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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第57話 キョウカ編 第3話 魔力病その一

 私の宝物が産まれた。

 驚くべき事に、透き通るような白い髪に白い肌、そして極上のピンクルビーのような瞳の娘だ。

 夫は遺伝子疾患かと焦ったようだけれど、髪はキキョウ、瞳は私の母そっくりだもの、大丈夫だよ。ああ、それにしても可愛いなぁ。


「私がママですよ~そっちのおっさんがパパですよ~」

「なぁ……娘の前で、おっさん呼びはマジやめて……」


 病院側も前代未聞の娘の体色に興味津々で、私は子育て中の手負いの熊みたいに拒否したが、自分も一緒だからと夫になだめられ、仕方なく娘の健康診断のついでに、検査も認めた。


「あーうー」


 昔の総理大臣みたいに声を出すひいらぎ可愛い。娘が可愛いすぎて、私死にそう。


「まんま」

「ひいらぎがしゃべった~!」

「ほ~らひいらぎちゃん、パパですよ~」

「ぶぅ」


 ひいらぎを連れ、小児科へ健康診断に行った時、魔力病に罹っている子に遭遇した。

 あの病は八歳ぐらいから発症するはずだが、その子は五歳ぐらいだろうか。こちらの世界では、発症が早いのか。同じ母親としてどうしても見過ごせず、その親子の帰り際に声を掛けた。


「少しいいですか? お子さん、発熱症候群ですよね」

「はい……解熱薬を処方してもらいましたが、あまり効かなくて……」


 このお母さんは、この病の末路を知ってるのね。


「少しだけ、息子さんに触れてよろしいでしょうか」

「え……はい」


 顔の赤い男の子の胸に触れ、魔力を吸い出した。わずか十秒ほどで魔力の大半を吸い出す。この年齢でこの量は少し多いな。ラヴィンティリスでなら、将来魔導師として大成するだろう。だが、こちらでは死に至る病だ。


「あれ……すごくすっきりしたよ? ふらふらしないよ」

「えっ……翔くん熱が下がってる?」

「信じられないでしょうけど私、この病の熱を吸い出せるんですよ」


 今度熱が出た時はうちに来るようにと連絡先を交換し合うと、結構ご近所さんだった。

 その後、夫の勤務する病院に受診に来る患者をこっそり紹介してもらったりで、ゆっくりとだが、魔力を吸い出してあげる子が増えていった。

 だがうちは一般住宅地の民家。駐車場も足りないし、このままではご近所に迷惑をかけてしまう。そこで近所の空き地を購入し、小さな施設を建てた。

 私は医師免許もないし、魔力を吸い出すという非科学的な行為なので、チャイルドカウンセラーの民間資格を取得した。そして、発熱症候群のお子さんを持つ親の悩みを聞くという体裁で相談所をオープンしたのだ。


 初めは夫の病院からの紹介で患者を受け入れていたが、次第に口コミで直接来る患者も増え始めた。当然、医療行為ではないので保険は効かない。しかし相談料は一回千円とし、概ね月に一度から二度ぐらいの頻度なので、経済的負担は少ないだろう。

 だが、遠方から通う場合、交通費や宿泊費。移動による発熱中の子への負担が大きい。

 そういう家族には、可能であればと移住を薦めている。実際、母子だけこちらに住み、夫は単身赴任状態のご家族も現れはじめた。

 出来るだけ負担を減らしたく思い、夫の伝で安価なアパートの紹介もするようにした。

 雪野家のご両親の保険金もあり、貯蓄はかなりあるので、患者専用の格安なアパートや宿泊施設を経営をしてもいいかもしれない。

 

 そんなある夜、スマホが鳴った。遠方から通う吉川碧くんのお父さんからだった。

 先週熱を吸ったばかりの碧くんが、危険レベルの高熱を出しているという。これから私の元へ来ると言うのだが、車で高速を飛ばしても二時間近くかかるし、移動による体の負担がとても大きい。


「わかりました。私がすぐそちらへ向います。五分ぐらいで行けると思いますよ」

「ええっ? 先生、うちの近所にいるのですか?」

「いえ、自宅ですけど、緊急事態なので空飛んで行きますからご安心を」


「ヨウくん、ちょっと行ってくるので、ひいらぎちゃんをお願いね」

「うん、気を付けてな」


 久しぶりに魔装を纏う。赤白のぴっちりスーツだ。ちょっと太ったかな?


「来い、鬼神羅雪!」


 庭に出てゴーレムを召喚した。魔法陣がギュオンと現れ、こっちの世界でいうロボットがズズンと現れた。初めて夫に見せた時は「ロボキター!」と、大興奮だった。


【機体名】鬼神弐番鬼“羅雪”(らせつ)

【搭乗者】キョウカ(雪野桔梗)

【寸法】全高7.8m、全幅5.6m、乾燥重量4.8t

【装甲】120mmヘリオスロイドメタル装甲

【主動力】無限アンネットドライブ(科法世界仕様)

【推進機】バルニエル式ターボスラスター×3

【武装】蒼王の大剣、紅王の大剣、ドラゴテール


 雪のように白い装甲の羅雪。ただし指や関節部分は真っ赤だ。キキョウが乗騎にしてた頃は紫色だったらしい。胸部装甲が開き、ストンと私が乗り込む。そして背中の主翼を開き夜空へと飛び立った。すみません、夜中なのに凄い音を出してご近所迷惑だよね。

 夫が手を振る姿がどんどん小さくなってゆく。

 眼下に都市の灯りが点在するように見える高さへと上昇し、目的地に向けズドンと一気に加速する。

 

「雪野先生、五分で来るって言ったけど……ヘリでもそんな速くないよな」

「今は信じて待ちましょ。あ、電話。もう来た? 場所が暗くてわからないから、部屋の明かりを点滅させてですって」

「おっおう」


「さてと、どこかなぁ……お、発見」


 キュィィィィ……ズズン、フシュ―。何とか着陸できたけど、尻尾が道路にはみ出しちゃった。まるでクルッポーが豆を喉に詰まらせたみたいな顔で、ご夫妻が出迎えてくれた。

 まぁ流石に飛行ロボで往診するとは思わないでしょう。


「こんばんは~」

「こんばんは……雪野先生……」

「先生は、いったい……」

「説明はあとよ、それより早く碧くんの所に」

「はっはい、こちらです」


 うわ。酷い高熱だわ。額と胸に手を当て、魔力を吸い出すが……この短期間でここまで溜まっているのは、これまで例がないわね。よし、完了。


「はい、もう大丈夫よ」

「あっありがとうございます!」

「ああ……感謝します、先生」


 ほどなく碧くんが目覚めた。


「あれ……おうちにせんせいがいるよ」

「碧くん、苦しくなぁい?」

「うん、へいきみたい。ありがと、せんせい……せんせい、かっこいいかっこしてる」

「ふふふ、これはパイロットスーツよ。碧くんのおうちまで、ロボに乗って飛んできたからね。ほら、窓の外」

「うわぁっ、ロボットだぁっ! かっこいい~っ!」


 興奮する碧くんを抱っこして、近くから羅雪を見せてあげると、小さな体からじわりと魔力が発生するのを感じた。この子は大きな感情の起伏で魔力を発生させやすい体質なのだろう。恐らく昼間、幼稚園で何かあったのかもしれない。

 碧くんが眠りについた後、私は夫妻に病の詳細を告げた。


「魔力……それって魔法使いが使うやつですか?」

「まさかそんな……」

「普通は信じられませんよね。トーチ」


 指先に炎を灯してみせる。得意ではないが、私も炎系の魔法を多少使えるのだ。

 驚く夫妻に私は正体を明かす事にした。


「信じられないでしょうけど、私はこことは別の世界から来たの。あのロボも私の魔力で動いてるのよ」


 そして、この世界の魔力事情を伝えた。魔導師適正のある子供が体内で魔力を生成してしまう事。そして魔法の理が存在しないこの世界では、それが死に至る病となる事を。夫妻は驚き、そして絶望した。


「ではやはり碧は、先生に一生魔力を吸い出し続けて頂かないと、生きられないのですね……」

「今のままではそうなりますが……実は」


 ゴトリと魔法珠から水晶の塊を取り出した。これが勝利の鍵……いや、治療の秘策だ。


「これ……水晶ですか? これが一体……」

「まだ試作品で実証試験中ですが、これは私の魔力を馴染ませ作った魔力石です。これに発熱症候群の子が触れると、ゆっくりとですが体内の魔力を吸い取ってくれるのです」

「なっなんと!」

「毎晩、触れながら寝てるだけで、熱に怯えず普通に暮らせるようになりますよ。月に一度か二度、魔力で一杯になった水晶を交換する必要がありますけどね」

「それって……除湿器から溜まった水を捨てるような手間で暮らせるって事ですね?」

「なんか斬新な例えだけど、概ねそんな感じね。大きな水晶だと高価ですけど、河原や海岸に転がってる石英や瑪瑙なんかも代用できるので、コストも抑えられると思います」

「そんな事が……じゃあ、これがあれば碧は……」

「はい、大人になれますよ」


 吉川さんご夫妻が、抱き合って涙を流してる。うん、よかった。

 ん? なんか外が騒がしいな……あ、羅雪のせいか。ヤッバ。

 私の正体は内緒ですよと告げ、吉川家を飛び立ち帰路についた。


 さて、魔力石の作り方をみなさんに伝授しよう。

 まず、水晶などの結晶構造を持つ透明度のある石を用意します。これは透明な石ほど効果が高くなります。ただし翡翠は品質に関係なく効果が高いです。価格も高いですけど。

 用意した石に魔力を飽和するまで注入して数日放置します。今度は魔力を吸い出します。これを三度ほど繰り返すと、勝手に周囲の魔力を吸収する魔力石になります。

 残念ながら地球上には魔力がほとんど存在しないので、放置してるだけでは魔力は集まりませんが、魔力持ちが触れていれば吸収してくれるでしょう。


 こうして、発熱症候群の子供達向けの魔力石レンタルビジネスが確立するのであった。

 ……などと上手く行けば良かったのだが、そうは問屋が卸さなかったのだ。


 この国の医師会が、私のカウンセリングと魔力石レンタル業は、医療行為に当たり、医師法と医療法に違反していると訴えたのだ。利益も微々たるもので、ほぼ慈善事業なんだけれどね。

 しかも医師である夫も、その片棒担いだので医師免許を取り消すと通告してきた。


「ヨウくん、ごめん。迷惑かけた」

「キミは悪くないよ。どうやらキミに患者を奪われた地位の高い医師が動いたらしい」


 私の欲求を満たす為始めたような事業だ。いきなり終わってもさして痛くない。

 でも私の代わりが居ないのだ。私が魔力を吸い出し、命を繋いでた子供はどうなる。

 患者と家族の希望の光を医者が消すのか?

 この世界の医者のやる事は、精々解熱薬を処方し、点滴したり入院させるだけで、最終的に子供達は誰も助からないのだ。命は医者の肥やしではない。


 これまでの私だったらどうしただろう。そして、今の私ならどうするだろう。


「鬼神羅雪っ!!」

「ちょっ、キョウカ?」

「あっちが権力で子供の命を奪おうと攻撃してきたんだ。ならば私は物理的に、子供達の未来を守っても問題ないだろう?」


 ようくんがいい笑顔でサムズアップしてくれた。大好きっ!


 全国医師会本部ビル、最上階。


「例の件、進捗はどうなっている?」

「それが……その件で、各界から医師会に批判が殺到しておりまして……」

「はぁ? 魔力だなんだと胡散臭い、宗教まがいの治療を止めただけではないか」

「治療を止められた発熱症候群の子や孫を持つ各界の重鎮が激怒しているのです」

「宗教で治療できるわけなかろう!」

 

 その時、大きな破壊音とガラスの割れる音がビル中に響いた。

 最上階に大穴が開いたのだ。その大穴から顔を出す鬼神羅雪。


「なっ何事だぁっ! ロボットだとぉ?」

「どうも、その胡散臭い治療をする女です」

「ひぃーっ、何をするぅぅっ!」


 羅雪の赤い手で、今回の元凶である医師会会長をむんずと捕まえると、誰の手も届かない空へを舞い上がった。胸のハッチを開くと、風がとても心地いいね。


「下を見ろ、人がゴミのようだ!」

「ひいいいいっ、降ろせぇっ! このわしを医師会会長と知っての狼藉か!」

「はい、知っての狼藉です。でもあなた、今にも会長辞めるでしょう?」

「このわしがやっと手に入れた会長の地位を手放すはずなかろう!」

「今からあなたは地面に落下して、潰れたトマトになっちゃうんだものね。十…九…八……」

「なっなっなんの秒読みだ……」

「あなたが地獄に旅立つ、愉快なカウントダウンよ。七…六…」


 渾身の笑顔でカウントダウンを続けながら、軽く握り手を緩めると、会長は私の事業をすべて認めると叫んで気絶した。


 おや、なにやら下が騒がしいと思ったら、ビルの周囲にパトカーや救急車が集まっており、私に降りてくるよう叫んでいるではないか。

 ヒュィィィィン……ズズン。警官とパトカーの輪のど真ん中。陽光の下、白く美しい鬼神羅雪で降り立った。そして気絶してる会長を救急隊員のタンカに載せてあげる。

 

「すみません、よろしいでしょうか」


 緊張気味の警官達の中から、ちょっと偉強そうなおじさんが手を振りながら、羅雪の前に現れた。


「公安の太田です。雪野桔梗さんで間違いないですね?」

「はい、雪野です。私、逮捕されます?」

「いえ、そのような指示は受けておりません。事情聴取だけお願いできますでしょうか」


 羅雪を送還し、初パトカーで公安本部に行き、簡単な事情聴取を受けた。

 そこで、思いっきり私が先走った事を知る。

 この国の権力者に連なる子や孫にも患者が多くいるそうで、私がこの事業を安定して継続できるよう、応援しようと各界が団結して動いてた所、医師会が暴走したのだという。

 そこに私が激怒して、羅雪で突撃したわけだ。


 だが幸い、今回のやらかしのお咎めは全く無いそうだ。権力様様である。

 ただし、代わりにいくつか質問に答える事になった。

 私が異世界人であり、魔法が使える事。勇者である事。ゴーレムと呼ばれるロボットを操れる事、そして発熱症候群の詳細等々。

 ちなみに私の事は、以前急患で空を飛んだ時からマークしていたそうだ。

 あの夜突然、関東地方に所属不明の飛翔体が現れ、スクランブルで戦闘機を出す出さないで大騒ぎだったという。ごめんなさい。

 あとでゴーレムの見学会を開いて欲しいと頼まれたので、お詫びも込めて了承した。

 それと、今回のやらかし。前回以上にネットに動画がアップされまくってるらしい。


 私の素性やこの世界に来た経緯、異世界の事を太田さんに話すと、何ひとつ疑う事なく聞いてくれた。


「はぁ……驚きです。物語に描かれてたような世界があるのですね。しかも勇者ですか。じゃあ魔王もいるんですか?」


 勇者の力を見せるという事で、指先で十円玉を鼻くそみたいに丸めて見せた。

 あ、貨幣は壊すと罪に問われるので、真似しちゃダメですよ。

 あと、もちろん魔王もいます。


「最後に個人的な質問なのですが、キョウカさんは雪野桔梗さんと体を交換した為、太田ゆりの事は初めから知らなかったのですよね?」

「太田ゆり……キキョウの親友の娘ね。ああ、ご親族なのね。ごめんなさい、あの子には記憶喪失のふりをして対応したの。とても酷な事をしたわ」

「そうでしたか……事情が事情です。仕方ありません」

「もし、ゆりさんがお望みなら、キキョウとの最後のやり取りをお話しますと、お伝えください」

「ありがとうございます。お心遣い、感謝いたします」


 これで、ヨウくんも医師免許取られず済んだし、仕事も生活も元に戻った。

 キキョウは元気だろうか。もうクロの赤ちゃん産んだだろうか。

 私は驚く程幸せに暮らしているよ。


 読んでいただき、ありがとうございます。(キョウカ)

 なんか私の事、本編じゃ女子力がないとかずぼらとか、散々な言われようなんですけど。まぉ概ね正しいけど、もう違うから。夫も娘もいるからね!

 それに私、この美貌を活かして、ファッション誌でモデルしてるから。

 キキョウもあっちで美のカリスマやってるようだけど、私も負けてないから!

 そして、この可愛いを具現化した、超かわいいひいらぎちゃんが年頃になれば、私よりも美しくなるに違いないわ! 

「一緒にモデルのお仕事しようね~」「ぶぅ」


 十数年後……

 私……また攫われました。ママとお母さん譲りの美貌にも困ったものです。

 下校中、居合わせた同級生がナイフを突きつけられ、仕方なく犯人の1BOXカーに乗りましたが……

 さてと、今日はどうやって殺しましょう。もうすぐ三桁ですよ。ふふふ。

 

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