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黒い王子様Ⅳ
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フィレクシアの酒場で英子と落ち合ってから数日が経った。
ベネッサはこの日、ドラゴンと対峙しそしてそれを討伐せしめた彼を見た〈クラングウッド大森林〉の入口へと足を運んでいた。
手頃な大木に背中を任せ、豊満な胸を支えるように腕組みをする。視線は何かを警戒するようにまわりを見回していた。
ただベネッサが居る場所は初心者も行きかうクラングウッド大森林の入口も入口、ベネッサが警戒するほどのモンスターは出現したりはしない。
しかしながらベネッサは、そわそわと、あるいはいらいらとしながらその紅色の瞳を動かせる。
そうすると図らずとも、視界の端にデジタル表記の数字の羅列が入ってくる。
18:49
その数字が持つ意味を知るベネッサは、ムウと顔をしかめて呟いた。
「遅い・・・。ほんまに来るんかいな」
結果として英子はベネッサの要求通り、藁束から針を探す手伝いを完遂した。
ただ針自体を見つけることは叶わなかった。英子が見つけたのは、針を見たことのある人物――例の彼の姿を間近で見たという男だった。
方法は意外にもシンプルで、かつ原始的な聞き込みという手段を取ったようで、知り合いの知り合いの――、という行為のn回目に出てきたのが、その男。
そして、その男と落ち合うためにベネッサはここまでやってきた。




