表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
懐かしき心の行く末に  作者: 西島夢穂
3/52

再び、遥の家にて…

遥に、手首を掴まれながら夜の街を歩く。



私の知っている有里遥は、まだ、子供だったのに…



なんだか、ヘンな感じ。




「…千歳さん、貴女の家まで送ります。」




「…それはいいけど、そろそろ手を離してほしいんだけど。」




「…あ、す、すみません。痛かったですか?」




遥は、申し訳なさそうに、ゆっくり手を離した。




遥が、店から連れ出してくれたおかげで、母親に対する嫌悪感が消えていた。


遥と一緒にいたら、思い出すかと思っていたけど…


不思議だなぁ。




「千歳さん。まだ、具合が悪いですか?」




「ううん。大丈夫!多分、店の空気が良くなかったのかもね。」



遥には、助けてもらってばかりだなぁ。


お坊っちゃんなのに、意外と面倒見がいい?


しかも、

5つも年上のアラサー女、相手に…




「…千歳さん。」




「ん?」




「少し、話しませんか?」



「…いいけど。何?改まってさ。」




「オレは、千歳さんに、話したいことが沢山あるんですよ。」




話したいこと?

しかも、沢山って。


なんなんだろう?

まさか、今までの失態の数々?




「しょうがないわね。この間の借りってことでいいかしらね。」




「いいですよ。その代わりお酒は、ダメですよ。」




「は?私、さっきの合コンでほとんど飲んでないし、お腹も減ってんだけど。」



「全く、元気になったとたんに、これですか。」




腕を組んで、ため息をつく遥は、いつもより穏やかに笑っていた。





その後――




「で?なんで、また、あんたの家なわけ?」




「仕方ないでしょう。貴女が、酒を飲むって言って、聞かないんですから。」




「別に、居酒屋でもいいでしょうが!!」




「貴女は、さっき、気分が悪くて休んでたでしょう。外だと、色々と面倒なんですよ。」




うっ!

確かにそうだけど…




「それに、千歳さんと二人で、落ち着いて話がしたいんですよ。」




いつにもまして、真剣な表情の遥に、これ以上は言えなかった。



一体、何の話?



缶ビールと軽いつまみを用意してくれた遥。


なんだかんだいいながら、私のわがままを、聞いてくれる。


はは。

どっちが、年上なんだか。



「遥はさ、付き合ってる彼女とかいないの?」




「…いたら、貴女を家に招いたりしませんよ。」




「あはは!そうだよね!あんた、イケメンのお坊っちゃんだからさ、モテるかなと思ったの!」




「千歳さん、酔ってます?なんだか、いつものテンションの3割増しに、なってる気がします。」




「酔ってないわよ。ビールくらいで、泥酔することないから。」




「ビールでも、飲み過ぎると悪酔いしますよ。」




「その時は、また、介抱してくれるんでしょ!」




冗談半分で、遥をからかったつもりだったのに…




「わかってないですね。」



遥は、私の頬に手を伸ばした。




「酔った女性は、無防備になるんですよ。オレも男なんで、今度は、襲うかもしれませんよ?」




見つめる視線が、妖しく色っぽく、頬に触れた手が、唇に移る。親指の腹でなぞる感触は更に、エロく厭らしい。




「こ、こらぁー!!遥ぁ!酔ってんのは、あんたのほうでしょ!」




ああ、びっくりした。


遥相手にドキドキが止まらない。


このお坊っちゃんめ!!




「フッ。顔が赤いですよ。ドキドキしましたか?」




「はーるーかぁー!!からかったなー!」




私は、遥の頭にグリグリと指の関節を立てた。




「…い、痛いですよ!」




「ふん。私をからかった罰じゃー!」




「こ、今度、泥酔するほど飲みたかったら、オレが、そばにいるときにしてください。」




「…は?何で?」




「この前、介抱したのが、オレで良かったと思ってください。」




「…うっ、それは、そうだけど…」




「オレは、貴女が心配なんですよ。さっきの店のこともあるから。」




俯いて答える遥の、

その声は少し、震えてた。



「……ありがとね、遥。あんたに、また、会えて良かったよ。」




俯く、遥の頭をわしゃわしゃと撫でた。




「…オ、オレも会えて良かったです。もう…2度と会えないと思ってました。」



遥は、私の腕を取り、

ふわりと、抱き寄せた。




「…は、遥?」




「…す、すみません。暫くこのままでいさせてください。」




抱き締める腕が、若干、強くなった。




「…千歳さんに、言いたいことが沢山あるんです。」



「…うん。」




「聞いてくれますか?」




「うん、わかった。」




そして、ゆっくりと、

話を始める遥だった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ