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6・優しい瞳

「今日は、お祝いするから早く帰ってくるように」と、パパから言われていたから麻子となつみとバス停で別れて急いで帰ってきた。


「ただいま~」


うちの門から玄関までのポーチには、お母さんの趣味のガーデニングの自慢の鉢植えが並ぶ。

今だと、色とりどりのチューリップやペチュニアが道行く人の目を和ませている。

私も、可愛い花を見ると元気が出るんだ。

あと、あんなにイライラしているお母さんも、こんな優しい花を咲かせるんだ、と思うと何か安心するのもある。


リビングの扉を開けると、お母さんが奥のキッチンで料理をしていた。


「おかえり。手は洗ったの?」


チラッと、私を見てからいつもの如く小言を言う。私は、小さく肩をすくめながら「洗ったよ」と答えた。


「パパは?何時に帰ってくるの?」


「もう、帰ってきてるわよ。部屋で着替えてるわ。あなたも、早く制服を脱いできなさい。汚したらどうするの」


一気に言うと、もう私を見ずに料理の続きをしている。

これ以上、話すとますます当たりが強くなると思ったから、「はい」と答えて自分の部屋に向かった。




「じゃあ、みおりの高校入学を祝ってカンパ~イ!」


パパの陽気な掛け声から始まった、いつもよりちょっと豪華な夕飯。

私の好きな、チーズ入りハンバーグとブロッコリーのサラダ、トマトとレタスのスープが並んでいる。

デザートには、パパが買ってきてくれた最近オープンした話題のケーキ屋の、一番人気のチーズケーキがあるらしい!


「ねえ、パパ。今日、あの桜の木の下に麻子となつみと行ったけど残念ながら何もなかったわ」


ハンバーグをかじりながら、パパに話しかける。

あ、やっぱこれおいしい!思わず幸せな顔をした私を見てパパはちょっと笑った。


「まだ、その伝説があるんだなぁ。懐かしいな。」


お母さんの方を優しい表情で見つめている。そのパパの表情が昔から好き。だって、本当に優しくてお母さんを大切に想っているって子供の私にもわかるんだ。

だから、パパのことが好きになった。

私には、決して優しいお母さんじゃないけどパパはお母さんの良いところをたくさん知ってて、愛しているだろうなって。


「パパが学生の頃も、入学式の日は新入生はもちろんだけど二年生も三年生もみんな来てたなあ。だから、みおりも、まだ二回チャンスがあるぞ」


と、42歳には思えないくらいに可愛くウィンクをした。

あ、ダメ…またファザコンメーターが上がっちゃう。


「それに、誰か男の子がみおりを見てビビっと来てたかも知れないぞ」


え、そんなのも有りなの?


「かくいう、パパもお母さんが入学してきた三年生の時にビビっときたんだからな。」


と、初耳な話しだ。

お母さんの方を見ると、表情を変えずに「子供の前でやめて」とピシャリ。

そんなことを言われてもパパは優しい表情でお母さんを見てる。


あ、、もしかしてお母さんって所謂ツンデレってやつなのかな?

と思ってると、それを察してかチラリと睨まれた。


「でも、麻子となつみと三人同じクラスになれたし、担任の先生もすごく良い先生なんだ!それに、クラスもみんなもいい子ばかりで楽しくなりそう!」


話題を変えながらも、率直な思いで新しいクラスの話をした。

でも、イケメンが居るってのは恥ずかしくて言えないけどね。


「青春は一度きりなんだから、勉強はもちろんだけどクラブをやるのも良いし友達をたくさん作るのも、恋愛を楽しむのもパパは賛成だよ。」


少し間を置いて、


「ただ、高校生になったんだから自分の行動に責任を持たないとダメだよ。人を傷つけたり、人に言えないことはしちゃダメだよ。それに、僕やお母さんが悲しむことをしないって約束してね。」


パパの優しく真剣な思いを受けて、私は大きくうなずいた。


うん、明日から高校生活を思い切り楽しもう!って。


小島先生が顧問をしている陸上部に入ってもいいな。それか、運動部のマネージャーをしても楽しいかも!


それに、隣の席のイケメン佐藤稔や、柴山修也とも仲良くできたらいいな…。







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