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挨拶回り

歴史を感じさせる広い大理石の床、高い天井には豪華なシャンデリアが幾つも吊るされ、クリスタルに反射した蝋燭の光がキラキラと輝き、一流のオーケストラ達によって、優雅な曲が演奏されている。

そして、この豪華な空間に、人間は勿論、エルフや獣人等、様々な種族の貴族達が優雅に会話を楽しみ、その間を給仕係達がワイングラスを乗せた銀の盆を持ち、グラスを配り歩いている。

そして、そんな中、こっそりと王族用の入口から会場へ入る王女が1人。先程、皇帝に即位した転生する王。ヒルシュである。ただし、悪巧みの関係で、皇帝の勲章を外し、極一部の者にしか分からない皇帝であることを示す、新たに誂えられたティアラを頭に載せている。


『うむ。今のところ、誰も気付いては居ないようだな。』


「陛下。」


背後から声をかけられ振り替えると、そこには、ティシィの祖国で宰相を務め、このネバーエンド王国の宰相も建国以来、務めているエルフ。エルヴィス・ノースフォレスト公爵が立っていた。


「久しぶりだな。エルヴィスよ。」


「そうでございますね。最後にお会いしたのは、産まれてまもない頃でしたね。」


長寿族のエルフと言えど、2000歳近いエルヴィスは、流石に老け始めており、白髪混じりの金髪に、口髭を生やしたダンディーな姿である。


「それにしても、また少し老けたのではないか?公務もそろそろ息子に継がせてはどうだ?」


「ハッハッハ。そういうヒルシュ様は、これまた可愛らしくお若くなられましたな。」


「喧しいわ!好きで王女に産まれた訳では無いのだ!放っておけ!」


ニヤニヤと返してきた宰相に悪態をつき、他のところへ向かい。


『エルヴィスめ、そろそろ更迭してやろうか。あ奴の息子ももう1000歳を遠に越えておるぞ。』


内心、ブツブツと文句を言いながらも、これでも建国以来の主と家臣で、その絆はとても強く、だからこその軽口や罵り合いも許されていたりする。


「さて、次は誰に挨拶をするか...ブフッ!」


そんなことを言っていると、背後から突然、タックルするように抱きつかれ、変な声が出てしまい。


「リーフィア様!今日も可愛らしく、素敵でございます!」


飛び付いてきたその者は、銀色の髪に猫耳が生えていて、腰の辺りからこれまた銀色の尻尾が生えている。瞳は赤い。


「こら!ターニャ!止めぬか!」


「良いじゃないですか!今生では同い年なのですから、仲良くしましょうよ!」


この者は、建国後、亡命してきた獣人の王族の末裔で、ターニャ・ザ・ルートレスと言う。実家は公爵家で、獣人貴族の総纏め役の用な役割を果たしている。


「良くない!そなたも王族の末裔なら、もう少し淑女らしく振る舞ってはどうなのだ!」


「えー、面倒くさいです。」


「はぁ...これで王族の末裔か.....お主の婚約者になんとかしてもらわねばならんな...」


「お呼びですか?」


そう言って、背後から現れたのが、ターニャの婚約者で、金髪で、黄金色の瞳をし、ライオンのような耳を持ち、これまたライオンのような尻尾が生えた獣人。ニコル・アルトレイトである。実家は侯爵家で、国の騎士団を代々、纏めている。

誠実で実直な人柄で、お転婆なターニャのストッパーとして、ルートレス公爵が『娘をどうかよろしく頼みます!』と土下座をして、お願いをしたと言う。


「久しぶりだなニコル。お主がいない間に、また、ターニャがあちこちで珍事を起こしていたと聞いたぞ。いや、現に今も起こっているが。」


「申し訳ございません。リーフィア王女様。ほら、ターニャ。王女様から離れなさい。」


ターニャを引き剥がし、隣に立たせて。


「はぁ、お主のお陰で婚約が決まってからルートレス公爵が若々しくなり、議会でもだいぶ元気に発言をしているそうじゃ。」


「それはなんと言え良いのか...とりあえず、公爵様に挨拶をして参ります。」


「うむ。それがいいじゃろ。」


「リーフィア様!今夜、ベットで待っていてくださいね!優しくして差し上げますから!」


「何をする気じゃ!絶対に入れぬからな!直ぐにでも王宮から叩き出すぞ!」


「えーケチ。」


「ほら、ターニャ。行くよ。」


ターニャはそのままニコルによって、引き摺られていき、ルートレス公爵に挨拶をしている。そして、先程の会話を聞いていたのか、こちらへ向かって土下座をしてきた。

ちなみに、ルートレス公爵は貴族の間では、『土下座公爵』と呼ばれている。土下座の原因は、勿論、全てターニャの珍事であるが。


『さて、後、素のままで挨拶できそうなのは.....お、居たな。』


「ソフィーナ、セルジ。久しぶりだな。」


「リーフィア王女様。お久しぶりで御座います。本日は一段とお美しく御座いますね。」


「リーフィア王女様。久しぶりです。ああ、いつも美しくあられますが、今日は一段とお美しい。まるで地上に降り立った女神様のようだ。」


真面目な性格で大人し目なのがソフィーナ。あって早々、口説き始めた色男のセルジの姉である。

二人とも栗色の髪で、緑色の瞳をしている。種族は至って普通の人間である。実家はシオン子爵家と言うこの国で最も新しい貴族で、有能な外交能力を買われて、貴族位を与えられた。


「ソフィーナ、久しぶりだな。セルジ、いきなり口説くな。そして、気持ち悪いわ!」


「セルジ、王族になりたいのですか?」


「いえ、美しい人と一緒になれるのであれば、王族であろうが、農家であろうが何にでもなりますよ?」


「その権力に執着しない所は評価するが、動機が不純な所は感心できんな。それに、お主も外交に関しては、父親より優れているのであろう?家を継がなければ困る。」


「それはそれは、お美しい姫君を困らしてはいけませんね。ちゃんと継ぐと致しますか。」


「はぁ...こいつの妻は誰であろうとも疲れそうだな。ソフィーナ。こいつが馬鹿をせぬよう頼む。」


「もちろんで御座います。リーフィア王女様のお願いとあれば、断る道義が御座いませんから。」


「うむ。頼んだ。これ以上、この色男に他のご令嬢を振り回させる訳にはいかんからな。では、儂は他の者の所に挨拶をしに行くとする。また後程な。」


そう言い残し、他の貴族の元へ、完全な淑女らしく見えるよう猫を被り、挨拶をして回っていき。


『これで、一回りか。』


「ちょっとそこのあなた!」


振り向くと真っ赤な髪を縦ロールにし、オレンジ色の瞳をした目付きのキツイ令嬢が腰に手を当てて仁王立ちしていて。


『前世の誰かに似ているような...』

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