後編
かくして、二人は水晶を携えて水の国の王に謁見した。
「王様、これがあなたの探していたものです」
そういって、リズは水晶を差し出した。
「おお、これが!さ、早く封印を解放するのじゃ」
王様は嬉々として、命令した。
それに応えて、リズは水晶を王女の前にかざすと、王女の前身が青白く光った後、クリスタルでできた彫像のように透き通った身体の水の精へと王女は姿を変えた。
「こ、これはなんということ!」
「これが、私の、本当の、姿。あなたが、見たいもの、私は、映した」
「私の王女はどこへ行ったんだ!」
「別にある。あなたが、大切に、すべきもの。」
それだけいうと、水の精は輪郭をぐにゃりとゆがませて、ぱしゃりっと水音を立てて崩れた。
後に残ったのは濡れた後だけだった。
王はがっくりと膝を落として、茫然と濡れた後を見ていた。
「王女の正体は水の精だったのね…」
「大臣に騙されて、湖の精の娘をかどわかして、王女に化けさせていたんだろうね」
「わしの、わしの王女が……」
「もうそろそろ、目を覚ましたら?王女なんていないよ。僕があなたのただひとりの息子……なんだから」
「認めん。認めんぞ!お前なぞ!わしの王女を返せ!!」
悲壮な叫び声をあげ、王はペトロに襲いかかった。
「やめなさい!」
すかさず、リズが助けようとしたが、その前にペトロが王を突き飛ばした。
「なぜ私を……僕を認めてくれないんですか。ずっと、あなたの側で暮らしてきたのに……」
「国を救うのは女王だけだ!女王でなくてはダメなのだ!王子など、いらぬ!」
「父上……」
「王女なきこの国は、もうおしまいだ。わしは国が滅ぶのは見たくない」
力なくつぶやいた王は、王宮の窓の外を見据え、駆け出し、飛び降りた。
水の国の暴君の、あまりにもあっけなく、悲壮な最期になった。
「やっぱり、だめだったね」
影を落とした声に、リズはどう返せばいいのか分からなかった。
「ペトロ……」
「いいんだ。国のためには、必要な犠牲だったんだ。
僕はこれから、あなたを見習って国のために生きることにするよ」
その後、帰ってきた王子によって、大臣は失脚し、新たな王を迎えた水の国は風の国を手を結び、両国史上最高の栄華を誇ることになる。
完結したけど、しばらく寝かせてから読み直して、修正します。
やっとひと作品書き終えられた……!