第73話 武闘大会本戦前編
魔王連邦とジェハーク国の本戦トーナメントは、それぞれ二日かけて行われる予定だったが、ジェハーク国は、初日に決勝戦を迎えていた。
ほとんどの本戦参加者が棄権した為である。残ったのは四名のみ。
それも早々に準決勝が終わり、決勝はノエルとアスフィーの対決とあいなった。
舞台上では雌雄を決する二人が向かい合う。二人とも女性ですけど。
ドヒュンッ! 凄まじい速度の正拳を放ち、ノエルの髪をなびかせ威嚇するアスフィーリンク。
「ノエルちゃん、折角の決勝戦です。今日は少し本気でやりましょう」
「そうですね。ふやけたうどんみたいな試合ばかりでしたから、いいですよ」
「アウレオラ降臨っ!」
「龍装!」
アスフィーがゴーレム“黄金のアウレオラ”を召喚し身にまとう。光背眩しい装着型のゴーレムが両腕両脚の黄金の歯車をギュンギュン回転させ、会場に金属音を響かせる。凄まじく攻撃的だ。
対するノエルは、メイド服から龍装“白き龍女の羽衣”を纏う。ヒラヒラした布生地を身に纏ったような、とても服とは呼べない痴女的な代物である。ちなみにノエルが“最凶”と呼ぶ黄金の戦槌は既に召喚済みである。召喚のたび舞台に大きなヒビを入れるので、運営が勘弁してくれと、菓子折りを持って頭を下げてきたのだ。
黄金の戦槌ザ・ワースト03。
こことは別のどこかの世界で数多くの命を奪った、最凶と呼ばれる武器シリーズの三番目のモデルだ。本来の名称は抹消されており不明。武器としてのカテゴリーは戦術兵器にあたる。03は重力を操るハンマーで、最大50メガトン(某原爆の3800倍)の威力を発揮する。現在はリミッターにより最大でも1000トン程しか発揮できないようだ。だが、ラヴィンティリスでは、それでも十分すぎる威力である。
ハンマーヘッドのスリット部分が緑色の光を明滅させ、内部でグラビティシリンダーが回転し重力を発生させる。そんなメカニカルな黄金の戦槌を軽々と振り回し、ポーズを取るノエル。普通のパンツが丸見えだ。
ノエルに合わせ、アスフィーも勇ましいファイティングポーズを取る。
奇しくも二人とも黄金の武器使いであった。
ガギィィィンッ!! 開始の合図とともに両者がぶつかり合い、凄まじい金属音が響く。
ガガガガガッ! ガガガガガギュゥゥゥン!!
アスフィーの繰り出す黄金の拳の猛攻を黄金のハンマーが軽々とあしらってゆく。
砲弾のような凄まじい蹴りも平然と受け止めるノエル。
互いが攻撃を放ち、攻撃を受けるたびに石舞台が悲鳴を上げる。
次第に二人の撃ち合う威力は増してゆき、もはや会場に響く音は、砲撃音のようだ。
「うーん……ノエルちゃんが、手を抜きまくってるのが伝わってきます」
「さすがに我が家の可愛い金色の猛獣に本気は出せないですよ」
「金色の猛獣……ノエルちゃん、最後に一発だけでいいので、本気の攻撃をお願い」
「死ぬかもですよ?」
「死んでもお姉さまの元に死に戻るだけだもの」
「うーん……それしたら、あるじ様にわっちが折檻されるです」
「わたしも一緒にお仕置きされるから、お願いっ!」
「仕方ないですね……ただし、ここは人が多く場所が悪いので本気半分ですよ」
「うん、ありがとう。いつも痴女で悪食で非常識丸出しなのに、いざという時、ノエルちゃんって常識人よね」
「常識人は、今から妹分を殺す攻撃を放ったりしないです」
「レベル2です」ノエルが戦槌を掲げ宣言すると、周囲に黄金の強化パーツがいくつも召喚され、それらがハンマーヘッドに変形合体してゆ。二倍ほどに大型化すると、ヘッド内部のグラビティシリンダーが高速回転を始め、同時に緑色の光が強く輝きながら青へ、そして赤へ変化してゆく。ヒュォンヒュォォオオオオ……
臨界点に達した黄金の戦槌をノエルが思いっきり右後方へと振りかぶった。
「オーバードライヴ!」アスフィーが両腕両脚の歯車を一気に回転させる。
ギャァァァン……同時に背中の光輪ユニットが幾重にも分裂し、さもロケット推進機のノズルの如く展開し、龍のような咆哮をあげた。ギュォオオオオオオオオ……
そして、左脚を前方へズドンと石床にヒビを入れながら踏み込み、全身を使って右腕を後方へと大きく溜め込んだ。
「いくですよ」「いきます」
大勢の観客が息を飲み見守る中、二人が渾身の一撃を放った。
「グラビトロンハンマァァッ!!」「ゴールデンデストロオオイッ!!」
ゴッギャァァァァン!!
ノエルのハンマーとアスフィーの右拳。互いの必殺の一撃がぶつかり合った瞬間、二人を中心に石舞台が盛大に砕け散り、凄まじい衝撃波と共に観客席に向け岩塊がふっ飛んでゆく。
ギギッギギギギギッ!
一瞬、二人の力が拮抗したかに見えたが、ノエルはハンマーを振り抜いた。
アスフィーは撃ち負け、右腕を半ばまで潰されながらぶっ飛んでゆき、観客席下の石壁にめり込んだ。
「まげたぁぁぁっ……ごぼぉっ!!」
「うわああああ、アスフィ~ッ!!」
折れたアバラが肺に刺さり、盛大に吐血するアスフィーリンク。
ノエルが慌てて駆け寄りエリクサーをふりかけると、ボロッボロのアスフィーがむくりと立ち上がった。右腕はきれいに戻っているが、アウレオラがバラバラに砕け、カランカランと子気味良い音を響かせ、足元に崩れ落ちて転がってゆく。
歯車の一つがコロコロコロコロ……コツン。何者かの靴に当たって止まった。
「二人とも……」
「「あう……」」
恐る恐る振り向くと、そこには鬼の形相のキキョウが立っていた。
二人がハッとして周囲を見渡すと、観客席の手前に石舞台の成れの果てがゴロゴロと転がっている。
どうやら観客に被害はなさそうだと、二人は安堵の表情を見せた。
『あーこれやばいなぁ』危険を察したしらふじが、即キキョウに連絡して、二人がぶつかり合う直前に観客席を水晶星でフルガードしたおかげである。
さて、優勝者が決定したのだが、一向に表彰式が始まらない。
私がいる事に気付いた大会運営スタッフが安堵の表情を見せ、駆け寄ってきた。
この大会は私が開催した事になってるので、どうやら表彰式は私がやるしかなさそうだ。
もし大会自体に私が気付かなかったり、無視して来なかったら、契約不履行で神罰かい。
この後、つつがなく表彰式を行った。
優勝者のノエルが賞金十億スフィアを受け取り、懸案の一つ目が消えるのだった。
アスフィーリンク「あれ……」
ヴァルバロッテ「え」
シルヴィア「うそ……」
その夜、勇者ランキングが更新され、ベッドの中で裸のアスフィーが報告した。
「お姉さま。私……勇者ランキング一位になりました」
初日で本戦が終了したジェハーク国と違い、魔王連邦の本戦は予定通り二日かけ、クロとグリンレッテがトーナメントを順当に勝ち進み、決勝で相間見えた。
この時点で二人は当初の目的を果たした訳だが、折角なのでちょっぴり勝負と洒落込もうと相成ったのだ。昨日のアレみたいな事は勘弁してほしいけど、この二人なら大丈夫だろう。
「お手合わせするのは、五十年ぶりでしょうか。クロ様、参ります」
「うん、おいで」
グリンレッテの華麗で凄まじい鞭の猛襲に防戦一方のクロ。観客にはそう見えるだろう。だが、一瞬でも気を抜けば場外へ突き飛ばされるのは、グリンの方である。
「腕を上げましたね。確実に強くなっていますよ、グリン」
「ありがとうございます。とことで……キキョウお母様のお腹の子。クロ様は男の子と女の子、どちらがいいですか?」
「…………」
普段ならこんな露骨な手に引っ掛かるはずもないクロだが、龍に至宝の話題を振ったのだ。あまりにも内容がクリティカル過ぎて、見事に引っ掛かった。
圧の緩んだ瞬間を狙い、グリンの鞭がいとも華麗にクロを捕え、グルっと巻いて舞台にコテンと転がした。本来のクロの実力であれば、鞭を振りほどき反撃も可能だし、グリンもクロ相手にこんなぬるい捕縛は試みない。あくまでこの試合は、グリンレッテの成長ぶりを披露する試合なのだ。
「う……やられました。私の負けです」
「すみません、ちょっぴりズルでしたね」
「二人とも凄かったよ~」
こうしてラヴィアル大陸の優勝者は、エーデルワイスの勇者こと、グリンレッテに決定した。
やはりここでも優勝者が決定したのに、表彰式が一向に始まらない。
大会の運営スタッフも舞台そばで困った顔をしている。昨日同様、私がやるしかない。
ならば、これでもかと派手にグリンレッテを表彰してやろうではないか。
突然、会場上空にポンポンと盛大に花火が打ち上がり、観客達も街の人々も空を見上げた。
グリンレッテの優勝決定と、大会の終了を告げる花火だ。
そして人々が空を飛んでくる何かに気付き、子供達が指を差し歓声を上げる。
魔王キキョウの乗騎。純白の人型ゴーレム、白鬼弐式だ。飛行ユニットが魔導ジェット音を響かせながら、鮮やかな紫色のマントをなびかせ、軽やかに舞台に降り立った。
胸部ハッチが開き、手を振りながら魔王服姿の魔王キキョウが現れると、会場は大歓声に包まれた。私、さっきまで観客席に居たのだけれどね。
「エーデルワイスの勇者、グリンレッテ。見事な戦いぶりでした。優勝者として、あなたは名誉の他に何を望みますか?」
「はい、賞金を望みます」
「よろしい、では賞金十億スフィアを授与しましょう」
緊張気味のカリンが用意したテーブルに、魔法珠より取り出した金貨一万枚を積み上げると、観客がどよめいた。
「ありがたき幸せ。これで国の子供達の為に学校を建てられます」
グリンレッテが金貨袋を持ち上げ、観客達に向け振ると大きな拍手が沸き起こった。
こうして懸案の二つ目が消えるのだった。
実は昨日、ジェハーク国の大会終了後、運営スタッフ達を呼び、大会開催についていくつか質問をしてみた。すると魔王キキョウの代理を名乗る者が現れ、全てをお膳立てしたのだという。
スタッフ達はこの国の公務員で、本戦最終日に魔王陛下が現れるので、それまで大会を指示通り進めるようにと命じられたそうだ。
魔王連邦の大会は、魔王カリマーが気付かぬうちに大会予戦が始まってたそうだが、大会運営スタッフは、カリマーに命じられた通り仕事をしていただけだと言っていた。
当然、カリマーはそんな事は命じない。
やはりクロ達が睨んだ通り、かの邪神の所業なのだろうか。
読んでいただき、ありがとうございます。(ベルテ)
残すは人類帝国の本戦のみですね。あと一話で終わるのでしょうか。
魔王である私とアリアンお姉様が参加できないのは、飲み込みましょう。
実際、アスフィーさん達、勇者勢に比べ圧倒的に戦闘力が劣りますからね。
なので私は館でみなさんを応援します。応援にかこつけてティメル様に抱き着きます。彼と婚約もできたし、ああ~この美少年が私のものです~っ! なんとかぐわしい体臭なのでしょう。彼の胸に顔をうずめ、スーハーするの最っ高ぉ!
あ、一応、普段はヌコをたくさん被ってますよ。
ちなみに……もうペロペロしました。まだ婚約したばかりで、結婚もしてないのにペロペロしましたぁーっ!




