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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第94話 出産

「星那ちゃん、このイチゴのミルフィーユ美味しいよ。ほらほら」

「もう、お母さん。こんなにいっぱい食べたら、夕ご飯入らなくなっちゃうからぁ」

「あきれた……星那にまでお母さん呼びさせてるなんて」

「いいじゃない、キョウカの娘は私の娘よ。ねぇ星那ちゃん、異世界に興味はなぁい?」

「あなたねぇ…………うぅっ!」

「キョウカ?」

「ママ、どーしたの?」

「ママ?」

「う……生まれる……」


 その日、雪野家に長男が誕生した。名を那由多。濃灰色の髪と桃色の瞳の可愛らしい男の子だ。将来は間違いなく、ものすごい美少年になるであろう。


 私の方も産み月である十二月が近付いてくると、体調に変化が訪れた。

 このお腹には双子を宿しており、一人は鬼人族の男の子なのが判明している。

 そしてもう一人はなんと卵なのだ。そう、龍の卵である。

 お腹の中で男の子が卵を抱っこしている様子を病院のエコー検査で確認したよ。

 現在、その卵っ子が出産に向け、すごい量の魔力を欲しているのだ。


 おかげで私の魔力量は普段の二割程度。常時大量に吸われっぱなしで、結構きつい。予定日より少し早いが大事を取って入院する事となった。

 二人部屋を用意してもらい、ユリも付き添いで一緒だ。


「キキョウ、大丈夫?」

「うん……さすがクロちゃんの子だわ。干からびそう」

「何か食べる? 飲む?」

「カエルの卵飲む……」

「ダメだよ、妊婦にバジルシードドリンクは禁止。これは私が飲む。スイカ味うめぇ」

「そんなゴムタイヤ……」

 

 ノエル経由でクロに訊ねたところ、卵は間違いなく超位龍であろうとの事。

 その昔、ノエルを出産した聖女ミモリもこんな感じだったらしい。

 前世の私が生まれる、ずっとず~っと前の事だ。

 入院して数日後、陣痛が始まり、その間隔が短くなってきた。いよいよ出産の時がやってきたようだ。キョウカのお産に立ち会わせてもらったので、心構えは出来ている。先生もいるし不安は全くない。安産の加護もあるしね。

 分娩台に座ると「ひっひっふーだよ!」そばでユリが声をかけてくれる。

 こうして、前世で五十人以上産んだ私の今世初のお産が始まった。最初に生まれた男の子は、ひっひっふーするまでもなく、スポンと私に顔を見せてくれた。

 ふふふ、はじめまして、私の宝物……逢えるのを楽しみにしてたよ。

 次は卵っ子の番。さぁ出ておい――


「うっ……やばっ!」

「キキョウ?」「魔王様、どうされました?」「キキョウ君?」

「あとはたの……む(ガクリ)」


 私が干からびる勢いで、卵っ子が魔力を吸いはじめたのだ。あ、でも産まれる。

 卵っ子が産道を通るのを感じながら、私は魔力枯渇で意識を手放した……


 …………

 ……

 なんだろう……うるさいなぁ。ここは病院だよ、他の患者さんに迷惑だよ……

 なにこの匂い……血だ。血の匂いがする。


 ……キョウ……キキョウ! 誰かが私を呼んでいる。


「起きろ、キキョウ!」

「キキョウちゃんてばっ!」

「うわっ、なにっ?」

「キキョウ。いいか、落ち着けよ……」

「えっなに………………ユリ?」


 キョウカとしらふじの視線を追うと、床にユリが血まみれで横たわっていた。

 一目でわかった。ユリが……死んでいる。

 銃創だ。ユリの体にいくつもの銃創がある。飛び起き、震えながらユリに触れた。まだほんのりと温かい。私はそのままユリの体を魔法珠に収納する。

 私の行動にハッとするキョウカ。


「ユリはいつ撃たれたの?」

「ギリギリ三十分前……だと思うわ……ごめん。そこに思い至れなかった」


 キョウカが強く悔やんでいる。それは仕方ないって。ギリギリか……


「……何があったの? 他の被害は?」

「卵を出産して、気を失ったキキョウを部屋に移動した所を襲われたようだ」

「ユリちゃんは身を挺して、キキョウちゃんをかばったの。犯人は逃走時にも銃を乱射して、何人か怪我人が出たよ」


 ユリには護身の腕輪を装備させていた。即死レベルの攻撃を無効化させるやつをだ。しかし、無効化できたのは初弾だけ。銃を連射されては防ぎようがない。


「キキョウ、落ち着いて聞いて。カイくんは無事よ。でもね、卵を奪われたの」

「……キキョウちゃん?」


 一瞬、呼吸が止まった。鼓動も止まった、そんな気がした。


「大丈夫。今の私……驚くほど冷静みたい。それで犯人は?」

「今、追尾している。高速道路を皇都に向け移動してるよ……すぐ奪還する?」

「……いえ、先に怪我人を治療するわ」


 私は魔法珠から魔力たっぷりの翡翠塊を二つ取り出し、顔をしかめながらゾゾゾっと魔力を補充すると、魔導銃を側頭部に向け引き金を引き、ヒールをかけ立ち上がった。ひさしぶりに軽くなったお腹に違和感があるが、いつもの白ローブを羽織り、この襲撃で怪我を負った人達の元へ向かった。

 治癒を終えると、私の宝物カイくんを優しく抱っこした。ちなみに命名はクロである。第一子は男女関係なく、カイと名付ける事にしていた。カイの髪は灰色。私の角と同じ位置に小さな膨らみがある。瞳の色はまだ不明だ。


 カイはまだ目が開いていないが、懸命に何かを探す様に両手を動かしている。きっと卵っ子を捜しているのだろう。実はまだ性別が不明なので卵っ子には名を付けていないのだ。こちらの命名権は私にある。


「キキョウちゃん……ごめん。まさかこんな事が起こるなんて……ボク、自分の力を過信しすぎてたよ」

「いやいや、それを言うなら私の方だわ。まったくの無警戒だったんだもの。それで犯人はどこの誰クソ野郎さん?」

「うん、ユーラシア連邦の工作員だった。何度か車を乗り換え偽装しまくって、最後は弁当屋の配達員のフリして連邦大使館に入ったよ」

「へぇ…………魔力が全回復したら、あの子を迎えに行ってくるね~カイ君。ちゅっ」


 空がバタバタ騒がしい、ヘリでユリの叔父太田と芦田総理が血相を変えてやって来た。

 他国の工作員に襲撃され、子を攫われたのだ。二人共土下座する勢いで謝罪してきたが、私はそれを止めた。むしろ可愛い姪っ子を失った太田に対し、私の方こそ土下座ものである。


「ごめんなさい……私のせいで、ユリを殺されてしまったの」

「いえ、あの子も本望だったと思います……それで、ユリはどこに……」

「ここに」


 ユリのいる場所。右腰に輝く紫水晶の魔法珠を太田に示し、そして魔法で蘇らせる為、ラヴィンティリスへこのまま連れてゆくと告げた。実はこの世界で唯一使えない魔法が死者蘇生なのは、この世界に来てからすぐ、しらふじに確認済みだ。


「死者蘇生……ではせめて、最後に顔を見たいのですが」

「ごめんなさい、出せないの。三十分の壁があるから」

「どういう事ですか?」

「死者蘇生魔法は死後三十分を過ぎると使用できないの。この中は時間が止まっているんだけれど、ユリを入れたのが三十分ギリギリらしくて、大事を取って……ごめんなさい」

「わかりました。どうかユリをよろしくお願いします」

「叔父様、ありがとうございます。ユリの事を生涯大切にすると誓います」


 部屋に沈黙がおとずれ……そして、それを破る私。


「総理、魔力回復しだいユーラシア連邦大使館へ、カチコミかけますね」

「はい、政府としても今回の件は看過できません。魔王陛下のお心のままに」


 私が獰猛な笑顔を見せると、みんな背筋をぶるりと震わせた。

「病院で殺気を洩らすんじゃない!」キョウカに怒られたでござる。


「でもキキョウ。もし卵が人質にされたり、うっかり割れでもしたら……」

「うん、それは大丈夫。超位龍の卵は伊達じゃないよ」


 翌日。魔力満タン、パイロットスーツに着替え準備万端だ。キョウカも鬼神羅雪で同行する気満々だったが、カイの事をお願いした。


「さてと、壱式と弐式、どっちで殴りこもうか……やっぱ人型の弐式かな」

「いや、キキョウちゃん。ここは白鬼参式の初お披露目と洒落こもうよ」

「マジか」


 突然影が差したので、ベランダに出ると白く大きな物体が家の上に浮いていた。

 全長三十メートル以上あろう――戦闘機だろうか。コックピットハッチが開いたので、二階の屋根に上がり、機体の先端にトンと飛び乗った。そしてトトっと歩き、ハッチ奥に見えるシートへと座った。コックピットブロック後方には、壱式よりもはるかに大きなX翼がおごられ、翼の下には二連装ガンランチャーカノンと、大量のミサイルポッドが配されている。そして、後方に伸びる二機のスラスターがとても巨大で大迫力だ。

 白鬼参式は腕もなく完全な飛行機械に見える。もはや鬼の要素が何ひとつない。


「何これ……もしかして下半身メカ? 合体して巨大ロボになるのかな」

「えぇーっ、なんでわかったの!? こっちをメインに運用するから、見た目は普通の飛行兵器な感じにデザインしたのに!」

「マジか……ひょっとして人型になると、全高五十七メートルで重量はごひゃ……五十五トンぐらい?」

「ななななんでそこまでわかっちゃうの。鑑定スキル持ってないよねぇっ!?」

「日本人ならみんな知ってる……かも? 歌もあるし」

「ぐっ、とんでもない国だね。まぁいいや、卵ちゃんを取り戻しに行こう」

「うん、そだね」


 他の白鬼よりずっと広いコックピット内部をチェックしながら、大きなシートをお尻でぐりぐり。操縦グリップを握り、フットペダルのビンディングに足を固定。目の前に「うえるかむ」いつものSDしらふじが表示され全方位モニターが起動。足元にお隣のおばちゃんがポカーンと、こちらを見上げている。うるさくしてごめんね。


 深呼吸して耳元に触れ、ヘルメットのキャノピーを閉じた。


「んじゃ、行こうか。カイくん待っててね、すぐ卵っ子連れ帰るから」


 甲高い金属音を響かせ、白鬼参式が青空へと飛び立つ。

 久しぶりなので感覚を取り戻す為、アクロバットまがいの飛行をしながら皇都へ向かった。壱式程のキビキビ感はないが、参式は圧倒的パワーが魅力だ。


「グルメがうなるぞ、そりゃ飛ぶよ。その名は超~便利ロボ♪」


 アクセルのレスポンスも良く、気持ちよく加速する。思わず歌ってしまった。

 途中、皇国空軍主力の第六世代戦闘機EX-35が現れ、パイロットがこちらに敬礼をした。私も機体を左右に振って応える。しらふじが空軍基地に飛行予告をしてたようだ。


「さてと……あっちね」


 ユーラシア連邦大使館の位置は、ナビなど見ずとも直感的に感じられる。

 卵っ子と魔力のラインが繋がっている感覚があるのだ。それを辿ってゆく。


 皇都上空に入り、高層ビルの林を縫うように飛び、連邦大使館ビル正面に参式を空中制止させた。ビル内の人々が驚きの表情でこちらを見ている。

 私はコックピットハッチを開き、白鬼先端にトトっと姿を現した。ヘルメットの側面に触れ、キャノピーを開き、素顔を露にする。そして、険のある澄んだ声がビル街に響く。


『ユーラシア連邦に告げる。出産直後の私を襲撃し、さらった子を今すぐ返しなさい。そして、私の恋人を射殺した落とし前をつけてもらう。でなければ宣戦布告と受け取り、このビルを破壊し、衛星軌道上からの艦砲でユーラシアの首都大京を砲撃、殲滅する』


 静まり返る大使館ビル。視線は感じるが直接の反応はない。

 強い口調で無視出来ない内容を告げたつもりだったが、ガン無視された。


『この私、魔王キキョウとの戦争を望むのなら、受けて立とう。トランスフォーム!』


 あきれ顔の魔王がコックピット奥へ消えると、白鬼参式が立ち上がるように上を向きながら下半身メカへと変形してゆく。スラスターとして展開してた装甲が閉じ、脚部へと変形。同時に上空より現れ出た機体が両腕を広げ、頭部がせり出し上半身メカへと変形してゆく。

 そして、コックピットブロックを上半身メカ胸部奥へ格納する様に合体。ぐるんと腰部から下が180度回転しながら、膝下が変形し爪先と踵が現れた。最後にフェイスマスクが左右へと開き、白鬼参式人型モードへの変形完了である。


 大使館ビル前の庭へ巨大ロボが降り立つと、周囲のビルや歩道のギャラリーから大歓声が上がった。


【機体名】白鬼参式びゃっきさんしき

【搭乗者】キキョウ・ユキノ

【寸 法】全長33m、全幅26.6m、乾燥重量34t(飛行モード)

     全高57m、全幅24.6m、乾燥重量55t(人型モード)     

【装 甲】200~500mmクリアメタル装甲

【主動力】ハイペリオンドライブ(亜空ケージ収納)

【推進機】86式反重力スラスター×16

【武 装】二連大口径ガンランチャーカノン×2

     肩部バルカンファランクス×2、腰部レーザーバルカン×2

     クリアメタルソード、可変式クリアメタルシールド

     重粒子ビームライフル、200mm物理徹甲弾、他各種弾頭。

     120mm24連装ミサイルファランクスユニット×8

【備 考】頭部をコックピット化すべきか拡散粒子ビーム砲にすべきか

     それが問題だ。現在、ハイペリオンライフルを開発中だよ。

     科法世界仕様なので、ラヴィンティリスに戻ったら仕様変更が大変♪




 いつも読んでくれて、ありがとうございます。(キキョウ)

 まさか起きたらユリが死んでいるなんて思わなかった。

 なぜか思いの外、自分が冷静なのに驚いたよ。これはあれか、転生がまかり通る世界で暮らし、死者蘇生なんて魔法が使えるものだから、死に対して鈍感になっているのだろうか。いや……それもあるけど、ユリを確実に蘇生出来るって確信があるせいだろう。地球では死者蘇生が使えないと、しらふじに知らされてたので、あっちに戻るまで蘇生は無理。帰るまではどうにもならないので、慌てても仕方ない。

 今は卵っ子の奪還に集中しよう。もう名前も考えてあるんだからね。

 アニソン唄ったのはちょっと不謹慎だったかなぁ。

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