第63話 紅白
ローズ・アルトマイヤーを私のものに出来た事は、正に僥倖である。
なにせ彼女の高い美意識と美的センスは本物なのだ。
化粧も着付けもメイド任せの私を含め、うちの残念美女軍団とはモノが違う。
正直、足元を見るような方法でローズをモノにした事は、褒められたものじゃないけれど、結果的に彼女を護る事にもなるし、良しとしたい。
そうこうしていると、学園からユキ達が帰ってきた。
「お母さん……また恋人増やしたの? ちゃんと面倒みないとダメだよ?」
いやいや、犬猫じゃないんだから。それにハーレムメンバーは、みんな大切にしてるからね。私に対するユキの評価って、どうなってるの……
「お姉さま……私が成人するまでに、何人増やす気ですか?」
大丈夫、もう増えないから。たぶん。
くっ、毎度アスフィーの視線が一番冷ややかで痛い。
「お姉様。しらふじちゃんも入れたら、十人超えますね」
数じゃないの、みんな大切なの。もちろんベルテも同じように大切よ。
「……甘えられる時間が減っちゃう(ボソ)」
ごめんね、アリアン。寂しい思いは絶対にさせないから!
「まさか、かの紅薔薇夫人をお迎えするなんて……しかも裸族だったとは」
ロレッタも知ってる人だったの? しかも二つ名持ちとはね。
学園組の視線が冷ややかだったが、ローズの姿を見た途端、みんな揃って彼女を囲み、やんやと美をほめそやした。私、あんな風に褒められた事ないんですけど。
以前、絵画協会の男に『女は芸術的センスが男より劣る』そう言われたのを覚えているだろうか。私は忘れていない。いつかぎゃふんと言わせてやる。今もやる気満々である。
そこで私は、芸術的だと思える凄い衣装を着て、姿見水晶で発表する事を決めた。
ノノに声を掛け、女性中心のスタッフを集め、衣装までは完成したが、どうもこれまでのお洒落姿見写真と大差なく、決め手に欠け、そこで行き詰まっていたのだ。
だが、ローズの登場で深い霧が消えた如く、やるべき事が明確に定まった。
次の姿見写真集のコンセプトは、紅白。
歌合戦や運動会ではなく、私とローズの衣装をキャンバスに見立てた、色の競演である。
衣装は振袖付きの和洋融合ドレスで、紅と白の二着を用意。そこにマレーニャが絵を描く。ちなみに私は紅、ローズが白のドレスを着る。髪の色も作品の一部になっているのだ。
マレーニャは真っ赤なドレスをキャンバスに白絵の具で私の顔を、純白のドレスをキャンバスに真っ赤な絵具でローズの顔を大胆かつ繊細に描いてゆく。
折角なので、白髪白服と紅髪紅服なバージョンも用意するつもりだ。
全体の配色が奇抜にならないよう配慮しながら、効果的に宝石を配し、紅白の美しさを際立たせてゆく。
そして、大胆に脚線美を強調したショート丈。振袖と同様のキャンバスの一部とするロング丈のスカートを二種類。そしてセクシーなタイツ。これもマレーニャが筆を揮った。本当は刺繍やレース編みでやりたかったが、時間が掛かり過ぎるので残念ながら却下。次回があれば刺繍でやりたい。
私達自身が芸術の一部と化した姿見の撮影が終了すると、今度は普段通りの女の美しさを重視した姿見の撮影を始める。
衣装と自分達の魅力を最大限に引き出すメイクを施し、私達は撮影に臨んだ。
「ねぇ、このポーズでキスしてみる?」
「大胆過ぎません? 口紅落ちちゃいますよ」
「大丈夫。美の加護で護られてるから、ご飯食べても落ちないよ。とりあえず撮ってみるだけ。採用するかは後で検討しましょう」
「じゃあ、こんな感じはいかがです?」
「おおぅ、なんかエロい」
私達は寄り添い、絡み合い、大胆に親密性をアピールする構図から始めた。
次に、似た背格好を生かしたシンメトリーな表現。そして互いの髪を編み込んで融合したり、様々な形で紅白の美しさを表現してゆく。撮影は朝から深夜まで及び、舞台裏的なシーンも含め、全三十カットの撮影が終了した。
「みんな、お疲れ様! とても素晴らしい仕事をしてくれてありがとう。特別手当、期待してちょうだいね」
もう深夜でヘトヘトなはずなのに、黄色い声があがった。
「若いって……いいねぇ」
「キキョウ様……ババ臭いですよ」
「チョップ」
十二月。ザイドリッツ王国に激震が走った。
寄付金を横領し、郷魔国で魔王を激怒させ無礼討ちになったはずの大悪女、ローズ・アルトマイヤー公爵夫人が生きていたのだ。
それも姿見写真集『紅なる純白』で、魔王キキョウとローズの頬を寄せ合う仲睦まじい姿が発売されたのだから、貴族も国民も大騒ぎである。
それと時同じくして、ザイドリッツ国王宛てに届いた魔王キキョウの親書には、ローズの無実とジェガンダ伯爵、ネーモ子爵、ジムーノ男爵による寄付金詐欺の証拠が添えられていた。
姿見写真集『紅なる純白』の美しさと芸術性は、キキョウ達が想像してた以上に世界中を驚愕させていた。
その紅色と純白の鮮烈な色使いは、これまで見たままを写実的に描く絵画の世界に、新風を巻き起こす事となったのだ。
それを知った魔王キキョウは、どこぞの公家のお坊ちゃまのように「むっふ~」と、ご満悦の様子であったという。
そして、世界三大美女の一角である魔王キキョウと甲乙付け難い美女、ローズ・アルトマイヤーの存在も全世界に知れ渡る事となった。
多くの人々が彼女の美しさに感嘆し、そして心酔し「世界四大美女だ!」そう絶賛するのであった。
後日、ジェガンダ伯爵達の財産没収及び爵位はく奪の報がザイドリッツ王国より届けられた。同時にローズ親娘とメイドの三名を郷魔国へ移住させる許可も受諾された。あちらに残っているローズの財産は、古く大きな屋敷のみ。実際に現地に見に行ったのだが、とても趣のある素晴らしい屋敷だった。
ローズにとっては、夫との大切な想い出の屋敷だという。人が住まないと、家はすぐボロボロになってしまうので、ここまま放置するのは惜しい。
だが売ろうにも建物は古く、立地も悪いので、買い手が付かないだろうとの事。
「ねぇローズ。この屋敷、持って帰って、近所に移築しよっか」
「ええっ!? そのような事が出来るのですか?」
「うん。今思い付いたんだけれど………ってどうかな?」
「それ……良いかもしれません。大変面白いですわ!」
アルトマイヤー公爵邸は、キキョウのお宿近くに移築する事になった。そして屋敷の雰囲気をそのままにリフォームし、ホテルの機能を追加。
数か月後「ローズが女主人となって、知人を招きもてなす」というコンセプトの新たな保養所二号店としてオープンする事となった。
その名も「紅薔薇夫人の館」である。
まだ薔薇の庭園は未完成だが、ザイドリッツ王国の歴史ある公爵邸に宿泊できる上に、世界的美女である紅薔薇夫人が出迎えてくれるサービスはとても魅力的のようで、早速多くの予約が入った。ローズのお母さんも大喜びで、メイドとして働いてくれている。
二度目の大晦日がやって来た。
この国に来ておよそ二年。二十二歳になりました。
今年もたっくさん、みんなにお祝いしてもらえて、私はとても幸せだわ。
みんな、ありがとう。
年が明け、みんな揃って居間の囲炉裏でお餅やしんごろう(福島県下郷町や南会津町の郷土料理)を焼いていると、しらふじがとんでもない爆弾を投下した。
「え……もう一度言って」
「うん。アリアンちゃんとマンマちゃんの魔装AI、ラルトーネとアルティーに協力してもらって、メインフレームを解析したら、ゴーレム開放条件が判明したよ」
「マジか……すごいじゃない」
「でしょ? 褒めて褒めて!」
「えらいぞっ、しらふじ~!」
「わーい」
「でもそれ大丈夫なのかな。神様案件でしょ。クロちゃんとネロ様は、どう思う?」
「事が事ですから恐らく禁止されるでしょう。でも、まずは本当に解放できるか試してみませんと」
「そうですね、事後報告で充分かと思いますよ。これが成功したらラヴィンティリス様に伝えますね」
「なるほど、事後報告ね……」
ニヤリと笑うクロと私の表情を見た皆が一様に思った。
二人ともすっごく悪い顔してる……
「それで二人のゴーレム解放条件は何なの?」
「マンマちゃんのはね……同性とエッチな事をする」
「ひょへ!?」
「アリアンちゃんのは……大勢の前で裸踊りする。だよ」
「ぶふぅーっ!!」
マンマネッテがぷるぷる震えだし、アリアンがおしるこを噴き出した。
無理もない。両方とも常識的に考えて、普通に暮らしてたらまず達成不能な案件だ。アリアンの裸踊りなんて、ゴーレムと引き換えに人生終了だろう。
「二人とも、どうする?」
「「無理無理無理無理」」
「ん~マンマネッテは、誰も相手がいないなら、私とエッチしましょう。大丈夫、優しくするからね(にっこり)」
「こ……心の準備が出来るまで、待ってくださひ……(ドキドキ)」
「アリアンは……私も裸で付き合うから、一緒にみんなの前で踊りましょう。あ。全員裸になれば誰も恥ずかしくないじゃない? じゃあ、お餅食べたら、全員脱ぎましょうか」
「はーいです」
「では、わたくしも」
みんなが私の提案に驚く中、ノエルが真っ先に脱ぎ、それにローズが続いた。
その後、全員全裸となり、私とアリアンが社交ダンスするも、ゴーレムの解放は成らなかった。ギャラリーが足りなかったと考え、追加で館メイド四十人を全裸動員し踊ったところ、ゴーレム“雷帝ハルピュリアス”は、無事解放されるのだった。
裸になってくれた全員にお小遣いをあげたよ。はい、ぽち袋。
あ……そういえば、男の子が一人いたけれど……まぁいっか。
【機体名】雷帝ハルピュリアス
【装着者】アリアンロッド
【寸 法】全長3.2m、全幅4.8m、乾燥重量0.4t
【装 甲】30mm複合ミスリル魔導装甲
【主動力】ゴーレムコアユニット・ベータ3
【推進機】魔導式可変ターボウイング一式
【武 装】ファルコンクロー、フェザーバルカン、ハルピュリアランス他
アリアンのゴーレムは、空を飛ぶ魔物ハーピィ型のゴーレムだった。しかもアリアンと合体して空も飛べる、シルヴィアやベルテのゴーレムと同じタイプだった。
マンマネッテの覚悟が完了するのには、まだ時間が必要そうなので、先に館メイドの勇者三人のゴーレム開放を試みた。
ユキの専属メイドであるルネの解放条件は「トイレに一日籠る事」だった。
他の二人も「はぁ?」と首を傾げたくなる条件であったが、無事解放できて大喜びしている。
数日後。私の寝室にて、優しく裸のマンマネッテを可愛がってあげた。
私の夜のスキルは相当高いようで、こういう経験のないマンマネッテは、あっという間に達してしまう。同性ゆえに弱点を的確に責める事が出来たしね。
だが、何度しても解放の気配がない。
そういえば……「同性とエッチな事をする」ああ、たぶん一方的にされるだけではダメなのだろう。
という訳で、マンマネッテにもがんばってもらった。
いっぱいキスして、夢中でエッチな事をしあって、無事ゴーレムを開放できた。
しかし……解放後も止まらず、一晩中愛し合ってしまった……ごめん。だって、あまりにも可愛いんだもの。
「ねぇ……このまま私の恋人になっちゃわない?」
私の胸に顔をうずめるようにしがみ付き、ビクンビクンしてる可愛いマンマネッテが、こくりと頷いた。
「……はひ、なりまひゅ」
翌朝、アスフィーに思い切り睨まれた。
【機体名】タルピーダ
【搭乗者】マンマネッテ
【寸 法】全長6.6m、全幅2.4m、乾燥重量3.6t
【装 甲】120mm複合アダマンタイト魔導装甲
【主動力】ゴーレムコアユニット・ベータ2×2
【推進機】魔導ドリル&キャタピラー、魔導ジェット推進機
【武 装】魔導ブラスターキャノン×2、他
なんと、彼女のゴーレムは、大きなドリルで地中を移動できる超レアな搭乗型ゴーレムだった。しかも三人乗りである。
シルヴィアが「国際救援隊のドリルメカだ!」と、興奮していた。
ついでにマンマネッテの勇者服もじっくり見せてもらったけれど、私やヴァルバロッテのパイロットスーツに酷似したものだった。スレンダーな肢体にぴっちりスーツ……これは良いものだ。眺めているだけで、あと十年は戦えそう。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
タイトルが長すぎると、友人に呆れられしまいました。
どうもタイトルを考えるのが苦手で、元は「ラヴィンティリス物語~白き魔王はユリ属性~」でした。が、もっとキャッチーなのにしようと、今にいたります。そのうち元に戻すやもしれません・・・ともかく、最終回を書き直さないと。
始めはすごい斬新な最終回だ! と思ったのですが、時を置いて読み直したら、あまりの酷さに脱力しました。なんというか、晩節を汚す的なラストでしたわ。
どんなラストかは、最終回後の後書きにて・・・。




