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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第75話 龍王ファフニール

 さぁ、リリィを盛大に祝福して、この理不尽な祭りに終止符を打とう。


「リリィメレル、優勝おめでとう! 見事な戦いぶりでした。優勝者として、あなたは名誉の他に何を望みますか?」

「はいっ! 賞金十億スフィアを望みます!」

「よろしい、では賞金を授与する」


 舞台上で、リリィが金貨の大袋を掲げると、大歓声が沸き起こった。

 周囲には、大会に参加した家族達が集まり、リリィに惜しみない拍手を贈るのだった。


 こうして誰が開催したか不明のまま、いかがわしい武闘大会が終了した。


 ゾクゥゥ……突然、背筋が凍るような死の気配を感じた。

 クロとノエルが私の身を護るように前に出る。

 一瞬狼狽えながらも、勇者っ子達も全員魔装を召喚し、武器を構えた。


「ほう、そやつが優勝者か。ならばそのウサギ女を殺せば、ワガハイが真なる勝利者。魔王キキョウはワガハイの物となるのだな」


 それは、黒い少女だった。

 ただただ黒く、肌も、髪も、黒以外に例えようもなく黒い。唯一獰猛に裂けた口だけが血の色を湛えている。そして、やたら白目だけが目立つ、虚無の瞳がこちらをじぃっと見つめていた。


「誰かな。ただ者じゃないよね……神様のたぐい?」

「龍王ファフニールですよ。ラヴィアル大陸の引きこもり龍王です。財宝にしか興味がなく、穴ぐらで黄金に埋もれ暮らすお前がなぜここにいる」

「ワガハイが魔王キキョウを得るが為、お膳立てした大会ぞ。ワガハイがいて至極当然である」

「じゃああなたが私のフリして、神名契約したっていうの?」

「?……些末な事は忘れた。さぁ勝負だウサギ。狩り殺して、キキョウをワガ物としよう」


 一瞬、なにやら不思議そうな顔をして、すぐ殺意をむき出しにするファフニール。

 ペタリと耳を畳み、震えながら身構えるリリィ。


「ヘムエルヒリア……お前がこの娘を殺しても、キキョウはお前の物にはならない。キキョウはこの場の皆が愛する恋人であり、あるじであり、私の妻だ」


 クロに呼び捨てにされるの、よいね。いや、今は喜んでる場合ではない。

 クロの言葉で龍王ファフニールが放つ死の気配が増した。


「クロミエルはずるい!」

「何がずるい」

「財宝に目もくれぬ頭のおかしい龍のくせに……いつの間にか世界で最も価値ある宝石を手に入れた! ずるい! ワガハイも欲しいっ!」

「そんなもの知らない」

「そこにいるではないか。生ける宝石、魔王キキョウだ!」

「生ける宝石か。その呼び方、悪くないな。だがキキョウが欲しいなら、キキョウに愛される努力をしろ。そして、キキョウのハーレムに入ればいい」


 え……まぁ吝かではないけれどね。


「いやだ。独り占めしたい!」

「ならば、独りで巣穴に帰れ」

「いやだっ! 持って帰るっ!」

「だめだ、帰れ」

「いやだっ! いやだっ! いやだっ!」

「クロちゃん、この子おかしいよ。突然感情が伝わってきたんだけれど、もう滅茶苦茶なの」

「はい、私の知るヘムエルヒリアとはまるで別人のようです。本来なら、百年に一度言葉を発するかどうかという変人ですから」

「臭うです」

「ノエル?」

「狂乱の臭いです!」

「イヤだぁぁぁぁぁっ!!」


 凄まじい叫びと共に、龍王ヘムエルヒリア・ファフニールが巨大な異形の龍へと変貌した。「ノエル?」それと同時にノエルも龍化し、異形の龍を掴むと一気に会場外へ飛び立った。

 この帝都の外へファフニールを追い出すつもりのようだ。


「このままおとなしく、帝都を出るです」

 

 突然、まだ多くの建物が密集する上空で、ファフニールとノエルを中心に凄まじい衝撃波が発生した。それを受けた直上は雲が消し飛び、直下の街並みが消し飛ぶ。

 子供も、大人も、犬も猫も、家屋も木々も全て一瞬で消え、一帯が大きな更地になってしまった。そして更に衝撃波が起こり、新たな更地が生まれる。

 

 龍王同士は戦ってはならぬ。この世界が定めしルールだ。


 この凄まじい威力の衝撃波は、敵対する龍王同士の間に起こる反作用現象だ。

 ぶつかり合う規模に応じ、周囲に甚大な被害を与えてしまう。

 その昔、龍王バハムートが狂乱した時、龍王リヴァイアサンもこの厄介が現象のせいで手が出せず、キキョウ達が中心となってノエルを封印したのだ。


「くそです」


 もうすぐ帝都の外縁部だったが、あまりにも衝撃波の被害が大きいので、ノエルは仕方なくファフニールから手を離した。そルの巨体が街に落下し、ゴロゴロ転がりながら多くの建物と人々と犬猫を潰してゆく。それでも更地になるよりは全然マシな被害だ。もっとも、潰された被害者や動物は、たまったものではないが。


 龍王ファフニール。

 ひょろっと頭部と首が細く、胴の丸い一輪挿しのような体形をした、財宝をこよなく愛する全長三百メートルの巨龍だ。頭はヤツメウナギとイソギンチャクを併せたような形状をしており、そのぷっくりとした胴に蝙蝠のような四翼を生やした、手足の無い異形の黒龍である。


「キキョッキキョォォォォッ!!」

「他人の事を言えないわっちですが、何狂乱してるですか!  さっさと正気を取り戻せです。でないと、わっちみたいに大量殺戮者になるですよ!」

「キキョォォォォッ!!」

「ああーダメそうです……千二百年前のわっちも、こんな感じだったです?」


 白龍姿のノエルがふぬーんと唸っていると、クロを手に乗せキキョウが白鬼弐式で追い着いてきた。その左右にはシルフィードと飛行モードの鬼神朱羅。後方にアスフィー達を甲板に乗せたトーラスが続く。

 キキョウの接近に気付いたのか、耳をつんざく様な叫びをあげるファフニール。


「キキョォォォォッ!!」

「やば、まだ足元に人がいる。私があの子を足止めするから、しらふじは住民を離れた場所に転移させて!」

「わかった。でもキキョウちゃん、魔力の使い過ぎ気を付けて、あれと戦うかもしれないんだから」

「大丈夫よ、魔力石もたくさんあるから」

 

 上空の白鬼弐式に頭を向け、イソギンチャクのような触手を躍らせるファフニール。こちらに気を取られてる間に足元の住民を転移させた。そして、すぐ近くの瓦礫やごみが積まれた広大な区画に向け、私を餌に彼女を誘導する。

 ちなみにファフニールは四翼はあるものの、龍の姿では飛行できないらしい。


 黒く異形の巨体がズルンズルンと都市部から移動し始めた。

 その様子をじっと見つめるクロ。


「この狂乱がノエルの時と同種のものだとすれば、正気に戻すのは無理ですね」

「封印城の封印内部に転移させるのってどう?」

「あれはノエル用に調整された封印ですから、ヘムエルヒリアを閉じ込めても、結界と翡翠牢を物理的に破壊して城下に出てきますよ」

「うえ、それじゃ土台を壊されて、お城も倒壊しちゃうね」

「それに……二度とあなたを封印の要になんてさせませんよ。そうする位なら、どんな被害が出ようとヘムエルヒリアを殺します」

「でもノエルの時は殺せずに封印したんでしょう? ……龍王って殺せるの?」

「ノエルはハイベルとミモリ様の娘ですから、殺さず封印したんですよ。まぁノエルが強すぎて殺せなかったのも事実ですけど。なので一応龍王は殺せるはずです」


「はへ?」


 素で変な声が出た。

 こんな時にとんでもない驚愕の事実をクロに告げられた。もう一度「はへ?」


「キキョウ様?」

「はっ……思わず思考停止してた……その話の続きはあとで訊くわ。それで、どうやって彼女を殺すの?」

「私とノエルの最大級龍魔法で攻撃します。人類帝国と周辺国のいくつかは消滅するでしょうが背に腹は代えられません。この大陸の龍王ペンペラーが怖いですけど……」

「うん、却下」

「ここで殺さないと、どこまでも追いかけてきますよ。このまま郷魔国へ連れてゆく気ですか?」

「う……それは避けたいな。でもまずは、本当に正気を取り戻さないか試そうよ」

「わかりました。龍王ファフニールは闇属性で、魔法耐性が非常に高く厄介ですよ」


 しらふじに物理攻撃メインの装備選択をオーダーすると、ライフルに75mm物理徹甲弾をセットし、背中に2連装120mm魔導キャノンユニット。両脚に120mm24連装魔導ミサイルファランクスユニットを召喚し装着した。


『白鬼の武装って対ゴーレム戦を想定してるから、あれが相手じゃ鳩に豆鉄砲かも……』

「とりあえず撃ってみようよ。みんな聞いて、これからファフニールを正気に戻せないか攻撃してみるよ。あちらの反撃がどんなものか不明なので、みんな距離を取って安全を最優先してね。遠距離攻撃可能な子は一緒に攻撃してちょうだい。物理攻撃が効果あるみたいよ」

「あーしもイノゥバとトーラスで支援します」

「リリィ、イノゥバ。心強いわ」


 クロがふわりと宙に舞いながら龍化した。全長千メートルもの巨大な水龍だ。

 私は白鬼弐式での魔導ガンランチャーライフルをファフニールへ向け照準を合わせた。背中の大砲と脚のミサイルポッドも連動している。コックピット内のモニターに表示されたレティクルが目標を捉えロック音が鳴った。


「さぁ正気を取り戻せ、龍王ファフニール! 発射ぁっ!!」


 ドンッ! ドンッ! ドギュンッ! ドギュンッ! シュボボボボボン!

 ライフルとキャノン砲が連動し火を噴く。続いてミサイルポッドから、合計二十四発のミサイルが射出され、綺麗な尾を引きながら、次々にファフニールへ着弾してゆく。

 更に何かが頭部に命中するが硬質な音を響かせ跳ね返った。ヘンリーのダンゴムシゴーレムを破壊したトーラスの鉄杭攻撃だ。更に様々な弾頭が着弾してゆく。サイドモニターに映し出されたトーラスの姿は、数種の砲塔と弾倉を生やす空中要塞と化していた。

 私は白鬼脚部の空になったミサイルポッドをパージし、新たなポッドを召喚。装着すると即発射する。今度は尾が曲線を描き、ファフニールの全身に満遍なく着弾させた。


 ファフニールの様子を確認しようと、攻撃の手を緩めた瞬間、爆煙の中で何かが輝いた。

 刹那――この一帯が一瞬だけ夜に変わる。元の昼間に戻ると同時に凄まじい衝撃波が私達を襲う。何が起きたか解らない。

 だが幸いにも誰一人被害を受けずに済んだ――が。


「は………?」


 振り返って、その攻撃が着弾した跡を目にした私達は――絶句した。

 そこにあったのは巨大な穴だった。穴としか例えようがない。そこにあったはずの都市が、人類帝国帝都が消滅してしまった。世界最大の都市が巨大なクレーターになってしまったのだ。


「うそ……確かここって、三百万の都市よね……」

『うそ……今の……核力砲だよ』

「かくりょく砲?」

『原子破壊砲……全てを消滅させる防御不能の超絶兵器。まさか生き物が放射できるなんて……』「みんな聞こえる? あれは核力砲。あの攻撃に触れたら、魂ごと消滅して輪廻転生できなくなるから、絶対回避だよ!!」

「マジか……」


 私が狼狽えた瞬間を狙いすましたかのように、ファフニールの顔の触手が伸び、白鬼の脚に絡み付いてきた。「キキョォォォッ!」凄まじい力で引き寄せられるその先にはヤツメウナギのようなグロテスクな口が待ってた。


「ひいいいいっ!」

「お姉様ぁーっ! めぇぇぇんっ!!」

 

 ズバシィィィッ! つんざく様な声を上げながら、巨大カリンがファフニールの脳天へ巨大な木刀を打ち込んでいた。それはまぎれもなく剣道の面打ちである。


「小手ぇぇっ! 胴ぉぉぉっ!!」


 続けざまに触手と胴体に木刀を打ち込んだ衝撃で、白鬼に絡みついた触手が緩み、何とか振り払う事が出来た。

 普段のおっとりカリンとは思えない、ビリビリと凄まじい気迫のこもった見事な攻撃である。

 ちなみに彼女の持つ木刀は、世界樹の枝で作られた全長六十メートルもある特別製だ。木刀の材料は封印城の築城時に掃った枝。当時、酔っぱらったドワーフ達が悪乗りしたそうだ。鍛冶王ムネも関わっていただけあり、品質は特級品である。


「ありがとう。助かったわ、カリン」

「えへへ、剣道選択しておいて良かったです」


 前世のカリンが暮らしてた大日本世界帝国では、男女問わず国民は格技を習う義務があり、薙刀や柔術などの中から、彼女が選んだのは剣道であった。


 ともかく、さすがに核力砲とやらを連射できるとは思えないので、動きの鈍ったファフニールから一旦距離を取る事に。

 すると突然、白鬼の前にポリゴンっぽい女性のマスクが現れた。

 時々女子会をする、よく見知った顔だ。


『キキョウ』

「ラヴィちゃん!」

『緊急事態である。魔王キキョウに依頼する。龍王ファフニールを討滅せよ』


 読んでくださり、ありがとうございます。(クロ)

 まさかヘムエルヒリアが武闘大会の黒幕だったとは……解せませんね。

 戦闘力は龍王の称号に恥じぬものを持っていますが、天候も操れず、特筆した能力のない龍です。それが私の目を盗んで、こんな規模の工作を? ありえません。


 彼女はとにかく金銀宝石、ひかり物が大好きで、時々メイ・ルフーヤを散策して金品を入手したり、金貨を勝手に鋳つぶして、コイントス様を怒らせたり、原石を手に入れた時は、私のお膝元、魔都ミモリのドワーフ街に加工依頼に来る娘でした。ムネ殿も生前、彼女の為に何度もアクセサリーを制作してましたね。コレクションに数多くの蟲翡翠を持っており、それを手放させるのには苦労しました。

 そんな彼女が狂乱するとは……でも私の宝、キキョウを狙う以上、ただでは済みませんよ。それが友であっても。

 

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