女王様の下僕
私は女王様の犬だ。叩かれようと、縄で引きずり回されようと、それが快感だった。私もそれを求めていた。冷たい世間の目に晒される事も無くなった。気にする必要が無くなった。なにより生きていくのが楽になった。女王様との時間を思えば、毎日が楽しかった。奴隷でいる事が、至上の喜びだった。
だが、何時からだろう、私は下僕以上の関係を女王様に期待していた。
女王様は厳しい。私が少しでも間違いを起こすと、いつも怒鳴ってしつける。私がこみ上げる快感に耐えられず失禁すると、烈火の如く罵詈雑言を浴びせかける。
女王様は厳しい。昨日も寒空の下、素っ裸で連れまわされた。あまりの寒さに興奮なんか消し飛んでしまった。首が締まり苦しかった。寒さのせいで縄の下の皮膚が悲鳴を上げた。
もう耐えられない。
こうなったら。最後に。
もうどうなっても構わない。たとえ捨てられようと、最後にやってやる。
今日こそ。境界を越えてやる。
太陽が姿を隠し、待ち望んだ時が来た。
予想通り、今日も女王様はこたつに入って熟睡していた。
まさに絶好のチャンスだ。
私は女王様の反対側にこっそり回り込むと、こたつの中に入った。心臓が高鳴る。私の本能がムクムクと膨らんでいく。
まだ暖かさの残る、暗いこたつの中を私は進んでいく。そして触れる、夢にまで見た女王様の、無防備な生足に。息苦しいほどに興奮していく。呼吸が速くなる。
私は堪らずむしゃぶりついた。今までの恨みを晴らすように、ねっとりと舌を這わせた。何度も何度も、削り取るように嘗め回す。
永遠にも感じられる至福の時間、私はとことこん味わった。味わいつくした。バレるのを覚悟で、少し噛んでみたりもした。
最高だ。もう悔いはない。思い残すことはない。
そんな時、私の心に悪魔が囁きかけた。
『もっといける』
そうだ、まだまだいける。もっと奥まで。
女王様は起きる気配がない。今なら夢だった女王様の……。私の雄の部分が痛いほどに膨張する。
私がさらに奥へ入り込もうとした時、
「エリちゃん~! 晩御飯できたよ~」
女王様のお母様の声がした。
「う……う~、は~い」
気だるそうな女王様の声、女王様はこたつから出ていってしまった。
私は気づかれると思いつつも、惰性で足を舐め続けていた。もう止まらない。誰かに引きはがされるまで舐め続けてやる。もうこんなチャンス二度とないんだ。
ぺろぺろぺろぺろ。
――――これは、誰の足だ?
「ポチ~、何処にいるの~? ごはんだよ~」