遥の元カノ。
遥と、
付き合うことになった。
先日、
遥を好きになったことで、跡取り息子である彼に対して、どうするべきかを正直に話した。
けれど、話は意外な展開になった。
師範と父さん、有里家の家族の人達が、遥と私を結婚させるという企みが、明らかにされた。
変わった名家の家柄に、ただ、苦笑するしかなかったけど…
遥の本心も聞けたからいいのかしらね。
『男として、まだ、貴女を幸せにするには未熟だと思っています。』
その思いを聞いて、私は、嬉しかった。
遥の傍にいれるなら、あの町に戻るまで、信じていようと思った。
「千歳さん?」
「…え?」
「気分が悪いんですか?」
「いや、あんたと映画見るとか普通のデートするとか新鮮だなと思ってさ。」
「そうですね。オレは、千歳さんとデートすると決まって、昨夜はなかなか眠れなかったですね。」
「あんたは、遠足前の小学生か!」
お互いに、笑い合いながら静かに映画の上映が、始まったのだった。
数時間後――
「ち、千歳さん、そんなに感動したんですね。」
「う、ううっ…だ、だってあんな素敵なラストシーン泣けるじゃないの。」
遥は、ハンカチを取りだし私に差し出した。
「千歳さんの泣き顔は、オレだけしか知らないのに…外で泣くとか、なんかズルいですよ…。」
「う、うるさいわね。それとこれとは違うでしょう。あんたこそ、変なとこで、ヤキモチ妬くな!」
付き合っても、二人の掛け合いは、変わらない。
やっぱり、遥といると落ち着くな。自分でも驚くくらい自然体でいられる。
「千歳さん、夕食までまだ時間があるので、お茶しましょうか?」
「そうね。」
遥に手を握られ、自然と恋人繋ぎをした。
小さなカフェに、入りコーヒーとケーキを注文した。
「そういえば、あんたのことまだ知らないこと沢山あるわね。」
「はい。お互いに、まだ知らないことありますね。」
まぁ、再会してから互いに酒飲みというのは、わかってたけど、案外、知らないこと多いな。
15年の空白があるし、仕方ないか。
「オレは、昔からセロリと牡蠣が苦手で、未だに食べれないですね。」
「ふーん。私は、酒飲みだけど、カラスミが苦手。」
他愛ない話をしながら、話題は、付き合ったカレカノについて…
「遥は、付き合った彼女って何人いたの?」
「え?いきなり、その話題ですか?」
「だってさ、遥は、イケメンだし、モテたのかなと、素直に思っただけよ。」
ため息をつきながら、困惑した表情で答えた。
「…貴女を含めて、3人ですかね。」
「へぇ、意外と少ないね。学生の頃は、勉学優先って感じだったわけ?」
「いいえ、最初に付き合った女性は高校の同級生でしたよ。」
「まぁ、最初はそうよね。私も高校の時だったし。」
「千歳さんは、何人お付き合いしたんですか?」
「私?うーん、5、6人くらいかな?浮気か、二股かそんな男ばっかだった。」
「あまり、いい思い出はなかったんですね。オレも、何を考えているのかわからないとか、冷たいとか言われてました。」
「…私と出会った頃から、ツンデレのまま大人になったわけね…。」
「そうですかね?付き合った彼女と別れた理由は、大半が、クール過ぎて何を考えているのかわからないでした。」
「あんた、彼女のこと本当に好きだったわけ?」
「失礼ですね。当時は、ちゃんと好きでしたよ。けど…。」
遥は、躊躇気味だ。そんなに嫌な思い出ばかりだったのかしら?
まぁ、私も似たようなモンだけどね。
「あれ?遥くん?」
どこからか、遥を呼ぶ女子がいた。
振り返ると、見知らぬ若い女子が立っていた。
「!…沢渡さん?」
「久しぶり。大学以来ね。何?彼女とデート?」
その女子の視線が、私を上から下まで見定める。
なんだこの女?
もしかして、元カノ?
「ふふ、ずいぶん女性の好みが変わったわね。そうよね、年上の女性なら、可愛いがってくれるもんね。」
「……っ……」
遥は、俯いて、握りこぶしを作った。
この元カノ、遥と同い年なのに、なんで上から目線な物言いなの!
私は、内心イラついて、
「遥?お友達?」
「え?…いえ、あの…」
「元カノですよ!」
元カノは、イラついて答えた。
「元カノ?どうりで若い女性だと思った。でも…あんたのその上から目線どうにかならないかしら?」
年下女を相手に、威圧的に睨み付けた。
怯む元カノは、さっきまでの勢いがなくなった。
「…ち、千歳さん。」
遥は、
唖然として私を見上げた。
「…遥くん、私には、名字で呼んでたのに、その人には、名前で呼んでるっておかしくない?」
「……そ、それは…」
口ごもる遥に、私が言い返した。
「そりゃ、私達って、昔馴染みの仲だからね。仕方ないんじゃない?」
私は、遥の手を握り、店を出たのだった。
全く、胸くそ悪いわ!
「遥!スーパー寄って、缶ビールとおつまみ買って、帰るわよ!」
「え?…で、でも…」
あの元カノと何が、あったか知らないけど、
遥を侮辱する女は、たいしたことないね。
別れて正解だわ!
怒り任せで、私は、自分ん家に向かうのだった。
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