皇帝即位
とりあえず、侍女達に支度をしてもらい、デビュタントの前に、ティシィの所ですることがあるので、ティシィの元へ向かっている。
することと言うのは、この国では、国王の上に皇帝という位がある。ほぼ、私の為だけの位だが。
やることは主に、次代の国王や王族の教育係みたいなもので、後は、国王がもしも暴走し、国が荒れたとき、国王の代わりに国政を代行したりもする。
実質的には、国家の監査役のような仕事内容だったりする。
そして、皇帝の位を与えられるのは、聖女であるティシィだけで、今のところ、ヒルシュ以外、皇帝の地位に着いたものは1人もいない。
「ヒルシュ様、200回目の皇帝即位、おめでとうございます。」
笑顔で迎えてくれたティシィにお礼の言葉を貰い、それに軽く頭を下げて返事を返す。
「こうして、女性として、皇帝に即位するのは初めての事だな。ティシィ。今世もよろしく頼む。」
「もちろんです。陛下。私は何時でも、あなたの側に居ます。」
「私も何度だって、そなたの隣にあり続ける。」
そして、ティシィから新たに作られた、銀の細かな細工が施され、大粒のダイヤがあしらわれた皇帝用のティアラを、頭上に載せられ、青いサッシュに、皇帝であることを示すリーフを模した勲章を付けられて、正式な皇帝となる。
「それでは、皇帝陛下。本日のデビュタント、おめでとうございます。」
「うむ。まあ、王女として産まれた以上、男のような喋り方はあまり表では出来ないかもしれない。違和感を感じるだろうが慣れて欲しい。」
「わかっております。今度はどんな珍事が起きるか楽しみです。」
「あまりからかうな...私も少し気にしてるのだからな。」
「まあ、それは以外です。」
ティシィは、私が言った言葉に、わざとらしく驚いた振りをしてきた。早速、からかいに来るのか!
いじけて見せると、ティシィが抱きついてきて、身長差もあり、ティシィの胸に顔が埋もれ、呼吸ができない。
「むぅーーーー!!!!」
「ヒルシュ様、拗ねられても可愛いです!」
死ぬ!窒息死する!こんな死に方をしては、神に再び会うとき、必ず、からかわれる。それだけは何としても阻止せねば!
だが、この状況...悪くはないな!!!
『我が生涯に一切の悔い無し!』
ティシィからの殺人級の包容を受け、ティシィの元を後にし、前世の息子夫婦つまり、現国王と王妃と、孫娘夫妻に皇帝への即位が完了したことを告げ、デビュタント前の準備は完了したので、これから王宮の会場に入るだけだが、少し悪巧みをすることにした。息子夫婦は賛成したが、何故、孫娘夫妻は反対なのだ。良いではないか。少し、驚かしたいだけではないか。
結局、悪巧みであまり大きな混乱を起こさないようにとの約束をし、今、会場の王族専用入口の前に立っている。
『さあ、今生の晴れ舞台、楽しもうではないか。』




