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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第93話 太陽系クルーズ 後編

 月に降下すると、早速サプライズイベントが待っていた。

 月面へフィールドを展開し、宇宙服なしで月の大地に直接降り立って、月の石拾いをするという、とんでもないサプライズである。これはしらふじが同行したからこそ出来るイベントだ。ちなみに月面の放射線量は地球の約二百倍。しらふじが中和してるので、全く人体に影響はない。

 同行してる天文学者達の奇声が聞こえる中、地球よりずっと低い引力を感じながら、嬉しそうに拾った石を眺め、カバンにしまう子供達。

 子供達とは言ったが、招待したのは未成年全てなので中高生も当然いる。

 私のすぐそばに、中身のたっぷり詰まった重そうなカバンを持ち歩く少年がいた。


「ねぇキミ、そんなに拾ってどうするの?」

「あ、魔王さま。クラスのみんなへ、お土産にするんだっ!」

「そっかぁ、きっとみんな喜んでくれるね」

「うんっ!」


 輝くようないい笑顔だ。彼の声が周囲にどんどん伝播してゆき、石に興味を示さなかった子まで石拾いに精を出すのであった。なんだか突然、月面が潮干狩場になったみたいだわ……すると、いい匂いを漂わせた物売りが現れた。しかもバリトンボイスのいい声だ。


「月面焼きぃ~まんまるぅ美味しい月面焼きは本日ぅ無料だよぉ~」

「おおぅ、商魂たくましいね。十個ちょうだいな~」

「まいどぉ~! うおっ、魔王様!」


 ちなみに今回は私のおごりで食品は全て無料だけど、お客の端末を通さない配布は利益を申請できないのだ。なので配布時にピッとやる必要がある。

 こっこれは、うちの地元だと大判焼きと呼ばれているやつだわ。

 うっかりその名を誇示しようものなら戦争が起きるという、名称が全国に三百以上もあるヤバい和菓子である。

 大判焼きを月に見立て、杵を持つかわいいウサギの絵が焼印されている。中には小倉あんと求肥が入っており、中々に風情のあるお菓子だ。

 ちなみに火星では火星人焼き、木星では木星帝国焼き、土星では環に見立てた焼きドーナツが売られるのであった。


「せなちゃんみて~」

「うわ、ひいらぎちゃんの石、きれいだねぇ。私のはこれだよ」


 月面焼きを仲良く半分こした二人も、気に入った月の石を見つけたようで、とてもご満悦である。

 今回、月面を踏み荒らしてしまう件について、前もって国連や国際天文連に問い合わせたが、宇宙条約に抵触しないので特に問題はなかった。

 むしろ、金ならいくらでも出す、自分達も連れてってくれぇ~と懇願されたので、天文ガイドする事を条件に、毎回数百人の天文学の関係者に参加してもらう事になった。今日も千人程が参加してくれている。実は高名な博士も混じってるので、お話が訊ければとても幸運かも。ちなみに各々独特なコスプレとたすきが目印だ。


 一時間程月面に滞在すると、次の観光スポットである水星へ向け、さざんかが動き出した。水星に到着すると、衛星軌道上で水星の説明が始まる。

 天文学者のアナウンスで、惑星の名の由来から始まり、大きさや質量、自転公転の周期などを小さな子にも解かりやすく伝えてくれた。

 真剣に聞き耳を立てる子供達。近くに立ってる天文学者に質問する子も多く、将来が楽しみである。


 惑星の配列的に次は太陽、その向こうにある金星、火星、木星と順番に巡っていく。特に火星は大気圏内へ降り、月同様大地に降り立ったり遊覧飛行を楽しんだりと、たっぷり時間を掛けた。ちなみに半日おきにカプセルベッドで一時間眠っているため、みんな体調は万全である。木星までの移動は時間が掛かるので(本当はすぐ到着できるが、旅行の情緒的に)食事やお買い物をしてもらったり、お楽しみイベントを各フロアで開催している。


 ツアーの二日目、地球の十一倍もある木星に到着すると、ぐる~っと一周し、南半球にある巨大な大赤班へ向かった。てっきり私は穴か何かと思っていたのだけれど、上昇気流で盛り上がった巨大な大気の層だったのだ。

 地球のような鉱物惑星と違い、木星は陸地の無い水素やヘリウムのガス惑星である。さざんかはガスの海すれすれを飛行し、みんな異世界のような絶景を楽しんだ……と言うかこのツアー、もはや絶景しかない。せっかくなので個性に富む四つのガリレオ衛星もじんぐり巡ってゆく。


 次の土星では氷や岩石の粒子で構成された環に突入を試みた。防御フィールドを展開し、ゆっくりと進んでゆくさざんかとしらふじの二隻。環の厚みは場所によってはわずか数十メートルしかないので、地球から見て土星の環が真横になった時、環が消えて見えるそうな。土星は最も衛星数の多い惑星なので、環だけでなくタイタンやエンケラドゥスも巡る事にした。


 ☆魔王キキョウちゃん@Sirafuji 30分   …

 今、宇宙船さざんかとボクは土星の環で遊覧中。おやつは環に見立てた焼きドーナツ。その名も土星の環ドーナツ。そのまんまやんけ! 少しは捻れよ! あ、捻ったらツイストドーナツになっちゃうね。でも氷の粒のようなクリスタルシュガーがキラキラしてて、すごく綺麗で美味しかったよ。

 返信2千 リポッポ一億4600万 いいね2億1300万


 木星、土星、天王星、海王星とガス惑星が続き、このツアーを飾る最後は迷いの星、冥王星。大きなハートマークが特徴の星だ。名物はハートの焼印がかわいい冥王星饅頭。

 現在、冥王星は準惑星に格下げされてしまったけれど、長年太陽系惑星の一つとして愛されてきたのだから、やはりルートに入れようという事となったのだ。

 実際、冥王星は月よりずっと小さく、エリスやマケマケなど、冥王星型天体は太陽系にいくつも発見されている。しかし近年、やっぱ惑星として認めるべきだという声も出ているらしい。


 ツアー最後の地としては、少々寂しい気もする。口には出さなくとも、誰もがそう感じているようだ。テンションマックスハートなのは、ツアーガイドとして同行してる天文学者達ぐらいのものだ。ほら、あそこで何故か腰みの姿で踊ってる、変なおっさんは現代の天文学の父と呼ばれてる御仁だよ。


『じゃあみんな、地球に帰るよー』


 えぇ~……その言葉に、みんなテンションだだっ下がりである。


『ツアー最後のサップラ~イズッ!』


 うつむいてた子供達が顔を上げ、その言葉に瞳を輝かせた。これだけ持ち上げて落としたら、脳天チョップだからね。


『なんと、今回だけの超特別サプライズ。地球へ向けて、ワープするよ!』


 子供達が歓声を上げた。おっさん達も野太い歓声を上げた。


『現在の冥王星から地球まで、光の速度でおよそ六時間かかるけれど、超空間航行なら、なんと三分で到着しちゃうんだ。ワープ開始は五時間後。みんなそれまでに、最後の食事とお買い物を済ませておこうねっ!』


「はーいっ!」みんな大喜びで、家族とレストランやショッピングフロアへ向かうのだった。


「しらふじ、やるじゃん」

「だってさぁ……今回の惑星を巡る順番、絶対ミスったよね」

「うん、子供達の微妙な反応がもうね。テスト航海は大絶賛だったけど、よくよく思い返せば、喜んでたの天文学者達ばっかだったよね」

「次回から大人気だった木星か土星を大トリにしようよ」

「だねぇ~」


 その後、私達は展望レストランに向かい、しらふじとユリ、両手に花でゆっくりとツアー最後の食事を楽しんだ。


「ユリ~今回セリフなかったねぇ」

「言わないで」


 そして、すぐ横の席で、雪野家も星那と一緒に食事を始めていた。


「星那ちゃん、とても大切なお話があるの」

「はい、先生」

「星那ちゃん……ひいらぎちゃんの本当のお姉ちゃんにならない?」

「え……」

「私ね、あなたのママになりたいの」


 星那の小さな手を優しく握るキョウカの申し出に、目を丸くする星那。


「せなおねーちゃん!」

「僕もキミのパパになりたいんだ」


 小さな肩を震わせながら、星那は渾身の勇気を振り絞って質問をした。


「わたし……雪野…星那になっていいんですか?」

「うん、おねがい」

「おねーちゃんになって!」

「もちろんだよ」


 ぽろぽろ涙を溢れさせる新しい家族を、母と妹がぎゅ~っと抱きしめた。


「ああ、ようやく星那を私の宝物にする事ができた。ああ、かわいい。かわいいよ星那」

「ひゃん、くすぐったいです」

「せなおねーちゃん、かわいーよ~」

「え~ひいらぎちゃんの方がかわいいよぉ」


 涙が乾き落ち着いた星那は、新たな家族に懸念を伝えた。

 当然だが元保護者の事だ。確かに連中が大反対するのは、火を見るよりも明らかだろう。


「ねぇ、星那ちゃん。どうして私と魔王が知り合いで、同じ顔をしてると思う?」

「それは……不思議だなって思ってました」

「実は私ね、魔王の親戚で、異世界から来た勇者なの。武力も権力もたっぷり持ってるから、あなたは何の心配もしなくていいのよ」

「せん…ママが異世界の……勇者……」

「去年、石橋家の自動車が潰れたの覚えてる?」

「はい……すごく潰れてました」

「あれねぇ、私がやったの」


 鳩が豆鉄砲な表情をすると、星那は新たな家族に向け、輝くような笑顔を披露するのであった。

 


『戦闘空母しらふじとルート同期しました。さざんかの全ハイペリオンドライブ臨界へ、超空間ゲートオープン。本艦は超空間航行へ移行します。3…2…1…ハイパードライブ開始』


 子供達の見守る中、さざんかとすぐ隣を航行するしらふじの前方に、鏡のように二隻を映す超空間ゲートが現れた。この太陽系ツアー最後の大イベントである。しらふじが先にゲートへ潜り、子供達の大歓声の中、さざんかもゲートへ突入してゆく。


『現在、本船は超空間を航行中です。地球への到着はおよそ三分後になります』


 すぐそばを並走するしらふじを見ると、後方に虹のようなリングを三重に発生させており、とても美しく幻想的だ。そしておよそ三分後、宇宙空間がひび割れ、砕け、飛び散るガラス片のようにキラキラさせながら通常空間へ二隻が出現した。

 目の前には青く大きな地球が浮いている。すると……


 地球か……何もかも、皆懐かしい……


 突然、おっさん達がハモった。

 しかも、ぽろぽろと盛大に涙を流している。

 更に、同じように泣いてる御同輩と視線が合うと、皆そろって拍手を始めたではないか。

 そして、この状況の意味がわからない人々も、この妙に生暖かい拍手に混ざるのであった。


 なんぞこれ……ここはフィナーレで、惜しのみない爽快な拍手するんじゃないの?

 ほら、キョウカも涙する夫に向け、何ともいえない表情をしている。

 ひいらぎちゃんは、キャッキャと無邪気に拍手中だ。まぁいっか……

 こうして、記念すべき第一回太陽系クルーズは、無事終了するのであった。



 さて、例の石橋一家のその後を伝えておこう。

 結果から言うと、宇宙旅行から帰った星那は、二度と石橋家に関わる事はなかった。

 石橋家のお子さんには申し訳ない気もするが、カプセルベッドから目覚めた一家は、月へ行くウキウキモード全開であったが、気が付くと自宅の前に転送されていた。

 しかも家には星那の姿がどこにもない。

 石橋夫婦が困惑していると、警察関係者がドカドカと大挙して押し寄せてきた。


「旧姓相馬星那さんは保護済みです。あなた方夫婦には保護責任者遺棄罪及び児童虐待の容疑で逮捕状が出ています。署にご同行ください。なお抵抗した場合、裁判なしでこの場での処刑が認められています」

「なっ処刑だと? そんなバカな事があるか、ここは法治国家だぞ!」

「今の皇国は郷魔国の属国、魔王陛下のお心が法律であらせられる。未来ある少女を蔑ろにする者に、キキョウ陛下は大層ご立腹である!」


 制服がはち切れそうなムキムキマッチョな警官が夫婦を怒鳴りつけると、音も無くふわりと現れた白い騎士ドローンが夫婦に向け、レーザー剣を構えた。


「「ひぃいぃぃっ!」」


 その後、石橋夫婦は署でムキムキに囲まれながらこってりと絞られ、星那の親権を手放す同意書にサインをした。夫婦が使い込んだ分を含め、財産を全て返却する事で、かろうじて逮捕は撤回されたそうな。

 ちなみに後日、改めて石橋一家とその知人の子を太陽系クルーズに招待した。さすがに子供達が不憫に思えたのでね。ただし、ムキムキマッチョの監視付きだけれど。



いっいつも読んでくれて、ありがとうございます。(星那)

 私、雪野星那になりました。嬉しい、嬉しいよぉ。

 お父さん、お母さん。私、新しい家族のもとで幸せになるね。

 えへへ、すごく可愛い妹もできちゃった。ああ、ひいらぎちゃん可愛いよ~っ!

 あとね、新しいママは勇者だし、すごくびっくりしたよ。

 新しいパパも、とっても優しくて、お料理が上手なの。

 でも土下座はイマイチだって。

「ねぇ、星那ちゃん」

 はい、魔王様。

「私の事は、お母さんって呼んでほしいな」

 え? 魔王様がお母さん?

「うん。あなたのママと私は双子みたいなものだし、家族だから、そう呼んでくれると嬉しいな」

 はい、わかりました。えっと……お母…さん?

「かっ……かわええええっ!」

 むぎゅっ。


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