頃俺は飢え死にしてただろう。
「そうか。まだ細かいことを聞きたいが、それよりまず、この世界の仕組みというか、についてとかを教えてもらえますかね?」
「いいぜ。けどその前に自己紹介だ。俺の名前は、"ユキラス=アンドリスト" 呼びやすい名前で呼んでくれ、それであんたは?」
「俺は、"岸田廉" だ。レンとでも呼んでくれ。えーっと"ユキラス"。」
「よし。腹が減ったな、先に飯としよう。」
この世界の仕組みの話するんじゃないんかいー
「そうしましょう。ユキラス。」
そう言って、俺とユキラスは寝ていた部屋を出て、階段を降りると、でっかい居間があった。
しかもそこには豪勢な食事と共に、2人の見知らぬ人がいた。
もちろん(?)、筋肉系の男たちである。
「お、お前らもう起きてたのか。早かったな!」
「あんたがいつも通り起きるのが遅いだけだぜ、ユキラス。」
「よしてくれよ、サリウス。あー、お前ら知っていると思うが、こいつは昨日俺が助けた、レンだ。よろしくしてやってくれ。」
筋肉どもが喋っている中、唐突に話を振られてしまった。
「あー、どうも。レンです。よろしくお願いします。」
ペコペコと頭を下げる
「そうか。よろしくなレン。
俺の名前は"サリウス=コス" 言っておくけど、サリウコスじゃねーぞ!サリウスだ。」
はいはい、サリウスね。
「次は俺か。俺の名前は、そうだな。タスクとでも呼んでくれ。」
次は俺かって、お前しかいねーよ。
「えーっと、サリウスとタスクか。よろしくお願いします。」
自己紹介が終わると、皆足早に椅子に腰掛けて、ご飯を食べ始めた。
「おい、レンも座って飯を食ったらどうだ?
話はその後でも遅くはないだろ。」
えーっと、まあいいか。 飯にしよう。
席について食事を見ると、それは食事というか、肉だった。 朝っぱらから肉であった。
余すことなく、全部肉であった。
"朝から肉なんて、君たちは平気なのかい?"
きっとそんなこと聞いたところで意味を持たない連中なんだよねー。
仕方ない。肉を食おう。
一番、軽そうなベーコンをチョイスし口へ運ぶ。
まあ嬉しいことに味は絶品であった。
その後もベーコンのみをチョイスし続け、異世界最初の朝食が終わった。
「どうだ。俺らの食事は?美味しかったか?」
サリウコス?いやサリウスだ。
本当に間違えそうになるわ。
「あ、、味は絶品でした。」
味だけですけどね。
「そうかそれは良かった。明日も期待しててくれよ。飯作るのは俺の仕事なんでな。」
絶対お前の食事の所為でみんな筋肉系になっちまっただろ。
「食い終わったか?今からレンが言うこの世界の仕組みとやらを教えてやるよ。まあ俺も少しあんたに興味あるしな。」
この世界の仕組みか。
男から興味があるって言われてもなぁ。こちらガチガチのガチの男だし。
そして説明は、美少女騎士にしてもらうはずだったんだけどなぁ。
まあいいさ!