第99話 邪神解放
本日の家族会議の議題はラミーリュの連れてきた姉弟の事……ではなく、手狭になった我が家をどうするかだ。建て替えか引っ越しの二択しかないのだけれど。
とはいえ、私達が異世界へ帰れば、雪野家は五人になってしまうので、大きな家に建て替えるのは時期尚早。この家は残し、大きい物件に引っ越すのが無難であろうとなった。しかし、子供達が無理なく通学出来る範囲に丁度いい物件は見つからない。そこで、私は新たな提案をした。
「もう私がお金出すから、新しいの建てちゃおうよ。頑強な塀で護られたセキュリティの高い豪邸をね。今はしらふじがドローンで担当してるけど、三年後には私達居なくなるんだし。今でさえ男共の視線をひくのに、年頃のひいらぎちゃん……確実に狙われるよ? 星那ちゃんもかなりの美少女だし、那由多くんもスーパー美少年間違いなしだもの」
異議なし。満場一致で新たな自宅を建てる事となった。
というわけで、子供達の通学に無理のない距離で、売り出し中の広い土地を選定した。ただし私が手伝うのはここまで。どんな家を建てるかは、住むキョウカと先生達に丸投げである。完成には普通八ヵ月から一年ぐらい掛かるらしいけど、折角なので魔王の権力を使わせてもらうわ。もちろんあれよ、にんじんは宇宙旅行。
四日後、宇宙旅行からラミーリュ達が笑顔で帰ってきた。
現在、二階部屋は私の部屋にしらふじが同居し、元シロ君の部屋を星那とひいらぎが使っている。ラミーリュは主にひいらぎ達の部屋で寝泊まりしているのだ。
一階はキョウカ達夫婦の部屋なので、この家につむぎ達の住める部屋はない。そこで私の部屋を譲って、ラミーリュと三人で使ってもらい、私は子供達としらふじ本体の部屋へ住まう事にした。常時転送ゲートで繋がってるので、もう一部屋増えたようなものだ。しらふじも嬉しそうだしね。
茉莉花も宇宙に居た方が魔力的にいいようなので、結果オーライである。
こうして、新しい家が完成するまで、以上のような感じで住まう事となった。
その後、警察と公安に協力してもらい神原姉弟の母を捜し出し、育児放棄の意思を確認。正式に二人の戸籍を雪野家に移した。姉のつむぎは星那より一つ上の三年生なので、同じ小学校へ転入。弟のなぎは来年から小学生だ。ちなみに幼稚園には通っていない。本来はひいらぎも三歳から幼稚園に通えたが、変なのに目を付けられる事を極度に嫌うキョウカによって、四歳になった現在も通っていない。
「ねぇ、ラミちゃん。ひいらぎちゃんとなぎくんと三人で幼稚園に通ってみる?」
うお、めっちゃ嫌な顔をされたでござる。
「それより、キキョウさん……お願いがあるの」
「聞きましょう」
語尾が伸びない、視線も真剣そのものだ。
宇宙旅行から帰ってきた彼女は随分と雰囲気が変わっていた。
先程、つむぎ達を学校へ送り出した時の表情からは、母性のようなもの感じた。
「無理を承知でお願い。この首輪を外して欲しいの」
「ふむ。どうして外したいのか、説明してくれる?」
「あの二人の親になりたいの……旅行中、あの二人に頼られたり世話をしたり、とても楽しかったわ。正直、まだ親ってよくわからないけど、あたしはあの子達の成長を見届けたい。キキョウさんと死の契約をするので、首輪を外してほしいの……この姿じゃいやなの。ちいさいし、力も出せないし、いざという時、二人を護ってあげられないの」
驚いた。まさか食に始まり、この短期間でラミーリュの内面がここまで変化しているとは……首輪が無反応なので嘘はついてない。でも、嘘を付いてないだけの可能性もある。
死の契約をしたとしても、これを無効化する方法をラミーリュが持っている可能性は大いにある。ああ、疑い始めるとキリがないな……
ははは……キョウカに話したら鬼の如く反対するだろうなぁ。
私はラミーリュに魔導銃を向けた。
「デス・コントラクト」
夕食の時間。家族が勢ぞろいしたのを見計らい、私とラミーリュはこの平穏な食卓に巨大な爆弾を投下した。
ゴトリ。ラミーリュが見慣れた重厚な代物をテーブルに置いて見せた。
キョトンとするキョウカ。子供達は不思議な顔をし、先生は目を丸くした。
「ななな…なんで首輪がぁぁぁっ?」
驚きを隠せないキョウカ。魔装を召喚すべきか両手をわなわなさせている。
しらふじも髪を逆立たせプルプルしているが、魔導銃を使ってるので、当然首輪を外した事を知っている。
「キ……キキョウが取ったの?」
「うん、驚いた?」
「驚いた? じゃねぇぇぇっ!!」
「まぁまぁ、かわりに死の契約で縛ったから大丈夫。龍王にも効果あるんだから、ね?」
「相手は龍王を操る格上の邪神だぞ。とてもじゃないが安心できない」
「うん、そうかもしれない」
実際、複数のコアを生み出せる彼女なら、何とでもなるかもしれない。
ラミーリュは立ち上がると、突然服を脱ぎだし裸ん坊になった。そして、淡く発光しながら体を二十歳ぐらいまで一気に成長させてゆく。まるで蝶の羽化を早送りで観ているが如く、とても幻想的な光景だ。大人になった彼女の姿はとても神々しく、みんな息をするのも忘れ見入ってしまう程だ。人間離れした美貌は言うに及ばず、おっぱいがひっじょーに素晴らしい。もはや芸術は爆発である。
背格好は私ぐらいだが、胸はひとまわり以上大きくて迫力満点である。
オノマトペならどう表現するのが適切であろうか。ぼばーん?
なんだかヴァルバロッテのおっぱいが妙に懐かしくなったわ。
そんなすごいおっぱいを前に、みんなポカーンである。先生はガン見である。私はさっき見せてもらい、おっぱいもさわった。
ずぶずぶとね、指が埋もれるのよ。すんごいエロいけれど、白鬼ごと飲み込まれた時の事を思い出すと、背筋がぞわわっとした。
「もう二度と人族にご迷惑を掛けません」
そう言いながら、深々と頭を下げる大人ラミーリュ。
「ラミちゃん、服着なさい」「あ、はぁい」
一瞬、肌が波打つと体表が変質して、裾レースの金キャミソールとホットパンツ姿になった。これはまたエロいなぁ。確かこれと同じ幼女服持っていたよね。
改めて全員が席に着くと、眉間にしわを寄せたキョウカが話し始めた。
「キキョウの決断だし……私も信じようと思う」
「ボクも信じるよ」
「だがラミーリュよ。これだけは肝に銘じておけ」
「なにかしら」
「お前が再びやらかした時、キキョウは責任を取って自害するぞ。キキョウはその覚悟を持って、お前を信じ首輪を外したんだ」
ハッとして、私を見るラミーリュ。
そこまで考えが及ばなかったのだろう。無論、私もだ。
「ええ……この子達に恥じない生き方をするわ」
夕食中、ずっとウズウズしてた子供達。
食事中にはしゃぐのはいいが、騒いではいけないのが雪野家ルールだ。
食事が終ると居間に移り、我先に大きくなったラミーリュに抱き着き、質問攻めにした。
「ラミちゃん、おとなになったぁーっ! おっぱいさわっていい?」
「はいどうぞぉ(ぽゆゆん)もう大人でも子供でもぉ、ビルよりも大きくなれるわよぉ」
「ほわぁぁぁいいによい。ママたちよりきょにゅー」
「本当にラミちゃんって、外国の町を滅ぼした邪神なの?」
「星那ちゃんたら信じてなかったのねぇ、最初からそう言ってるわよぉ?」
「だって、あんなに小さくて可愛いんだもん」
ひいらぎが前からおっぱいに顔をうずめ、星那が後ろから抱き着き、頬をすりすりさせている。つむぎとなぎは、出遅れたというより、突然大人になった彼女に近寄る事を戸惑っているようだ。食事中、ラミーリュの横に座る二人はかなり緊張しているように見えた。場慣れしてない普通の子には、ショッキングすぎる光景だったかもしれない。
「あ……つむぎ、なぎ。あたし、この通りの化け物だし怖くなっちゃったかしら」
少し寂しげな表情のラミーリュに、二人は勢いよく抱き着いた。
「ぜんぜん怖くないです! 大好きだよっ!」
「ぼく、ラミちゃんとけっこんするーっ!」
どうやら杞憂に終わったようだ。
その後、ラミーリュは大切な話があるからと、二人を抱いて月空へと舞うのだった。
「なぁキキョウ。本当のところどうなの?」
「ラミちゃんの事?」
「本当に首輪外してよかったのか?」
「うん、大丈夫だよ。邪神なんて呼ばれてるから身構えちゃうけど、実際は全然そんな存在じゃあない。あらゆる手段を講じ、人間を食べる事に特化したスライムだよ」
「……十分すぎる程の邪神じゃん」
「あははは、でも今は違うよ。もう人間は共に歩むべき相手だって思ってる。そして子供達を保護した事で、子育てをする喜びを知ろうとしてるの」
「ああ、なるほど……私も家族を得て随分変わった」
「だからもう大丈夫。ラミちゃんはヴィンティリスへ帰ったら、本物の女神になるよ」
「キキョウはすごいな……」
「え、惚れた? チューする? 最近欲求不満気味だし、それ以上の関係もウエルカムだよ? 元自分の体とエッチって、なんか背徳的で倒錯的で興奮する――」
「チョップ!」
「んごっ!」
閑話
「キキョウさぁん、こっそり何の呼び出しぃ?」
「ラミちゃんさ、私の事をずーっと食べたがってたんだよね?」
「ええ、でももう食べようとはぁ、ぜんぜん思わないわよぉ?」
「ちょっと食べてみる?」
「えっ……それってぇ、性的な意味でぇ?」
「それも吝かではないけど、食事的な意味で。はい、左腕食べていいよ」
「は………意味わかんないんですけどぉ」
「時々、私に食欲的な視線向けてるでしょ」
「え、バレてるぅ? ついつい見ちゃうだけでぇ、もうその気は本当に無いのよぉ。ほらあれよぉ、男性がついついおっぱい見ちゃう的なぁ?」
「私の存在はおっぱいかい。ほら、据え膳だよ。食・え!」
「ゴクリ……じゃっじゃあ……」
「うっぎゃぁぁぁぁっ、腕がっ腕が消化されてゆくぅぅぅっ!」
「ど……どうだった?(鼻たれ涙ぼろぼろ)」
「なんか普通……メエ肉やモウ肉の方がずぅっと美味しい……」
「うん、そんなものだよ」
「なんだかぁ……長年追い求めた夢を打ち砕かれた気分よぉぉ」
ニヤリ――計画通り。
ここまで読んでくれて、ありがとう。(キキョウ)
もう99話ね。もうすぐこの物語も終わりかぁ。どんな最終回になるんだろう。
ファンタジーからスペオペになるぐらいだから、きっと普通じゃない終わり方を考えてそうで怖い。ゲロ吐いて終わるとか。
それか、すごく打ち切りっぽいやつ。俺たちの戦いは続く! みたいな。
あとは、適当にお茶お濁して新シリーズ突入ね!
…………
……
ツッコミが無いわね。まさかマジ?




