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皇帝執務室

デビュタントから数日後、華やかな王宮の中を目の下に隈が出来、暗い顔で歩いていく1人の侯爵と令嬢が、王宮の侍従に案内され、ひたすら続く廊下を重い足取りで歩いていた。


私の名前は、パトリシア・フィンガー。今年、16歳になります。このネバーエンド王国建国直後からの侯爵家である由緒正しき家の令嬢で御座います。

王都から遠く離れた北部の広大な土地を領地としておりまして、小国家並みの財力はあると思っております。影響力も大きく、北方の貴族達は、公爵家と言えども手が出せない程です。ですから、私は天狗になっていたのかもしれません。何もかもが思い通りになり、多くの取り巻き達に囲まれ、褒め称えられる。そして、気にくわない者は、道端の石ころのように簡単に排除できる。ですから、私が恋い焦がれているセルジ様と、初めて見る令嬢が、親しく話す光景が我慢できませんでした。その後もあちこちで愛想を振り撒きながら歩く姿に怒りを覚えました。

そして、暴言を吐き、手を上げました。

ですが、その相手は王族のリーフィア王女様でした。青ざめた私にリーフィア王女様は、手紙を置いていき、私は慌てて読むと、『後日、王宮にてお話がございます。』と短く書かれていました。

そして、慌ててお父様のところへ向かうと、そこにはお父様とお母様と話しているリーフィア王女様が居ました。

もう、終わりだと思いました。そこからは全く記憶がありません。その後も何日か寝込んでしまい、今日、やっと王宮へ来ることができました。


ですが、疑問があります。リーフィア王女様に手を上げたと言うのに、国王様からの叱責も無く、倒れている間も特に変化なく過ぎていました。そして、王宮に着いてからも変です。王女様であれば、後宮に住まわれている筈なのに、今、私が侍従の案内で向かっているのは、宮廷と呼ばれる執務や政が行われている建物です。それも、王族の執務室が並ぶ階のさらに上。

私は、その国王の執務室より豪華で立派な扉の前に立っています。




『フィンガー侯爵様とご息女、パトリシア様をお連れいたしました。』




扉が開かれると、そこは高い天井に多きなドーム型の屋根があり、とても背の高い本棚が大量に並び、本や書類がぎっしり詰まっている。そして、入口の正面には、大きな窓をバックに立派な執務机に座るリーフィア王女の姿があった。


「ようこそおいでくださいました。どうぞ、そちらへかけてください。すぐにお茶をお出ししますから。」


にこやかに王女はソファーへフィンガー侯爵親子を座らせ、自ら紅茶を淹れて、2人の前に置き、自分も対面へと座る。


「さて、フィンガー侯爵様。久しぶりに入られたこの部屋はいかがでございますか?」


「相変わらず片付けが苦手なご様子で御座いますな。これでは書類を無くしてしまいますぞ。」


「さすが侯爵様。相変わらずお厳しい。」


王女は苦笑いしながら紅茶を飲むと、一息着き。


「パトリシア様。まず、誤らせて下さい。私、1つ、嘘をついております。」


「う、嘘?」


「はい。私の本当の名前は、ヒルシュ・フォン・シフズライト。そして、王女ではなく、皇帝です。」


「ひ、ひひヒルシュこ、こここ皇帝陛下!?!?」


「そうです。少し神様の悪戯で王女に転生してしまいましたが、正真正銘、ヒルシュ・フォン・シフズライトで御座います。」


「お、おおお父様!やはり、私は、打ち首なのですね!!!!」


「落ち着かぬか。あれくらいで皇帝陛下は打ち首などされん。」


「そうですよ?せめて重りをつけて海底へ沈める程度でしょうか?」


「か、海底!!!」


「冗談です。お咎めなんてありません。それに、あの日は私が悪戯目的で皇帝を示す勲章を付けていなかったのが原因なのですから。」


「皇帝陛下、悪戯が好きなのは知っておりますが、あまりやり過ぎるとまた、ティシィ様にお仕置きされますぞ。」


「そ、それだけはご勘弁を!!!」


皇帝は妻のティシィの名前が出た途端、大慌てで謝罪をし、フィンガー侯爵に許しを乞う事になってしまう。


「あの...少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「何ですか?」


「皇帝陛下とお父様は親しい仲のように見えるのですが、お知り合いなのでしょうか?」


「そうですよ。フィンガー侯爵様が子供の頃から、私が政治に関することなどをお教えしましたから。あと、城内でよく一緒に悪戯もしましたね。」


「一緒にと言うより、ほぼ無理矢理でしたがね。」


ニコニコしている王女と苦笑いを浮かべる侯爵を見て、パトリシアはなるほどと思い。


「さて、それではそろそろ今日の本題に入りますか。フィンガー侯爵、例の件、よろしくお願い致します。」


「はい。畏まりました。」


フィンガー侯爵は席を立つと一礼して、部屋を出ていき、部屋には王女とパトリシアが残されて。


「陛下、あの、本題とは何で御座いましょうか?」


王女は立ち上がり、棚の影に消えると、様々な物が落ちてくる音がし、埃が舞うのが棚の端から見える。そして、しばらくすると、王女は侍女のお仕着せを持って表れる。


「陛下?それは?」


「見ての通り、侍女のお仕着せです。しばらくの間、私と王宮で侍女として働いてもらえませんか?少し調べたいことがあるのです。」


「陛下もですか!?」


「はい。詳しくはまだ話せませんが、どうですか?」


「は、はい。分かりました。ですが、私、侍女の仕事は何をすればいいのか全く分からないのですが...」


「大丈夫です。ほとんど侍女の振りですから。」


「は、はあ....」


「と言うことで、脱いでください。」


「え?」


王女は黒い笑みを浮かべながらパトリシアに近付いていき、目がキランと光ったと思うと飛び掛かりドレスを脱がし初めてしまい、王宮中に「いやあぁぁぁぁぁあああ!!!!!」という悲鳴が響き渡ったという。


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