遥とおばあちゃん
お盆休み、おばあちゃん家に帰省して2日目――。
父さんが、朝早くに日帰りで兄さんの所へ行った。
昨夜、遥に、予定がなければ、おばあちゃんに会ってほしいと、メールした。
遥は、
会いたいと返事がきた。
おばあちゃんには、昨夜、父さんが、入浴中に話をした。
『おばあちゃん、明日、彼氏を呼ぶよ。』
『え?東京からわざわざ来てくれるの?』
『いやぁ、実は…』
おばあちゃんに、遥が少し離れた町に帰省していることを話した。
一瞬、驚いていたけど…
『偶然とは言え、同じ県内に住んでた人と向こうで、知り合うなんて、凄いことよね!』
おばあちゃんは、興奮気味に話していた。まぁ、確かに、遥に再会したのも偶然の出来事だったしね。
そんなこんなで、遥と会うことになった。
「千歳さん!」
遥は、車の運転席から、
ドアを開けて、手を振っていた。
「ごめんね、遥。突然、呼び出して…」
「いいえ。オレは、昨夜のメールを見て、嬉しかったですよ。」
「あはは。父さんが、朝から兄さんの所に行くって聞いてさ。おばあちゃんには嘘つきたくなくて、遥のこと紹介したかったのよ。」
「ふっ、そうだったんですね。」
遥は、助手席のドアを開けながら微笑んだ。
しばらくして――
「初めまして、有里遥と申します。」
正座をして、頭を深く下げながら挨拶をした。
相変わらず、遥の礼儀正しい所作に、感心した。
「まぁ!礼儀正しい方ね。千歳には、勿体ないくらいのイケメンな彼氏ね。」
「お、おばあちゃん…」
「千歳さんとは、結婚を前提にお付き合いさせていただいています。」
遥は、落ち着いた表情と声で話す。
さすが、有里のお坊っちゃんだなぁ。
「まぁ!そうなのね!千歳は、貴方にずいぶん助けられているんじゃない?」
遥は、真っ直ぐな瞳をおばあちゃんに向けて答えた。
「いえ、千歳さんに、いつも助けられているのは、私の方です。」
「遥は、私より5つ年下なのに、しっかりしてんのよね。」
笑いながら答えた。
そんな私を見て、嬉しそうなおばあちゃんは…
「遥君、ありがとうね。結婚を前提にお付き合いしてくれて…。」
「今は、まだ未熟な私なので、すぐに結婚というわけにはいきませんが、何れ彼女と一緒になりたいと思っています。」
遥の礼儀正しい所作で、何かを感じたのか、おばあちゃんはこう問いかけた。
「もしかして、貴方のおばあ様は、華道の先生ではないですか?」
遥は、目をパチくりして、私のほうを見た。
「そうだよ。遥のおばあちゃんは、華道の先生よ。」
「やっぱりそうなのね。有里っていったら、立派な名家だったわね。」
おばあちゃん、やっぱり知ってたか。
まぁ、
県内では有名だしな。
「ふふ。遥君の容姿を見ているとおばあ様のことを思い出すわ。」
「私の祖母を御存知なんですか?」
遥は、背筋を伸ばしおばあちゃんに問いかけた。
「知り合いというか、数十年前に、市内で華道の催しがあった時に、お見掛けしただけよ。」
「そうだったんだ。おばあちゃん、昔からお花が好きだったもんね。」
意外な事実に、私も、遥も驚きを隠せない。
「遥君は、あの町にいた頃に、千歳と会ったことがあるのかしら?」
「はい。」
私は、遥に目で合図するように頷いて、
16年前からの出来事をおばあちゃんに、包み隠さずに話した。
「…そうだったの。遥君には、辛い思い出だったんでしょうね。」
「あの頃は、私も、子供だったので、仕方のないことでした。」
遥は、懐かしむように目を閉じて話す。
「…親の都合とはいえ、子供にしたら、いい迷惑だわね。」
おばあちゃんは、どこか、申し訳なさそうな表情だった。
「でも、大人になって千歳さんに再会出来たことは、偶然とはいえ、運命だと感じました。」
遥は、私に笑顔を向けた。
よくもまぁ!そんな恥ずかしいこと言えるよ!
「まぁ!千歳ったら、赤い顔しちゃって!可愛い!」
「お、おばあちゃん!」
私は、思わず俯いた。
「はい。千歳さんが、赤い顔されると、可愛くて仕方ないです。」
「こ、こら!遥!」
恥ずかしさのあまり、遥の腕を軽く叩いた。
「ふふ。二人とも、仲が良くて大好きなのねぇ。」
おばあちゃんは、ニコニコしながら、私と遥を交互に見るのだった。
その後、遥は、おばあちゃんの自慢のちらし寿司を幸せそうに、食べていた。
やっぱり、おばあちゃんに遥を会わせて良かったな。
とりあえず、父さんのことをおばあちゃんには、口止めしとかないと…。
「おばあちゃん、父さんには、遥と付き合ってること言わないでね。」
「ふふ。わかってるわ。源一郎さんに言ったら、遥君を呼べって、言い出しそうよね。」
まぁ、普通ならそうだけど遥と私の場合は、ちょっと違うんだよね。
すると、遥が私に、
「…おばあさんには、本当のことを言ったほうがいいかもしれません。」
私は、頷いた。
おばあちゃんに、父さんと遥のお祖父さんの企みを話した。
「ええ!それなのに、源一郎さんには、内緒なの?」
「すみません。今はまだ、その時期ではないので。おばあさんには、心苦しいでしょうが、内密にお願いします。」
「ふふ。わかったわ。」
おばあちゃんは、私達のことを察して、笑って了承してくれたのだった。
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