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懐かしき心の行く末に  作者: 西島夢穂
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私の過去

15年前の夏。


私は、おばあちゃん家に越して来た。


正直、あの町で父さんと兄さんと一緒に暮らしたかった。



父さんと、別居中だった母は、先におばあちゃん家で暮らしていた。


久しぶりに、会った母は、小綺麗な格好と化粧を施していた。



少し前まで、化粧っ気のない母だったのに、知らない女性に見えた。




「千歳、明日、転校先の中学に行くからね。」




「うん。」




手続き等は、前の学校で済ませていたけど、転校先の制服の寸法や学校の説明等で行くことに。



ちょうど、夏休みだったために、生徒の数も少なかった。



この時は、まだ、母を嫌いではなかった。



別居中に、仕事を見つけて働いていて家計を担っていたからだ。


当時、おばあちゃんもパートとして働いていた。



転校先の中学は、母の母校だったらしい。


母曰く、知っている教師は全然いなかったみたいだ。


学校は、結構楽しかった。友達もすぐに出来た。


部活は、帰宅部に近い文芸部にした。


本当は、剣道部に入りたかったけど、この学校は、男子部員のみの部だった。


まぁ、仕方ないか。

思春期の女子ともなれば、胴着を着ることが、恥ずかしいと思う年頃。



この頃までは、普通に過ごしていた。



そんな平穏な日が続くと思っていた。



けれど…

ある日を境に、母の行動が今までと違ってきていた。


残業で、帰宅する時間が遅くなることは普通にあったけど、休日に、出かける回数が多くなった。



いつもより、おしゃれして出かける母に疑問を持ったのだった。



その後、学校の行事や家庭訪問にはおばあちゃんが、代わりにきてくれたことが多くなった。



しかし…。母の私生活が変わったのは私が、中学2年の秋から冬へと移り変わる時だった。



見知らぬ男性が、おばあちゃん家に来て、母と共におばあちゃんと話していた。



「母さん、私、この人と一緒に暮らすわ。」




「暮らすって…」




「お母さん、祥子さんとは真剣にお付き合いさせてもらっています。」




嘘くさい笑顔が、妙に不快に感じた男性だった。




「関西に仕事で行くことになったの。私も、この人と一緒に付いていくわ。」




「祥子!千歳は、どうするつもりだい。」




「千歳は、ここに置いていくわ。私より母さんになついてるみたいだし。」




「祥子!あんたは、千歳の保護者でしょ!勝手なこと言ってんじゃないよ!」




母とおばあちゃんが言い合いしている時、私は…




「…母さんは、私のこと嫌いになったの?」




子供ながら、素直に問いかけた。すると、母は嘲笑しながら…




「そうね。あんたがいると幸せになれないのよ。」




「…!」




「祥子!」



おばあちゃんは、母さんの頬を叩いた。




「母さんは、私より、千歳が可愛いんでしょ?いなくなったほうが、楽でいいんじゃない?」




失笑する母に、私は、睨み付け、言い返した。




「…父さんと離婚した理由わかったよ。心底、自分勝手な人だから、父さんも愛想尽かしたんでしょ!」




「…フッ、千歳は、あの人に似て可愛いげがないわよね。」




「可愛いげがないのは、母さんのほうだよ!昔はあんなに優しかったのに…」




「今さら、めんどくさいこと言わないで。だから、あの人に似ているあんたが、嫌いなのよ!」




蔑ました目で、母は、立ち上がり男性と共に家を出ていった。




「…なんで!私を、嫌いなら、父さんと兄さんと一緒にあの町に居させてよ!母さんなんか大っ嫌い!!2度と帰ってくんな!」




泣き叫びながら、その場で座り込んだ。



その時、

初めて母さんが、私のことを嫌いだと知った。



その頃、グレてやろうかと本気で思ってしまった。


家出をしようとして、補導されたことが一回あった。


その時、おばあちゃんに本気で怒られた。


泣きながら私を、抱きしめる腕が、こんなにも温かく優しいものだとは、気づかずに…



私は、母と同じようなことをしようとした。

おばあちゃんを、一人置いて、悲しませてしまうところだった。


こんな気持ちは、自分が一番よく知っているのに…



それ以来、おばあちゃんのために家事手伝いや勉強を頑張ってきた。


決して、楽な生活ではなかったけれど、いつも笑顔の絶えないおばあちゃんと一緒にいることが、なによりも幸せだった。



それから、高校生になり、彼氏が初めて出来たり、生活のためにバイトもした。


高校卒業したら就職しようと決めていた。


けれど…




『千歳、大学に行きなさい。我慢しなくていい。自分の人生、自分で切り開くものよ。』




おばあちゃんに、そう言われて涙が出た。



それから、東京の大学に進学して一人暮らしを始めておばあちゃんを何度も、東京によんで、観光したこともあった。


逆に、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆休みは、必ず、おばあちゃん家に帰っていた。


私をここまで、育ててくれたのは、おばあちゃん…。


大人になった今でも、それは変わらない。


あの日以来、あの人は、戻ってくることはなかった。


十数年、どこで何をしているかなんて、どうでもよかった。



けれど…


あの人は、なに食わぬ顔で帰ってきた。


相変わらずの自分勝手さに苛立ちが込み上げて、私は大好きなおばあちゃん家から、立ち去った。



おばあちゃん、父さん、ごめんなさい。



私は、あの人と仲直りする気もないんだよ。




今まで、育ててくれたおばあちゃんに、恩返しすることが、何よりも今の私にとって大切なんだよ。




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