表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/74

第7話 ゴーレム召喚

「まったく……私、やらなくちゃいけない事たっくさんあるのに、全然進まないでしょう」


「ごめんなさい」×2


 予定では魔導銃の試射をするつもりだったが、庭で撃つと素敵なガゼボや草木に被害が出そうなので、先にゴーレムを召喚する事にした。

 まずクロからゴーレムについてのレクチャーを受ける。


 ゴーレムというと無機物の魔物を想像するかもしれないが、この世界のゴーレムは勇者と魔王だけが召喚可能な、お助けマシン的存在で、概ね三種に分類される。


 一種目、武器型ゴーレム。自身の武器魔装の特性を持つ場合が多く、純粋に戦闘力を大幅増強できるのが長所だ。中には乗り物に変形できるタイプもあるらしい。酔っ払いドワーフ娘のノノは、巨大な戦斧のゴーレムを振り回し、城塞を一撃で粉砕するという。


 二種目、装着型ゴーレム。鎧のように身に纏うパワードスーツのようなゴーレムで、鎧タイプから大型ロボットタイプまで存在する。前世の私は全高八メートルもある鬼神弐番鬼“羅雪”を身にまとい暴れていたそうな。現在、それはキョウカが受け継いでいる。羅雪と同等の姉妹機をヴァルバロッテが召喚できるので、あとで鬼神の力とやらを見せてもらおうか。


 三種目、自立型ゴーレム。馬や魔狼などの動物や魔物を模した形状で、連携したり騎乗し戦うのがこのタイプだ。稀に装着型の特性を併せ持つタイプも存在する。私にとって、恐らく最大の敵になるであろうアルス王国の勇者は、ペガサスゴーレムと合体し、空戦及び対人戦最強を誇るそうだ。


 しかし召喚するには、まずゴーレムを使えるように“開放”する必要があるという。

 ただし開放条件は個々で異なる。例えば「恋人ができる」「一週間連続で同じ昼食を摂る」「一日十回〇〇する」「農道を全裸で傷付けながら暗闇を走り抜ける」「盗んだ馬車で走り出す」「子供を七人殺す」「家族を殺す」など、いつの間にか開放してるような条件から、知っていても実行不能であろう凶悪な条件も確認されている。まるで冗談のような話だが、とても手放しに笑えない。現状、ゴーレム開放率は勇者全体の二割にも満たないそうだ。


 ちなみに既に開放済みだった私の条件は「異世界転生する」だった。

「アホかー!」おもわず素で叫んだわ。


 さて、私のゴーレムはどのタイプだろう。“白鬼壱式”という名前からして前世のような装着型だろうか。ワクワクしながらゴーレムを召喚した。


「いでよ、白鬼びゃっき壱式!」


 魔法陣より現れたそれは、私の想像とかけ離れた姿をしてたけれど、概ね満足するデザインのゴーレムだった。

 しかし、クロからは強い困惑と嫌悪が眉間のシワから見て取れる。


「なんですか、この異形は……頭から手足が生えていますよ。見ているだけで不安になる造形です……」


 ゴーレム“白鬼壱式”は、面白カッコ良さそうなロボアニメに登場しそうな全高四メートル程の頭でっかちな白いロボットだった。 魔導銃と同じ紫の模様がボディ要所に施され、白いボディにとても美しく映え格好いい。

 まず、鼻先に角の生えたドラゴンの頭部を模したコックピット。それを護るように装着された飛行翼と肩部装甲の下には、空力を重視したような細い腕部と、先端がナイフのように尖った四本の脚部が配されている。そして後部には動力炉らしき紡錘状の尻尾が生えており、全体のフォルムは蜂のようにも見える。武装は右腕に三メートル程の魔導銃似の大型ライフルと両肩に機銃口らしきものが見て取れた。


【機体名】白鬼壱式びゃっきいちしき

【搭乗者】キキョウ・ユキノ

【寸 法】全長7.2m、全幅5.8m、全高4.0m、乾燥重量4.8t

【装 甲】60mm複合バイオクリスタライン装甲

【主動力】魔力式ハイペリオンドライブ

【推進機】101式反重力翼、反重力スクリューリング×2

【武 装】魔導ガンランチャーライフル×1、20mm肩部物理式バルカン×2

     120mm6連装魔導ミサイルポッド×2、脚部魔力ブレード×2

     6cmヘルメトロン砲弾×1、75mm物理徹甲弾、他

【備 考】ヘルメトロン砲弾使用は、十年に一発とします。

     センターピラーへの直撃は厳禁です。


 私は特に抵抗感もなく、このSFチックなゴーレムの形状を受け入れられたけれど、ドラゴンの頭に手足の生えたような竜のような虫のような姿に、龍であるクロは強い忌避感を覚えたようだ。それはそうかも、もしこれが人の頭部に手足が付いてたら凄く嫌だもの。あれ? そんなロボのたくさん出るアニメ観たような、確かドリルがいっぱいの……


「やれやれ、この美しいフォルムが異形とはね。ボクがキキョウちゃんの為に設計した、この造形美が理解できないなんて、クロちゃんさんもまだまだですねぇ」

「これ、しらふじが作ったの?」 

「えっへん。キキョウちゃんの魔装に選ばれた時に申請して、雪牙級突撃艦をベースに開発した、搭乗型空戦ゴーレムだよ」

「なるほど、やはり空を飛ぶのね。でもこんな小さいのに突撃艦?」

「ちっこくてもハイペリオンドライブを搭載してるからカテゴリー的に宇宙戦艦なんだ。ちなみにこの尻尾がハイペリオンドライブね。この動力炉は別宇宙に超次元シャフトを繋げて莫大なエネルギーを吸い上げるんだけど、この魔法世界では大気中の魔素を吸収するよう仕様変更してるんだ。だからキキョウちゃんは、自分の魔力の大半を攻撃に割り振れるよ。超すごくて偉いでしょ? 褒めて褒めてっ!」

「うむ、えらいぞぉ」


 凄い早口で説明された。うん、とても凄いって事は伝わったよ。

 しらふじがとても楽しそうなので何より。そして彼女の言動から、とても文明の進んだ世界の住人のように思える。

 説明も終わり、早速搭乗しようと白鬼の前に立つと『私の中へどうぞ、美しいお嬢さん』突然、白鬼に男性のバリトンボイスで挨拶された。


「しらふじ……その声やめて。背筋がゾワッとするから」

「うそっ……なんでわかったの?」

「私に向ける白鬼と水晶星の“視線”が同じだもの」

「まさか、カメラ越しでもボクの視線がわかるの?」

「おそらくキキョウ様のスキルでしょうね。大変珍しい感知スキルの一種だと思います」

「自覚はなかったけど……なるほど、これってスキルなのね」


 子供の頃から周囲の視線には敏感だったけど、この世界に来てから、より顕著に感じるようになっていた。少しだが視線に込められた感情まで感じ取れる。昨夜のドワーフ達からは「びっくり!」「好きだ!」が凄かった。あと胸やお尻に向けられるエッチな視線も。

 そして先程、水晶星をしらふじに預けた時に、水晶星から人の視線を感じ、彼女がAIではないと確信した。

 でもクロからは、なぜか薄っすらとしか感じ取れない。


 二人にそれを話すと、この感知スキルは戦闘や暗殺対策、不穏分子の発見に非常に有効なので、秘匿するようにと念を押された。ちなみにクロのような魔法やスキル攻撃に耐性のある者からは感じ取りにくいようだ。


 だが今のクロからは、静かだが不穏なものをピリピリ感じる。しかもなぜか手には鋭い千枚通しが……なんと私にエッチな視線を向けた男達の目玉をそれでエグり取るのだと言う。その手つきがタコ焼き屋さんみたいだけど、冗談に思えず寒気がする。


「男性が女性の胸やお尻を見るのは自然現象!」


 世の男性の尊厳を守る為の説得は、辛うじて成功した。

 クロの反応から、もうこの手の話題は彼女の前では絶対禁止。私が性的に絡むとマジヤバイ。何となくキョウカの心労が垣間見えたよ。ちなみに生理現象と言わなかったのは、目玉じゃないものまで突き刺しそうなので。

 ……世の男性諸君、女性はその視線に気付いているぞ。


 さて、やっと白鬼に乗れる。

 脚の間から下りてきたシートに座り、左右のひじ掛けにある操縦グリップを握ると、真っ暗なコックピット内部へとスライドし、シュコンと定位置で止まった。


「キャリブレーションするから、グリップを握ったまま体を楽にしてね」


 エメラルドの細い光がチカチカ、スス―ッと私の瞳、そして頭からつま先まで照らしてゆく。すると体を支えるシート各部と操作デバイスの位置が最適化され、少しキツかった姿勢やお尻の収まりが良くなった。

 次に「チャラララ~♪」パソコンのような起動画面が現れた。デフォルメされたギザ歯娘のマークが可愛らしい。そして全方位を映し出すモニターが起動すると、私の足元にこちらを見上げるクロが映った。


「じゃあ今日は、キキョウちゃんが直感的に動かせるように、操縦系のカスタマイズから始めて、基本動作まで進めちゃおうか」

「うん、よろしく」


 それってゲームパッドのボタンの割り振りをする感じだろうか。


「この白鬼壱式は左右のグリップレバーとフットペダルの操作で、飛んだり攻撃したりするんだけど、レバーはボール型やテンキー型にも変更できるよ。周囲に浮かんで見える各種アイコンは指で触れてもいいし、音声認識や視線と瞼の開閉でも操作できるので、色々試してみてね」

「ほほう」

「あ、今はレバー動かしても、本体は動かないシュミレーターモードにしてるから、自由に引いたり踏んだりしてもいいよ。うっかり館やお庭を壊しちゃうとまずいものね。ちなみにクロちゃんさんにも音声は聞こえるようにしてるよ」

「うん、わかった。やっほ~クロちゃん」


 クロがこちらに手を振る。超可愛い。


「まず最低限知っておくべき事を教えるね」

「うん、お願い」

「え~白鬼はボクも操縦できるから、ぶっちゃけキキョウちゃんが乗らなくても動くよ」

「うわーいきなり凄いのぶっちゃけられた」

「自立型でもあるからね。でもキキョウちゃんが乗らないと、トリガーを引けない物騒な武装もあるよ」

「なるほど……(シャレかな)」

「つまり、いざという時は、ボクが操縦を肩代わりできるって事。でもね、もしシステムのすべてがダウンした時、ボクは何も出来なくなっちゃうの」

「確かに、そうなっちゃうだろうね」

「その操縦デバイスは物理的に白鬼の手足に繋がっていないから、システムダウンするとレバーを押そうが引こうが全く動かなくなるよ」


 最近の自動車はペダルやシフトレバーが機械的に繋がってないので、何かあった時不安だと、お父さんがドライブ中にこぼしてたのを思い出す。


「もし危機的状況に陥った場合の為に、緊急脱出装置だけはシステムから物理的に独立してるの。その足元のレバー見える?」

「これ?」私は屈んで赤いレバーを握った。

「そうそれ、ボクがキキョウちゃんの安全を確保できない時、それを押し込み九十度回したら」

「押し込んで回したら?」

「一気に引くの。するとコックピットブロックが『ボゴォォン!』分離し…て………」


 轟音と共に白鬼の手足がパージされ、勢いよく射出された頭部が飛んでゆく。そしてポフンとパラシュートが開き、おだやかな湖面にゆっくりと着水した。

 パージによる爆発で館に向け吹っ飛んでゆく脚部を、猫のようにしたっと受け止めながら、頭が飛んで行く様子を眺めてたクロは、遠浅の湖からポチャ……ポチャ……力無く戻ってきたキキョウに喜々と話した。


「ふわふわ降りてくる様子が、まるで胴体が食いちぎらた魚の頭みたいでしたよ」


『キキョウちゃん。緊急時以外にあのレバーは絶対に触らないようにね。絶対だよ。絶対絶対だからね? 次やったらボク泣くから。一晩中、念話でワンワンにゃーにゃーブヒブヒ泣くから。ついでにヘンリー8世君も歌うから。いい?』

「はい……」

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。(クロ)

 キキョウ様って時々、素でやらかすので注意が必要です。

 あとネーミングセンスも独特ですので、その辺もご注目ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ