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懐かしき心の行く末に  作者: 西島夢穂
15/52

不安な夜

この家が、珍しく騒がしい年末の夜…


インターホンが鳴って、父さんに出迎えられた遥が、リビングに顔を出した。




「お祖父さん!」




「なんだ、遥も来たのか。ちょうどいい、話を聞きなさい。」




「ダメです!その話は、あなた方が、勝手に決めることではないでしょう!」




いつになく、厳しい表情の遥に息をのむ。




「む。しかし…」




「その話は、千歳さんの意思と自由が尊重されなくなります!」




「は、遥?」




あ!

ヤべっ!


つい、いつもの癖で…


私は、

口を両手で押さえた。




「千歳、遥くんと会ったことがあるのか?」




「…そ、それは…その…」



私が、口ごもっていると、横から遥が、私の前に立った。




「実は、千歳さんとは、3ヶ月ほど前に、向こうで偶然、再会したんですよ。」



「何?本当か!!遥!」




「はい。」




「何故、三日前に連絡した時、言わなかった!」




「あの話を聞いたら、言えるわけないですよ。二人で事を進めるつもりだったのでしょう。」




いやいや…

全然、話が見えないんですけれど…



ていうか、一体、何の話?めちゃくちゃ、怖いんですけど…。




「とにかく、その話は、今することではないので!ほっといてください!」




遥は、師範と父さんに啖呵を切って、私の手を握って足早に家を出た。



庭に、停めていた1台の赤い車の前で、足を止めた。




「乗ってください。」




助手席のドアを開け、遥は私を促した。




「どこ行くのよ?」




運転席に座り、エンジンをかける遥を横目に、問いかけた。




「…有里家の、私有地にある母屋です。」




「母屋?」




「はい。集中したい時とか一人になりたい時に、いつも使うんです。」




「ふーん。」




さすが、有里のお坊っちゃんね。もしかして、別荘とかあったりして!




「…すみません。帰って早々に、お騒がせして。」




遥は、そう言いながら、ハンドルを握りしめ、じっと前を向いて運転していた。



「全くだよ!師範は、いきなり来るし、あの話だの、その話だのと言われてもわかんねぇつーの!!」




私は、窓枠に肘をついて、ふてくさった。




「…そう、ですね。千歳さんにしてみれば、不安ですよね。」




「不安よ!父さんも師範もあんたも知ってて、私だけ蚊帳の外みたいで…なんかすごく、淋しいわよ!」




遥は、それ以上、何も言って来なかった。寧ろ、どこか申し訳なさそうな表情で言葉を飲み込んでいた。



師範が、折り入ってお願いがあるって言ってた。


お願いって…何?



も、もしかして!

知らない男と見合いさせられるとか?



父さんが、縁談があるとか言ってたし…



それとも、この歳になって海外留学させられるとか?



他にも、色々と嫌なを想像してしまう…




『…屋敷を継いで、結婚して子供を授かる…』




ふと、

父さんの話が頭に過った。


師範のお願いって…


孫である遥の結婚相手を、この私が見定めて、決めてほしいってこと?



要するに、変なムシ(女)がつかぬように、今から婚約者を決めておくほうが、後々、問題ないと?


うーん。

可能性あるな。


遥が、結婚するとしても、先の話だけど、近い未来ではあるし…



ズキン!



ん?



まただ。胸が痛い?

師範のお願い事を、色々と考えているだけなのに…



何故、私が傷つくのよ?




「……さん。千歳さん?」



知らぬ間に、遥が、私を呼んでいた。




「…え?…何?」




「着きましたよ。」




車を下りると、立派な佇まいの日本家屋があった。


遥は、

鍵を開けて中へと入った。私も、それに続いた。




「お、お邪魔します。」




玄関に上がるなり、廊下を進むと、大きな和室にたどり着いた。




「…り、立派だね。」




「そうですか?…お茶を入れてくるので、座っててください。」




遥は、そう言って部屋を出て行った。



大きな長机のこたつに、ゆっくりと、腰を下ろした。


なんか…

厳かというか、凛としたこの空気に緊張するな。


私みたいな、人間が入っていいのか…



心底、疑問を感じるのだった。






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